会社に戻った俺は今見たはまやんの症状を思い返していた。
「足の指先に子供が踊る・・・
なんとメルヘンチックな情景であろうか?」
まあ、幻覚が見えるということは薬物であろう、間違いない。
急いで俺に紹介した日本の友人にメールを打った。
内容は
「今までベトナムに来て浜やんがやったこと。そして迷惑していること。最後にお前が紹介したはまやんは以前何か病気は持ってないの?かそれとも薬を打った経験はないか?」
と率直に聞いた。
すぐに彼から返信があった
「俺は直接確認したことはないが聞いた話によると以前学生時代に LSD をやった経験があるらしい」と。
俺
「なんでそんな大事なことを先に言わないんだ?もしそれを最初から知っていたなら雇うことはなかったぞ」
友人
「本人曰く、もうLSDは完全に足を洗ったと言っていた。
そして態度や人格もまともだったから紹介した」
俺
しかし現実はおかしな症状が出てきてる。おそらく持ってきた薬が切れたんじゃないのか?」
友人
「そうかもしれない。大変申し訳ないことをした」
俺
「分かった。起こってしまったことは仕方がない。とりあえずこちらで対処する」
このようなやり取りがあって俺は決断に迫られた。
社長業というのは船の船長と一緒で迅速な決断が求められる。
嵐が来た時に船長が考えるのはまずは船員の命である
この場合俺が優先させたのは社員の命と居候させている家族の命である。
何が起こっても仕方がない状態であるから。
「はまやん成敗」俺の決断はこの一言であった。
「はまやんを急遽日本に送り返す!」これしかない。
これが社員と友人家族の命を守ることだと決断した。
決断すると俺は速い。
ホーチミンの旅行会社に行き明日、日本に帰る航空機のチケットの手配をした。
このチケットを持って俺は夕方はまやんの家に行った
するとはまやんは昼に行った時とは全く違う様子でかなり症状が落ち着いているのか従順にまともな受け答えをしてきた。
後で聞いた話であるがこの LSD というのは鬱の時と躁の時がはっきりしていてまるで二重人格のようになるという。
ちょうど今はその二重人格のまともの方が今目の前にいる。
そこで俺は死刑宣告を行った。
「おいはまやん、くどくどとは言わん。明日の朝一番で日本に帰れ。そしてもう二度とベトナムに来るな」
俺がそう言うと彼は涙を流しながら
「社長申し訳ありませんでした。薬を使っていたのを秘密にしてすいませんでした」と土下座をしてきた。
まあ、今頃土下座をされても決断を覆すことはできない。
「まあ今回は縁がなかったと思って素直に帰ってくれ。そして二度と薬はやるな!」と言った
次の朝本当にやつが帰るかどうかが心配だったので社員2名をつけて空港まで送った。
躁の状態時にさっさと強制送還である。
その後日本ではまやんがどうなったかは全く関知していない。