「医療問題を注視しる!」その2では医師不足を説明するためにOECD諸国の人口当たり医師数を引き合いに出していますが、本質的には、そんな基準で少ないと言っても意味はありません。先進国中最低レベルの医師数だから足りない、のではない。
 実際に足りない足りないと言っているのは、医師が受け持っている仕事量に対して少ないのであって、もし仮に医師の仕事がOECD諸国の中でも全然少ないというのならば医師が少なくても問題はありません。


 では日本の医師の仕事量は他所の国の医師に比べて多いのかどうかといえば、実際に具体的なところはよくわかりませんが、どうも少ないとはとても言えないようです。むしろ他の安全関係の分野で、日本人の書類大好き会議大好き表示大好き潔癖大好きな性質を見ていると、事務屋の暇つぶしのような無駄な仕事が腐るほどありそうな気がします
 医師数はOECDの平均数をクリアしていれば「足りている」ではなく、仕事量に対して足りていなければ意味がありません。OECDがどうたらといって比較しているのは、そうすると説明がしやすいというだけで。


 では医師不足を解消するためのアプローチとしては、医師を増やすことはもちろんですが、仕事量を減らしても実質的に医師数を水増しすることは可能となります。むしろそちらの方が即効性があっていいと思うのですが、しかし実際には逆に「雑用を医師に押し付けていたから、雑用係を雇わずに済んでいて低予算でやれている」という面が病院にせよ厚労省にせよあるわけで・・・


 で農業者不足のほうですが、しばしば農業後継者育成がどうたらと言われます。なぜ農業者育成ではないのか理解に苦しむところです。農業後継者と農業者の違いはどの辺にあるかといわれてもよくわかりませんが、なんとなく、農業をやらない農業者というのはありえませんが農業をやっていない農業後継者てのはいそうです(「将来やる予定の人」てのも含みそう)。そういう意味ではやっぱり農業後継者育成って言葉は間違いっぽいです。


 農業の場合でも先に挙げた医師不足の話と同じく、仕事量のほうを減らして対応する策はあり、それが農業経営の大規模化によるコストダウンではあるのですが、同時に有機農業推進法なんてのも進めていたりして困惑します。
 有機農業というのはつまるところ、農薬が受け持っている仕事を人力で行おうというもので、要するに慣行農業よりも多くの人手を必要とします。ぶっちゃけ有機農業を進めれば進めるほど農業者不足は進行します(農業者の絶対数は変わらなくても)。


 また、大規模化を進める・・・つまり大規模にした方がよりインセンティブを得られるような仕組みを作ると、必ず「小規模は切り捨てるのか!」という批判が巻き起こります。実際のところどこかで思い切って小規模を切り捨てないともうどうしようもない状況なのですが、農業人口としては大規模専業農家よりも小規模兼業農家のほうが圧倒的に多く、しかもJAも今は兼業農家のおかげで成り立っているようなものなので、落ちればタダの人な3流政治家に出来る選択ではありません。


 どちらにしても相当な心臓を持つ人が強行すれば出来ないことは無い改革なのですが、そういう人がいればねえ・・・


koume