【Sankei Web】2006/07/17 東京朝刊から


暑い夏こそ胃腸に優しい燗! 日本酒見直し広がる


≪胃腸が弱る夏こそ≫

ビアホールで「乾杯!」の声が響く夏真っ盛りの時期、燗酒会は開かれる。会場には全国の蔵元が持ち込んだ地酒がテーブルにずらりと並び、各蔵元のコーナーからは、ゆらゆらと燗の湯気が立ちのぼり、ほろ酔いかげんの顔がほころぶ。


「意外とすんなりと飲めて、飲んだあともサッパリとして気持ちがいいと、お客さまには好評です」。8月5日に2回目となる「純米燗・夏の宴」を開催するリーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)の中川智子・営業企画課長はいう。 「冷たい飲み物や食べ物で胃腸が弱りがちな夏場の燗酒は、いわば体にやさしいスローフードととらえています」


そもそも、夏の燗酒の会は3年前、全国の蔵元が運営する「蔵元交流会」が都内で開催したことから始まった。


「酒は純米、燗なら、なお良し」  

「日本酒の生き字引」といわれ、今年5月に80歳で亡くなった酒造技術指導者の上原浩さんのこの言葉が、燗酒会を始めたきっかけだったと、鯉川酒造(山形)の社長、佐藤一良さんはいう。佐藤さんによると、上原さんは「人肌の燗酒にすれば、冷酒に比べ、吸収が早く、よい加減の酔いが持続する」などと上原流燗酒の勧めを説いた。こうした考えをまとめた書籍『純米酒を極める 』(上原浩著・光文社新書)が出版され、これを消費者にアピールするため、日本酒を製造する60の蔵元が集まり、3年前に第1回「燗酒楽園」が都内で開催されたという。


≪料理をひきたてる≫

「燗酒は料理の良さをひきたてる」。こう語るのは、日本酒の研究家として知られ、著書に『世界一旨(うま)い日本酒』(光文社新書)がある古川修・芝浦工業大学教授。そもそも冷たい酒は味覚を麻痺(まひ)させると前置きしたうえで、「例えば、塩辛(しおから)はそのままだと生臭さが残るが、燗酒と合わせると旨味に変わる。それは、日本酒が本来もつ甘みなどと絡みあうからだ」と持論を紹介する。


その日本酒の甘み(糖分)は、温度40度ぐらいの「ぬる燗」が舌になじみやすくなるという。17日に名古屋市で開催される第1回「なごや純米燗」でも、「日本酒は食事を楽しむ食中酒であることを前面にアピールするため、料理を華美でない、日常家庭でも口にするもの」にメニューを限った。事務局の桑原結子さんは「日本酒、ことに燗酒には、いかに料理をひきたてる力があるかを知ってもらいたい」と話している。



暑い時に冷たい飲み物は確かに爽快で、冷たい酒も最初は気持ちいい。でもただでさえ暑さや疲れで消化吸収力の落ちている胃腸、冷えた酒だと中で体温に戻るまでなかなか吸収されないんだそうな。

そうすると、なかなか酔わないし気持ちいいからと冷酒をガブガブ飲んでたら、ある時溜まったアルコールが一気に吸収されていきなりガクッと酔いがきちゃう。その点、お燗酒だと最初から吸収されていくわけだから、酔いもゆっくり回ってくる、これが胃腸にも良いし、日本酒を美味しく飲む秘訣でもあるのですね。