翌日、秘書から電話があった。
内容は「高級日本料理店で昨日のお礼をしたいからぜひスタッフと来て欲しい」と言うものだ。
うん、ここまではまあまあ良い反応だ。
大体今までの経験則によると、アテンド内容に納得したクライアントは次回の訪問や今後の手続き等のコンサルタントを正式に依頼してくるのが通常であった
だから1回目は餌として無料でアテンドすることが多かったのである。
作戦勝ちである。
しかし今回は真逆であった。
レストランに着くと寿司と天ぷらが既に用意されており、「ささ、どうぞ召し上がって下さい」と秘書が酒を勧めてきた。
そして社長から「昨日はありがとうございました。大変助かりました」のお礼の言葉。
これを受けて俺は答えた「どういたしまして今後ともよろしくお願いします」と。
しかし次の言葉に俺は耳を疑った。
「つきましては、今後は昨日行ったカラオケのお姉ちゃんの日本語がうまかったので彼女を使って国営工場とのつなぎをやってもらいます」
「え?」
俺は理解できなかった。
「また意外と簡単に工場に入れることもわかったので、今後は私たちのチームで全てを行うことに決めました。本当にありがとうございます」
と話し方は丁重であるが言っている事は言語道断である。
簡単に工場に入れたのは俺の10年来の付き合いの賜物である。
ここがまずわかっていない。
しかもカラオケ姉ちゃんごときに大事なビジネスを任せられるわけがない。
しかしここでいきなり怒るわけにはいかない。
大魔神はとりあえず待機させておく。