「食の安全」と言う話題になると農薬の話を避ける事はできません。農薬が危険というわけではなく、危険と言われているって話です。要するに農薬は安全ではあるが不安となっているのです。


 ところで農薬について詳しい人、専門家といえば誰だ?とアンケートをとると、どういう人が挙げられるのでしょうか。そんなアンケートは見た事ないので予想ですが、農家は上位に来るのではないかと思います。
 しかし現実にはどうなるかと言うと、まず最も農薬に詳しい専門家と言えば一番は農薬メーカーの研究者です。次に農薬メーカーや農薬を扱う商社の営業マンだったり、分析やる研究所の職員、防疫センターの人、農林事務所の普及指導員、厚労省のしかるべき人、都道府県の農政課の役人だったりでしょうか。んでだいぶランキングが下がって農家となります。実は農家で農薬について詳しい人は滅多にいません
 付け加えますが、農家は普段使ってる農薬の事は知っています。ただ、農薬の安全性の話とか、残留基準値の決まり方とか意義とかは知りません。特に農薬取締法や食品衛生法などの法律の話を知っている人は滅多にいないでしょう。
 特に兼業農家やお年寄り(農家で年寄りは最低七十以上で、六十代はまだ若いといわれることが多いです)は、農薬と言えば昔から使ってるものを継続して使うだけで、新しいものや使っていないものに関しては名前も知らないことがよくあります。まあお年寄りの場合はしょうがないかなと思いますけどね。


 私は最近、このブログとは全然別のところでちょこっと農薬に関するコラム(と言うほどたいそうな物ではない)を書いてるんですが、それを読んだ同年代の農家が感心していたりします。へえ、そうなのか~みたいに。しかし普通の主婦の方ならともかく、プロとして農業やってるような人に感心なんてされたくないです。このくらいは当然に知っていて欲しいからです。


 近頃とみに、食べ物の安全・安心が求められています。その内容はともかくとして、少なくとも食の安全について説明する事、理解してもらう事が重要になってきているのは間違いありません。さてその説明をするのは誰の役目なのでしょうか?
 農薬に関しては、これは本来は農家の役目だと思います。農薬を使う事で直接の利益を受けるのはなんと言っても農家だからです。最低でも、消費者から、その農薬を使うのは何故か?とか飛散した農薬に触れても大丈夫か?農薬のリスクは?と質問されたら滔々と答えられなければいけないと思います。それは例えば肉屋が、この肉はどの部分の肉ですか?と問われて、え~わかんないっす!と答えるわけにはいかないのと同じ事です。


 ところが上で書いたとおり農家は農薬についてほとんど説明できません。実際、農薬リスクについていろいろ解説している人と言えば限られたライターや大学の先生、研究者などで、ほかには農水省が作るぺらぺらのパンフレットがあるくらいです。そんなパンフレット見た事ないと思う方が多いでしょうが、県庁の農政課へ行って、近くの廊下にあるはずの「ご自由にお取り下さい」を探せばあるはずです。本当は、もっとちゃんとしたものを作ってもっと人目につくようにしろよ!と批判したいところですが、何もしてない農家に比べればまだましなのであまり文句も言えません。


 このあたり、もっと農家は勉強しなければいけないなあと思うところです。もちろん自分も含めてですけどね。


koume