医療エントリを書いたり、「医療問題を注視しる!」 シリーズにおいてときたま、これは医療関係者なら誰でも知っていることだとか、すでに周回遅れの話だとか言われる事があります。批判で言われているのかわかりませんが(批判でも特に構いませんが)、一応ここの医療系エントリは周回遅れを承知の上でわざと書いています。
 当然、最新の話や専門的な話については荷が勝ちすぎるのが大きな理由ですが、私はごく基本的なことをいろいろな書き方で書くことを目標にしているからです。


 医療系ブログを読んでいると、よく小松秀樹先生の著書「医療崩壊」が紹介されています。私も購入して、読みました。が、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、正直言ってあれを非医療業界の素人に読めというのは結構無理があると思います。少なくとも、本当にこれを読んだ方がいいと思う人・・・つまり医療問題になど何の興味も無い人には、無理です。
 これは今製作している「医療問題を注視しる!その5」のメインテーマの一つなのですが、難しいことを説明するのは案外簡単で、簡単なことを説明することの方が難しいです。こう書くとややこしいのですが具体的な話にすると単純なことで、例えばAEDとかPCIとかいった専門用語はちゃんと説明してもらえればそれなりに理解することが出来ます。
 しかしもっともっと常識的な部分は、そもそも説明すること自体が難しいと思います。意味自体が雰囲気とか空気で表現されているようなことです。


 例えば私が田植えを一日中やって「疲れた」というのと、産科医が宿直業務をやって「疲れた」というのでは同じ「疲れた」でも意味が違います。そしてこれがどう違うのか説明するのは一苦労ではないかと思います。さらに困るのは、ごく基本的な用語であるからこそ、それを他人が知らないということに気づきにくい点です。
 さらに例を出しますが、私は「注視しる」コンテンツのその3で福島地検が言った「経験も無いのに、いちかばちかでやってもらっては困る」を引き合いに出し、
「一般的なバクチの場合は50%が怖ければ降りればいいだけの話だが、医療の場合は降りたら患者が確実に死ぬんだよ。50%の治療を回避したら、待ってるのは100%の死なんだ。」
という話をしました。で、ルクスにわざとらしく「ああ、そっか!」と言わせています。なぜこんなわざとらしいことを書いたかというと実はこの部分は私自身が「ああそうか!」とすごく腑に落ちた部分だったからです。もしかしたらこういう認識は、医師の皆さんにとってはごく当たり前な、わざわざ説明するほどのものではないことかもしれませんが、少なくとも私と福島地検に関しては共有されていない認識だったわけです。


 というわけで私はほんとの一般向けとして、おんなじ話を何回も、しかしいろいろ形を変えて書こうかなと思い立った次第です。で、どれか当たりが出ればいいなぁと言うほどです。例え話を考えるのが好きなので野球ネタを使ったこともありますし、また相当変わった形としての「注視しる」コンテンツになったわけです。


 ところでえらく間が開いている「その5」ですが、マスコミ関係となると範囲が広すぎて分量がやたら膨大になりそうなのと、設定上の問題でなかなか進みません。まあ分量については分割すればいいだけですが、構成についてはいつもは一人に反対意見を出させて二人に説明させるのがパターンなのですが、ルクスというキャラクターの設定上どうしてもマスコミを擁護させることができないのです(笑)まあやる気がなくなったわけではないので、ぼちぼちやっています。仕事もくそ忙しい時期なので。


 余談ですが、ご存知の方はご存知でしょうが「その5」 のページには現在イタズラがしてあります。が、ブログのアクセスを確認すると、その「その5」ページから飛んできている方が毎日意外とたくさんいらっしゃって、なんか結構圧力を感じます(笑


※6月23日追記:

エントリを読み直してみて、なんだかまるで専門家の書いたもの(医師ブログなど)が難しくて読みにくいかのように思われるかもしれないと思いましたので、そんなことはないとここで言っておきます。
医師同士の議論の部分は難しいですが、それは高度に専門的な議論が行われているからしょうがないだけで、素人の質問などが入る場合はちゃんとそれに合わせた返答が頂けるところが多いです。


koume