とりあえず無農薬栽培野菜と慣行栽培の野菜のリスク差にまつわる細かい話は今回は無しにしておきます。ますが、まあリスク差はほぼ無いとします。


 今の世の中、無農薬栽培の野菜を選ぶことにこだわるのがいいことだというような風潮があります。少なくとも選んでいる本人は、健康などいろいろなものに気をつけているつもりでしょう。
 ただ実際に、そういう人が農薬の安全性評価や登録基準、関連法規などを熟知していることはまずありません。

 そもそも無農薬野菜が本当に低リスクかどうか・・・というと細かい話は無しといったのにと思われそうですが・・・をちゃんと把握しているとは到底思えません。現実に、スーパーにごく当たり前に売っている野菜を食べて何らかの農薬がらみの障害が出たなんて話は誰も聞いたことが無いはずです。
 おそらく想像ですが、それでも無農薬野菜を選ぶのは、ごく小さなリスクをも排除して、小さなことからコツコツとできるだけ安全な生活を心がける、という考えが裏にあるのではないかと思います。


 目に見える(と思われる)リスクをとりあえず回避しまくれば、全体的に低リスクな行動ができるのでしょうか。実際にはそれはゼロリスク信仰と同じで、逆に思考を放棄しているに過ぎません。要するに「農薬リスクなんて細かいことはわからないが、無農薬を選べば農薬リスクなど関係ないだろう」という考えです。
 ほんとのほんとのことをちゃんと勉強すれば、農薬を忌避すれば農薬リスクがゼロになると思うのは間違いだとわかるはずです。一般消費者の方々にはあまり知られていない話ですが、有機栽培の野菜にも残留農薬が出ることはあります。もちろん、農薬を使わないと農薬以外のリスクは増大します。


 私は、無農薬栽培を求める社会よりも、むしろ慣行栽培を普通に受け入れる社会になって欲しいと願っています。そういうメンタリティは、リスクマネージメントの考え方が浸透しないと達成できないからです(もっとも、リスクマネージメントがわかった上で無農薬栽培を選択しているならOKなんですが)。ゼロリスク信仰を放棄し、大雑把であっても定量的評価・定性的評価がちゃんとイメージできるような社会の方が明らかに成熟しています。無農薬野菜を求めるような考えは実は単に未熟なだけです。


 ところで話は変わりますが、無農薬栽培の野菜を求めている人のほとんどは、特にしっかりした科学的根拠があってそれを選んでいるわけではありません。たいてい、なんとなくイメージで選んでいるだけだと思います。
 ということは先に書いたことと真逆ですが、イメージ誘導さえ出来ればリスクマネージメントとか科学的根拠とかがまるで何も無くても慣行栽培を推進することは出来そうです。


 具体的にどうやればいいかはよくわかりませんが、例えば、農薬をよくよく調べてみたら中にバストアップ効果がある成分が見つかった、とか言うのはどうでしょうか。農薬を使って作った野菜を食べればバストが大きくなる(有機栽培の野菜ばかり食べたら貧乳になる)というわけです。もしかしたら、慣行栽培がすごくもてはやされたりして・・・。


 「何よこの野菜、残留農薬が0.03ppmしかないじゃないの!」「残留基準は0.1ppmなのにねえ。ケチってるんじゃないかしら?


 やっぱりダメかな(笑


koume