医者は麻酔の注射針を抜き取るや否や、先ほどのメスでいきなり目の上をカットしようとしてきた。
視界にメスが迫る!
俺は医者ではないが「麻酔というものはすぐに効かない」ことは理解しているつもりだ。
歯医者に行った時でも麻酔をしたあと、だいたい10分から15分後に治療が始まるのが日本の常識である。
そのことを俺は英語で女の先生に言うと
「後ろを見ろ」という
後ろはさっきの話のごとく長蛇の列が続いている。
中には急患に近いような赤ん坊を抱いたご婦人の姿も何人か見える。
要するに「後ろが詰まってるから早くしろ」と言ってるようだ。
よくわからないがここはアウェイである。
素直に俺は麻酔抜きで目の上をカットされた。
痛いの痛くないの!
これなら自分でカッターナイフで切った方が手加減ができていいとすら思った。
痛さに耐えかねているとカットはすぐに終わり、脱脂綿は膿と血がいっぱい出てきた。
10秒ほどの手術が終わり絆創膏を張られた俺は目の上を押さえながら手術室を出た。
痛みで気が狂いそうであったが受付に行き、治療費のお金を払った。
俺はそこでやっと麻酔が効いてきたのに気がついた。
手元の金が何枚にも複数に見える。
さらに朦朧としながらも病院を後にする俺。
しばらく麻酔が利いていたので近くのベンチに寝転んで30分ほどしてから家に帰った。
いまだに目の上には傷跡が残っている。
ベトナムの病院侮りがたし!