10分ほどすると斉藤から電話があった。
「成分を確認しました。全くOKですから1000ドルを渡してください」
「了解です」
と俺は1000ドルを彼女に手渡した。
しかし彼女はすぐに金を受け取って帰ると思いきや
「実は相談があります」
と言ってきた。
「なんだ?」
と聞くと。
「今、在庫で1000万円分のコエンザイムが工場にあります。今ならなんとか抑えられますが、明日になったら提携先に売ってしまいます。もし成分が納得いくのでしたら1000万円分を買いませんか?」
との提案。
早速俺は、斉藤に電話して以上の要求を伝えた。
「是非買ってください!うちの工場ではそれ以上が必要なんだけど取り急ぎその分だけは確保したい」
とのことだった。
「先方は買いたいと言っている。で、支払い条件は?」
と俺は電話を切らずに彼女に尋ねた。
「はい、キャッシュで明日中にお願いします」
とのこと。
俺は斉藤にその旨を伝えた
「キャッシュはお見せしたように今カバンの中にあるから1日御社で立て替えてくれないか?もちろんその製品は先ほどと同じく1200万円で買い取るから」
との返事。
表面上、この商行為を考えると電話で10分のやりとりだけで200万円の利益が入ってくるから誠にいい話である。
しかしそれは「斉藤が本当に支払うならば」という条件がつく。
俺の会社の銀行口座にはそのくらいの金はある。
要は俺の判断しだいである。
もう一度電話をする
「斉藤さん、まだ空港にいるのならこちらに来てもらえないですか?それで目の前で現金取引、それがベストです!それか、明日中の入金なので明日帰って来てください」
と俺は言った。
「いや、もう飛行機の中なんだ。座席に座って今電話しているから、なんとか御社で引き受けて欲しい。ホーチミンには明後日かえる予定です。まもなく離陸しますから一旦電話を切ります。また電話します」
と言って切れた。