いきなり関係ないですが、今NHKで、世界遺産・サンテミリオンという番組を見ています。ボージョレ・ヌーヴォー解禁の日にボージョレ特集でなく、サンテミリオンを紹介するNHKは素晴しい(笑)オーゾンヌを訪れたりして、豊かな番組。シャトーには1849年のボトルがあり、まだ健在だそうです。サンテミリオンはフランスでも最も美しいワインの町。死ぬまでに一度は行きたい場所です。


 さて今日は11月第3木曜、ボージョレ・ヌーヴォー解禁の日です。ニュースでも取り上げられ、私も一応買いました。ルロワのと、J・ドルーアンのものを。


 何年か前からか、またボージョレ・ヌーヴォーの人気が出てきました。理由はよくわかりません。いつの間にか人気が出ていた、という感じでしょうか。
 それ以前はヌーヴォーの人気など全くありませんでした。というか、それよりもっと前のバブルの頃、ヌーヴォーにもバブルがありました。人気・知名度とも一気に高まり、もともと高価では無かったヌーヴォーが酒屋で5000円、レストランで1万円の値段が付き、猫も杓子もヌーヴォーという時期がありましたが、その時は一時期だけの悲しいブームとなって去りました。


 ブームが去った後、ヌーヴォーは実に酷い扱いを受けました。ワインのことをろくに知らないドシロートでも、物知り顔で「ケ、ヌーヴォーなんかワインのことを知らないヤツが飲む安酒さ」と言っていた時。
 今でもそういう、知ったかぶりな人はいることはいるのですが、それよりもヌーヴォー人気の方が圧倒的になり、表立って妙な事を言う人はそんなにいなくなったと思います。しかし当たり前ですが、この期間、ボージョレのワインそのものに何か変化があったのかというとそんなことはありません。生産者は増えたかもしれないけど。


 もともと、第3木曜解禁などというのは営業戦略であって、何か由来や伝統があったわけではないのですが、まあ営業戦略を練ることは売る方としては当然であって、しっかり成功しているのですからけちのつけようもありません。が、1年でこの時期にしかワインを飲まない人たちが0時の解禁を待って大騒ぎする、というのはなんだか外から見ていて異様です。
 報道のされ方も、「1年のワインの出来を占う存在」とか、またえらく持ち上げられたものだと思いますが、新酒が出るのはボージョレだけに限定されたことでもないんですけどねぇ。


 さてワインそのものですが、まあこれは一種の縁起物と捉えればいいのではないでしょうか。強烈で華やかな香りと、瑞々しい色、さっぱりして飲みやすい、溌剌とした口当たりは記念日を祝うのには好適だと思います。まあ、その「記念日」がプライベートなものではなく、もっぱらボージョレそのものの解禁記念に使われているのが悲しくはありますが。
 ただ、ボージョレ・ヌーヴォーは美味しくないとは言いませんが、その味の割には値段が非常に高いと思います。なんて、最高ランクに高価なやつを買ってしまった私が言う台詞ではないんですけど、「これは縁起物だから仕方がない」と納得した上でないととても買えないようなコスト・パフォーマンスです。なにしろ、ちょっといいやつを買おうとすると、その価格は下手したらボルドーの格付けワインに匹敵します。


 一年で最もワインが売れるこの日(少なくとも日本では)、その売り上げがワインそのものの人気拡大にはなかなか繋がらないのが多少残念ですが、それでも1年に一度飲まれているだけでもマシなのかなあ・・・


 さて、買ったボージョレはいつ飲もうかな。なんか、去年のヌーヴォーをこっそりよけておいて今頃販売する、って酒屋があったみたいなんですけどそういう所を利用すればなんと「ヌーヴォーの垂直テイスティング」という、ぱっと見には奇妙なことが出来ます。試してみようかな


koume