当ブログ、というか私個人の考えでは、ブログやサイトなどにハイパーリンクを貼る行為は全く自由になされるべきだと思っていますので、例えば当ブログの各エントリにリンクを貼ることも承諾などせずともご自由にされてかまいません。
 もちろん、私の主張に反対するような内容の記事を載せ、そこに当ブログへのリンクを貼ることも反対はしませんし、逆に私だって無断でリンクはします。


 さてこのブログのアクセス記録を見ると、janjanニュースという市民記者によるニュースサイトの、2件の記事から当ブログへのリンクが貼ってあることが分かり、読んでみました。
 一つは「ジクロルボスはDDVP ホームセンター、園芸店、ネットなどで売っている」 です。感想ですがなんだか、過熱気味のジクロルボス報道に対してちょっと冷静になれよと言いたい事は分かりましたが、逆に極端に問題視しなさ過ぎるように思いました。そもそもジクロルボスにしても殺虫剤にしても摂取量の多寡が問題であり、摂取機会の多さも問題ではあるでしょうが、高濃度のジクロルボスが残留した野菜と殺虫剤を比べることに意味は無いと思います。

 でそっちはまだいいんですが、ちょっとこれはなーと思ったのが、地下水を汚染する除草剤グリホサート です。



 植林している広い山林に猛烈にススキが生えてきました。そこで除草剤散布を検討していましたが大変な問題があることを知りました。メーカーは薬は分解するとの事ですが、実は完全には分解せず地下水を汚染しているとのことなのです。問題のグリホサート系除草剤は環境にやさしく、散布後、土壌微生物によって速やかに分解されると宣伝され、世界で年間3,000億円以上も売れている除草剤のトップです。耐性をもつ遺伝子組み換え農産物も各種、開発されています。


 しかし厚労省や農水省の役人は「いつかは企業に天下りたい」という意識がありますから、企業が困る事になる「非分解説」には絶対に同意しないはずです……。しかし発がん性の疑いがある以上、公明正大にテストをすべきではと思いますが、現状はどのようになっているのでしょうか。ご存知の方はコメントを御願いします


(後略)



 2段落目はこの記者の単なる思い込みで各関係者を誹謗する悪質な文章だと思いますが、それはともかくとしても


> 発がん性の疑いがある以上、公明正大にテストをすべきではと思いますが、現状はどのようになっているのでしょうか。ご存知の方はコメントを御願いします


とは何なんでしょうか?現状はどのようにって、そんなものはちょっと調べればすぐにわかります。


グリホサートの毒性試験の概要(抄録)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001713181/
日本農薬学会誌より


グリホサートの安全性を評価するため各種の毒性試験を実施した.原体, および各種製剤の急性毒性は低く, いわゆる普通物に相当した.また, 眼に対する刺激性は軽度から中等度であり, 皮膚に対する刺激性は軽度であった.皮膚感作性は認められなかった.亜急性毒性, 慢性毒性および発がん性試験では, 雄ラットの高用量群において白内障様レンズ変性が, 雌ラットの高用量群において体重増加抑制が認められた.また雄マウスの高用量群において肝細胞肥大および小葉中心性肝細胞壊死が, 雌雄マウスの高用量群に軽微な体重増加抑制が認められたが, いずれの動物種でも催腫瘍性は認められなかった.また, 繁殖試験において繁殖能に対する影響は認められず, 催奇形性試験において催奇形性は認められなかった.発達毒性が認められたのは母動物に対する毒性の認められた投与量においてのみであった.変異原性は復帰変異, DNA修復, 染色体異常のいずれの試験系においても陰性であった.薬理試験において心臓・循環器系に対する影響を示したが, 極めて高用量の投与の場合に限られており, 通常の使用により本剤による中毒は発現しないと考えられる.グリホサートは1980年9月に除草剤として農薬登録された.食品衛生法に基づく残留農薬基準が120種以上の作物に設定されている.一日摂取許容量(ADI)は0.75mg/kg/dayである.


もっと詳しくは、pdfですが
http://www.soc.nii.ac.jp/pssj2/journal/tec_info/glyphosa.pdf


 要するに、グリホサートにおいてはイヌ・ラットでの試験では発ガン性は認められず、マウスでの試験については極めて高容量(5000ppm)の群については肝細胞肥大及び小葉中心性肝細胞壊死が見つかったが、腫瘍の発生は無かったとなっています。


 というわけでこの記事は、そもそも発ガン性の疑いなど無いにもかかわらず、間違った根拠から要らぬ心配をしているわけです。


 だいたい、引用されている安田節子氏の記事ですが、

http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column/030524.htm

(抜粋)

ところが、2003年5月13日のNorfork genetic information networkによれば、デンマークの「デンマーク・グリーンランド地質学研究所( DGGRI )」の研究報告(未刊)で、土壌に散布されたグリホサートは分解されずに土壌に浸透し、地下水を汚染することがわかりました。


規定どおり散布されたグリホサートは、上部地下水を1リットルあたり0.54μgの濃度で汚染していたといいます。


モンサント社の研究データに基づいてグリホサートを認可したデンマーク環境省は飲料水の許容レベルの5倍以上もの汚染数値に驚きました。これまでモンサント社のいうように土壌バクテリアが分解するものと信じ、グリホサートが地下水に達することはないと考えていたからです。



 地下水から1リットル当たり0.54μgのグリホサートが検出されたって、それがどうしたと?
 とか書くと暴論に思えるかもしれませんが、これは濃度に直すと0.00054ppm(=0.54ppb)です。よく分析できたなと思うくらいの微量で、ADIが0.75mg/kg/dayであるグリホサートにおいては何の問題にもならない量です。ちなみにこの地下水でADI量のグリホサートを摂取しようとすると、1日当たり約7万リットルの水を飲む必要があります(体重50kgの人の場合)。
 そもそもデンマーク環境省は本当に、水道水の残留基準地下水の残留実態を比べて、驚いたんでしょうか??デンマークでは地下水をそのまま水道水として使用しているのでしょうか。


 農薬問題やGM問題には恐ろしい数のトンデモ論者が跋扈しており、こちらにこそ冷静な視点が必要です。少なくとも安田節子氏のコラムには量的な考察が一切無く、まるで参考に出来るレベルではありません。


koume