そこで2つ隣の韓国人が他の客とは全く違った対応をした。
いきなり携帯でマシンの画面の写真を撮り始めて、周りにいる我々に「証言者となれ」と言ってきたのだ。
やはり韓国人と言うのは我々日本人と違って数少ないチャンスを無駄にしない人種だと思った。
彼の言い分は「マシントラブルであろうがなんだろうがこれは店の不手際で5億4000万を払え」という論理だ。
「なるほどそういう考え方もあるか」と韓国人を除くわれわれは「どうしようか」といった感じで顔を見合わせた。
我々のスロットマシンの周りにはカジノ全体の客が集まって見に来ていた。
全員がことの成り行きに注目している。
「ミラクル!」
「クレイジー」
などの大きな声が上がっている。
その時にカジノの1番地位の高いゼネラル・マネージャーがあわてて走ってやってきた。
俺たち6人に対して5000ドル(約500,000円)を支払うというのである。
迷惑代と言うわけである。
韓国人を除くわれわれは喜んでその5000ドルをもらった。
しかしその韓国人だけは違った。
こんな事は長い人生の中でめったにない出来事であるからわからなくもない。
彼はその5000ドルの受け取りを拒否して我々に対して「証言者としてここにサインしてくれ」と胸ポケットから出した手帳に5名の名前を書くように依頼してきたのである。
しかも「もし5億取れたらいくらか分け前をあげるから」と言って丁寧にも名刺を手渡してきた。
次の日からその韓国人は弁護士を雇ってシェラトンホテル相手に裁判所に提訴したのである。
いまだに裁判は係争中であるがベトナムの多くの新聞がこの記事を書いて有名になった事件である。
俺は思った。
韓国人はやはりたくましいと。
もっと勉強すべきと小市民である自分を呪った