中日新聞 電解数秒で年代ワイン誕生


 静岡県浜松市のベンチャー企業、イノベーティブ・デザイン&テクノロジー(田中博社長)が、数秒間電気を通しただけで“20年もの”のワインができる装置を開発した。だそうです。電解(電気分解)は水溶液に電流を流して液内の物質を化学変化させ、別の物質にする技術。


 はっきり言います。おそろしく胡散臭いです。私はまったく信用していません。


 さて通常、ワインの熟成とはいろいろな要素があって難しく、未だに確実なことが全て解明されているわけではないのですが、例えばアントシアン類色素がタンニンと結合し、重合・析出を重ねて澱となり、ワイン中に溶け込んでいたこれら成分の量が減ることによって苦味が和らいだり色が薄くなったりします。
 また酸とアルコールから酢酸エチルが形成され、酸味が穏やかになり舌触りに影響があったりと、それ以外にも様々な要素があります。


 記事には、
 田中社長によるとワインを電解することで、アルコール分子の周りに水分子が配置され水和性が向上。本来なら長期間の保管で水とアルコールが混ざり合ってできるまろやかな味と香りが、瞬時に得られる。
 とあります。これが、上に書いたワイン熟成の過程とはまったく異なる工程であることは明白です。味がまろやかになるのは、水とアルコールが混ざり合うからなのですか?手元の本にはそんなことは書いてありませんが。本が間違ってるのかな。


 また、電解によってアルコール分子の周りに水分子が配置される、というような表現は化学的にも間違っています


 そもそも、記事では熟成とか年代ものとか言う言葉が氾濫していますが、ワインというものは熟成させればすべからく美味しくなるものではありません。やまやで1000円のワインを買ってきて、20年間保管しておいてから飲んでもまずくなっているだけです。つまり、もしかしたら電解でワインの味が良くなることがあったとしても、それは「熟成」というメカニズムとはまったく関係ない変化だということです。


 まぁこの装置で本当にワインの品質が向上できるのかはわかりませんが(ものすごく胡散臭いものを感じるけど)、もしもまかり間違って本当ならば、安いワインの品質向上は期待できそうです。
 しかし、例えばフランスの格付けシャトーなどの、ワイン生産に誇りを持っている生産者にはきっと受け入れられない方法でしょうね。


 つーかさぁ、本音の感想を書くと、こんな簡単なことでワインがうまくなるような、んなうまい話なんてそうそうねぇんだよ(笑)そんな簡単な技術なら、もうとっくに誰かがやってるっつの。


koume