そしてインタビューが終わり帰ろうとした時に「貴方達は今日はどこに泊まるんだ?」と聞いてきた。
「別に泊まる宿は予約してない」と答えると会長は「どうせこの村にはホテルがないから俺の家に泊まっていけ」と言ってくれた。
しかも彼は村長も兼任しており、歓迎の意味もあったのであろうが村の人を招待して二番目の日本人である俺の歓迎パーティーをやってくれた。
村の広場にテーブルを並べて40人くらいはいただろうか、山岳に生活する黒い服を着た少数民族の姿もあった。
みんなニコニコして俺の方を見ている。
よほど語り伝えられている昔の軍人さん達の印象が良かったのだろう。
会長の挨拶と俺の紹介が終わったら乾杯の発声の後にディナータイムとなった。
しかしお世辞にも全くうまい食べ物がなかった。黒く焼いた川魚やタロイモ、バナナの皮で蒸した餅米などのような質素なディナーであった。
しかし村人たちは全ての料理を美味しそうにガッついている。
相当腹が減っているのか。
ビールで乾杯したあとは会長は大きなヘビの入った焼酎を持ってきた。
俺は焼酎が大好きだ。
味はまあまあであったがこいつは度数が高い。
すぐに酔いが回りそうだ。
テーブルの周りでは少数民族が歓迎の踊りを披露してくれる。
さんざん山道を走って車酔いもあり、あんまり箸が進まない俺を見て会長が言った「美味くないか?それでは口直しに特別なメニューを出そう」
しばらくすると、明らかに小動物を丸焼きにした料理が運ばれてきた。
「大きさ的には犬だな」俺は通訳のフォンに聞いた。
「いや、これは多分違いますね。タヌキだと思います」
流石はベトナム人、犬とタヌキの区別を一瞬でつける。
で、会長に彼が尋ねるとやはりタヌキであった。
「口直し」と言うからかなりうまいだろうなと俺は期待して食ったが、これまた全然うまくない。
しかも臭い。