先日、コウノトリの卵が孵化したなどとニュースになっていました。ついでに、近隣の農地では無農薬に取り組んでいて、コウノトリが生活していける基盤を作っている・・・とかいう話があって、美談みたいになっているのですが、正直言って農薬がコウノトリ衰退に関係あると考えている人たちのことが不思議でしょうがありません。


 コウノトリやトキなどの絶滅危機の原因は農薬や減反政策にあるとよく言われています。ほとんど常識のようになっていますが、絶対に間違いです。理由は明確です。


 生き物が種として存続していくためにはかなりまとまった数が必要です。例えば、たった10羽くらいが生息していたとしてもそんな種は絶滅までのカウントダウン状態です。近親配合による体質の弱体化や何らかの理由での死亡によって、10羽の状態からこつこつ増えて大繁栄することはまずありえません。数については見解にいろいろあるでしょうが、安定して存在していくには最低限500羽くらいは必要なようです。滅亡の原因があるとすれば、最低限必要な生息数を下回った頃にその原因を探すべきです。


 さてトキやコウノトリは、大正時代か昭和初期には大幅に生息数を減らしていました。トキなんか、大正時代にはすでに幻の鳥扱いで、ほとんど絶滅したと思われていました。佐渡で少数が発見されたのは昭和になってからで、しかしその時点でも密漁が行われて数を思い切り減らしています。コウノトリも大幅に数を減らしたのは昭和初期以前と考えられます。


 化学農薬が一般的に使用されだしたのは1950年代以降、減反政策は1970年代以降です。どちらも、トキやらコウノトリやらニホンカワウソやらの生態に影響を与えるのは、時間的に考えて不可能です。死んだコウノトリの体内から農薬が検出された・・・ってそれは、もしかしたらそのコウノトリ個体の死因になったかもしれないけど、コウノトリという種が減少する原因になることは無理です。


 農薬が原因で鳥が絶滅するなら、秋ごろにうちの田んぼに大量に入って籾を食い荒らすスズメなんか絶滅しててもおかしくないなあと思うのですが、私は残念ながら、田んぼの中でスズメの死骸を見つけたことはただの一度もありません


 あっそうそう、コウノトリ関係の記事で、最近の田んぼにはカエルやドジョウがいないとか言う文章も見つけたんですが・・・
 カエルはうじゃうじゃいますけどね(^^;
 ドジョウは確かにいませんよ。けど皆様、中干しという技術をご存知ですか?一時期、田んぼの水を完全に抜いて土壌をばしっと締める技術です。水がなくなるのですから、当然ドジョウは生きていられないでしょう。いつでも水がある湿田地帯の田んぼなら、普通にいる所もあるんじゃないかなあ。ドジョウを戻したいなら、JAで毎年やかましく推奨されてる中干しをまず廃止しないとね。
 というかマスコミの皆様、田んぼをちゃんと見てから記事を書いてくださいませ。


koume


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