ポリ広告


 健康食品系って、真面目に売ろうとするとすごく大変です。厚生労働省に問い合わせたりしたら規制は相当厳しいし、広告や宣伝もおびただしく気を使う仕事になります。
 しかし、巷には胡散臭い健康食品や栄養補助食品などがうようよしています。テレビやラジオでも毎日、どう優しく見てあげても薬事法違反というような商材がごろごろしていて、真面目にやろうとしているこちらはもしかしたらとんでもないバカなんじゃなかろうかと思うこともよくあります。
 余談ですが、うちで扱っているその手の商品は、「LGCソフト」と言う品種の米です。これは、普通の米とたんぱく質の組成が異なっていて、普通は米にはたんぱく質が5~7%くらい含まれているものなのですが、LGCソフトはこの6%ほどのうち3%くらい(およそ半分)が人体では分解吸収できないたんぱく質に置き換えられていて、実質的にたんぱく質の量が半分になっているというものです。
 これで何がいいかというとたんぱく質の摂取制限がある、腎臓病患者の方でも食べやすい米になっているわけです。もともと、腎臓病患者の為の食品(ご飯)ってのも販売されてはいるのですが、健常者でも食べられないような非常にまずいものばかりで、それに対してLGCは普通のご飯と同じ味・感覚で食べられる米というわけです。ご用命の方はぜひどうぞ。


 で、今朝新聞を見てたら1面使って出てた広告がこれです。「全樹ポリグレイプ」「赤ブドウのポリフェノール」「ノン・アルコールで画期的な栄養補助食品!」「赤ブドウ全樹エキスの優れた健康維持!」出してるのは「農水産センター」だそうです。


http://www.rakuten.co.jp/seikatsu/477649/508067/1139863/


↑これ、商品的には今朝新聞で見た広告のものと同じと思われます。用語とか言葉の使い方もほとんど同じだし。しかし商品名は「バッカス」で問合せ先は農水産センターではなく「株式会社 大海堂 AT」です。ちなみに大海堂は普通にぐぐると出てくるのは名古屋の封筒屋です。明治からやってる老舗。
 で、「ポリグレイプ」「バッカス」、両者とも広告を出してるのは「株式会社ダイセイコー」。二つの商品が全く同じものと言うわけには行かないとは思いますが関係してるのは間違いないでしょう。


 さて中身はまあ典型的な胡散臭さで、ここが特に酷いと言うわけではないのですがワインが絡んでるから取り上げてみたって感じです。


 最初にポリフェノールそのものですが、確かに赤ワインには多く含まれるとよく言われますが、実はポリフェノールって他の野菜や果物にも割りと普通に含まれる物質で、特に日本人に不足している成分と言うわけではありません。ポリフェノール摂取の為に赤ワインを飲む必要も、ましてポリグレイプやバッカスを飲む必要も全然ありません。
 ところで両商品はすごくそっくりですが、ポリグレイプは宣伝文中に「原材料はイタリアやフランス産の赤ブドウ」と書かれていますがバッカスの場合は原材料が日本・スイス産になっています。スイスも日本もワイン用ブドウの有名産地ではありません。両商品の中身が同じだと仮定すればもちろん虚偽広告です。


 もちろん、医薬品でもないのに、医療的効果を暗示するような宣伝をしてる時点で薬事法違反は濃厚です。


 一番大きな突っ込みどころ。赤ワインに使われるぶどうは、赤ブドウではありません。黒ブドウです。ワインのことを宣伝文句に使ってるのに、ワインのこと全然知らないのが丸わかりです。私が最初に引っかかったのはこれでした。


 不誠実な広告を出しても即刻取り締まられるってことはまあないでしょう。が、こんな広告はいろんな意味で迷惑です。消費者にとっても、事業者にとっても。


koume