この辺でそろそろ、なぜ俺がベトナムに来たかと言う理由を話さなければならない。


俺にとっての「ベトナムという国」は子供の時に3回の接近遭遇がある。


1回目は石森章太郎の有名作品「サイボーグ009」である。


小学校5年の時に読んだこの漫画で第3巻に出てくる「ベトナム編」と言うのがあった。


サイボーグ009のストーリーを知ってる方はわかると思うがブラックゴーストと言う世界的な死の商人のグループがあり、彼らは世界中の戦争で戦ってる両側の軍隊に武器を販売しては大儲けしてると言う悪の組織であった。


俺は子供心に、なんと悪い奴らだと思ったものである。

俺の中では仮面ライダーのショッカーと並ぶ「二大悪」であった。


このブラックゴーストが当時リアルタイムで、日本の茶の間で話題に上っていたベトナム戦争の舞台に出てきて、北ベトナム政府軍と南のベトコンに対して武器を「ただ」で供与してその性能のテストをしていたのである。


この事実を知って頭に来た、ギルモア博士が9人のサイボーグナンバーを使ってブラックゴーストと戦うと言う物語であった。


子供ながらも、これを読んだときにギルモア博士が009に言った「どちらの兵士も傷つけてはならない」と言う言葉がいまだに記憶に残っている。


ギルモア博士はいい人だ。


余談ではあるが石森章太郎はこの「ベトナム編」を描く際にかなりベトナムのことを詳しく調査したことが、現在こちらに来てわかった。


例えば、漫画の中のある村長がアメリカ軍に対して「ダーダオ・ミー」と叫んでいたシーンがあったが、今こちらに暮らしていると確かにその発音で「アメリカ軍出て行け!」(因みにアメリカはミーという)と言うことがわかった。


とにかく俺は、この漫画で巨大国家同士が何も関係ない人の庭に入って大喧嘩してる、そしてその庭で平和に暮らしている村民たちを何の躊躇もなく虐殺しているんだと言う事実を知ったのであった。


漫画と言う文化は、非常に事実を分かりやすく伝えるものである。


加えて、俺の初恋の相手は003(フランソワ・アルヌール)であったこともここに白状しておく。