次の言葉が言えずに黙ってる俺に対してはまやんは

「ほら社長、みてください。今度は子供のお母さんがやってきました。反対側の親指の上です」


もちろん俺には、はまやんの足の指に来たと言うお母さんも見えないしそもそも踊ってる子供も見えない。


しかし彼は執拗に足の親指を指差してその上で子供とお母さんが踊っていることを主張する。


「どこにそんな親子がいるんだ!馬鹿な話はいい加減にしろ!」


俺はこういうのが精一杯だった。


「あ、社長今度は子供が友達を連れてきましたよ。見てください僕の足の指に3人が踊っていますよ。この状態では会社に行くことができませんね」


こっちを向いてやつは朗らかに言った。

その顔を見た俺はいきなり悪寒に襲われた。

 

そしてこいつを居候させているベトナム人の友人に俺は声をかけてはまやんの部屋の外に出た。


「おい、こいつは普段からこんな変なこと言ってるのか?」

 

「はい、最近時々夜中に起き上がって携帯電話を使って大きな声で話しすることがあります」


「しかしそれは本当に誰かと話ししてるんだろうが?」


「いえ、そうじゃなくて、その電話機は充電されていない電話機なんです。つまり電池の切れた電話で長い間誰かと話をしているのですね」


「うーん、それは重症だな・・・」


「それとこんなこともありました」

友人は続ける

「ベトナムには各家庭に先祖を祀る祭壇があります。日本にもありますよね」


「ああ、あるな」


「ある時その祭壇に向かって『ああ、日本からお父さんがやってきた!』と言って祭壇に潜り込むのです。もちろん小さい祭壇なのであの大きいはまやんが入ることはありませんがその姿は異様でした」


「うーん、それはもうこの世のものと思えんな」

「はい、ですから私も家族に小さな子供がいるので何か変なことをされないかと心配していたところです」


「いつからそういう症状が現れた?」


「この3日ほど前からですかね。最初来た時ははそういう風なことはありませんでした


「わかった、ちょっと対処を考えさせてくれ・・・」

と俺は言ってはまやんの居候している住居から退去したのであった。