三笠フーズの工業米転用問題について、NATROM先生が非常に参考になるエントリを書いています。
有害米と肝臓癌死亡数の増加は無関係


 どうも、今回流通したと思われる工業米に付着していたと思われるアフラトキシンのせいで、およそ10年前から西日本で肝癌患者が増えている、と主張している人がいるらしいのですね。で、それは違うと。
 NATROM先生は医師らしく、肝細胞癌の原因はほとんどが肝炎ウイルスであり、事故米由来とは考えにくいと説明していて、さすがだなぁと思います。そういうこと、私はサッパリ分かりません。
 んで私がわかる範囲で、肝癌患者の増加について工業米の関与を疑うとすれば、肝癌になるのもそれで死ぬのもそれぞれにかなりの時間が必要であって、仮にアフラトキシンが残留した食べ物が流通したとしても、流通した瞬間に癌死が増えることなどありえないでしょう。もし工業米由来でそんな被害が出るとしたら、10年経ってやっとこれから増えてくるくらいじゃないでしょうか。


 私は前のエントリでは、メタミドホスよりもアフラトキシンのほうが高リスクだろうと書きました。ただそれは、両者を比較すれば、たかが基準の5倍のメタミドホスを声高に喧伝する理由など無いといった意味で、だからといって工業米に残留したアフラトキシンが本当に高リスクだなどとは考えていません。残留量がどれほどか、そして何よりもそれらが実際にどの程度、消費者の口に入ったのかが分からないので、リスクを測る事など出来ないからで、低リスクだと断言できるわけでもありませんが、おそらくほとんど無視できる程度のものだろうなとは想像しています。
 リスクを考える際、量は決定的に重要です。いくら地上最強の発ガン性物質といえど、ほんのごくごく微量しか摂取しないならば心配は要りません。もちろん、リスクがゼロとは言いませんが、それを言い出すとこの世の中に発ガンリスクがゼロのものなど存在しません。無農薬野菜しか食べないベジタリアンにもガンはできます。


 私は、「1は0より確実に大きい」という言葉が好きです。何にもしないよりは、何かしたほうがごく微妙でも確実に前進しているという程度の意味ですが、この場合の1とは100か1000の中の1くらいであって、「リスクが完全に否定できないのであれば、リスクは存在するのだ」的な、ある-なしの1ビット思考とは全く違います。


 NATROM先生のエントリは明快ですが、どうもコメント欄には1ビット思考の人が多いようで、残念です。リスクは否定できませんが、それはゼロではないという意味であって、有意に存在するということとはまるで別です。
 塩を毎日毎日50グラムくらい摂取すればたぶんガンは出来ますし、一度に150グラムほど食べれば人は死にます。で、プールいっぱいの水の中に塩を一つまみ入れても水はしょっぱくなりませんが、しかし塩自体は確実に水中に存在しています。もちろん、そんなプールで泳いでもガンになどなりません。リスクは量と強さの掛け算です。


koume