私が住む石川県で最も広く読まれている新聞は、北國新聞社が発行している「北國新聞」 です。
 内容的には、某所では「回覧板扱い」とされ、知的リテラシーも低く取材なども相当手抜きすることで有名で、あまりいい新聞とは言いがたいのですが、なぜか広く読まれています。ちなみに普及度で言うと次点は「北陸中日新聞」ですが、こちらの方がよほど正確で真面目な新聞です。


 で、5月29日付の北國新聞の「時鐘」という小コラムに、「低タンパク米」のことが取り上げられていました。
 文章の意味としてはこの低タンパク米とは明らかに、「春陽」「LGCソフト」などの、農水省が「スーパーライス計画」に基づいて開発した新品種群のことで、たんぱく質の摂取制限がある腎臓病患者でも食べられるように、人体で吸収できるたんぱく質がおよそ半分に抑えられた米のことです。
 しかしこれは、「低グルテリン米」であって、北國新聞社が表現したような「低タンパク米」では決してありません

 記事を見てすぐ、北國新聞社にメールを送りました。


 ---(以下メール)---


  北國新聞社殿


 本日5月29日の朝刊のコラム「時鐘」に低タンパク米のことが書かれてありますが、氷見市民病院などとあることからこれは「春陽」のことだと思いますが、これは低タンパク米などではありません。修正を求めます。
 そもそも、この意味での低タンパク米など世間に存在しません。


 春陽は低タンパク米ではなく「低グルテリン米」です。栄養学上、たんぱく質はその消化の過程により何種類かに分類されますが、普通の米に存在するタンパク質はグルテリンと呼ばれます。これは普通に体内で消化吸収できるタンパク質です。
 ところが、人体では吸収できないタンパク質というものも存在します。アルコールでしか分解しないプロラミン(人体では吸収不可)というタンパク質を増やし、そのぶんグルテリンの含有割合を減らしたのが春陽です。
 つまり、春陽の場合はタンパク質の含有量自体は普通の米と変わらないのですが、そのタンパク質の割合が違うために、人体としては半分程度の吸収で済むというのが特徴なのです。

 私も農家として低グルテリン米「LGCソフト」の栽培に関わっております。「低タンパク米」などという誤解が広まってしまうと非常に迷惑な上、「低タンパク」というわかりやすい科学的間違い(正確な「低グルテリン」は一見わかりにくい)は悪質な健康食品業者への新商品の口実を与えます。


 低グルテリン米を「低タンパク米」と表現することは完全な科学的間違いなので、こう表現した商品が流通すると厚生労働省から咎めが入る恐れすらあります。県内の貴紙の影響力の大きさを考えるととても見過ごせる物ではありません。早急な対応を重ねて求めます。


 ---(以上)---


 で、まったく反応が無かったので、翌日の30日も同様のメールを送りました。
 本日の今に至っても、何の返事もありません。


 この程度の間違いと思われる人もおられるでしょうが、マスコミが作る風評被害とは実際、小さな間違いの積み重ねによって作られる物です。低グルテリン米と低タンパク米は、それらのことを知っている人間なら決して間違えたりしない言葉です。
 お客さんから「低タンパク米ですか?などと問い合わされた時の説明に、こっちがどれだけ苦労してるかなどと、新聞社は知ったことではないのでしょうが、このような意識の薄い新聞社が勝手に風評被害を起こして責任も取らないのですから始末におえません。


koume