何度でも言うが私はひげを尊敬している(口が裂けても本人には言わないが)
なぜ尊敬してるかというと、とかく金持ちはしょぼいやつが多い中でやつは大変気前がいいからである。

今回のロンアン省知事一行の日本行きの旅費、滞在費(結構いいホテル)、移動費、食費は前にも言ったがひげがスポンサーである。なおかつやつは、当時ロンアン省では1番の納税者(今はサッポロビールに変ったが)であるにもかかわらず知事一行に気を使う姿はいじらしいものがある。さすがに南ベトナム出身でありながら頂上まで上り詰めた男である、お上に対しての泳ぎ方をよく心得ている。

最終2日前、こんなことがあった。

東京で「有名な神戸牛が食べたい」という省知事の要求を受けた私は知り合いの和牛専門店を予約した。在日本のベトナムの行政や知人を伴って総勢40名以上の予約である。

「おい、ひげ一番上のおひとりさま2万円のコースでいいか?」
「ああ、かまへん」
「80万円なりやぞ」
「ああ、かまへん、いっとけ」

このようなやりとりのあと40名で和牛の店に行ったら省知事は大満足であった。
それはそうであろう神戸牛のA5のランクである。舌の上で解けるやつだ。

「おいしかったからもう1人前づつもらおう!」と知事がおかわりを催促する

「おい、ひげ、あんなん言うてるけど大丈夫か」
「ああ、かまへん、いっとけ」

「追加コース40名!」追加をオーダーする
その後満腹したのであろう、知事が

「みやげに同じ数だけベトナムに持って帰りたい!」

「おい、ひげ、あんなん言うてるけで大丈夫か」
「ああ、かまへん。行け」
「追加、持ち帰りで40食!」

さすがに店主が飛んできた。私の友人の部下であるが支払いのほうがさすがに心配になる領域を超えたらしい。それはそうであろう。

「すいません、ご注文はありがたいのですが、お支払いは大丈夫でしょうか?」ときた。やんわりと失礼なやつだ。

「おい、ひげ、あんなん言うてるけで大丈夫か」
「おう」といい彼はかばんから500万円ほどの札束を見せて「これで足りるのか?」と店長に聞いた。
「し、失礼しました」と店長はほっとしながらも安心したのであろう奥に引っ込んだ。

さてめいめいが300gの神戸牛をお持ち帰りになって次の日が大問題になった。
日本での最終日なので「日本で一番おいしいすしを食べたい」という知事のリクエストがあった。
「おい、ひげ、あんなん言うてるけで大丈夫か」
「ああ、かまへん。行っとけ」

というひげの返事で私は銀座の一番高いすし屋を6時に40名分予約した。ここまではいい。
問題は5時半ごろに40名を乗せたバスが銀座に近づいたときであった。
知事が「すしもええけど昨日の和牛がうまかったからもう一回食べたい、みんなはどうだ?」ときた。
有楽町の交番が見えてきた、すし屋はもうすぐだ。
知事以下のみんなは「みんなはどうだ?」と聞かれて反論するわけがない。
「では反対が無いようだから和牛に決定!行き先を変更!」
「おい、ひげ、あんなん言うてるけで大丈夫か」
「ああ、かまへん。行っとけ」
バスの運転手に行き先が変ったことを告げ、昨日の焼肉店に40名の予約もOkであった。しかし問題は銀座のすし屋のキャンセルだ。正直これは難航するとさすがに思い電話をかけた。
「すいません30分後に行く予定のベトナムの40名ですがキャンセルです」
「は?」
「あのもう一度言いますキャンセル願います」
「あのね、うちの店は100年以上続いてるけどこんなのははじめてや。30分前に40名分のキャンセルやと?こっちは朝から仕込みしてるんやで!どうするねん」
「おい、ひげ、あんなん言うてるけどどうする」
「ああ、かまへん。代金プラスキャンセル料を払おう」
「あの迷惑料として代金プラスキャンセル料を払うと言ってますが」
「そんな問題やない。食材にたいしての感謝の気持ちはないのか?」
「おい、ひげ、あんなん言うてるけどどうする」
「金は渡すからお前で何とかせい、こっちは知事以下を昨日の和牛の店に連れて行くから」
と金の入ったかばんを渡した。
「わかりました、いずれにしても今からそちらにいきますのですしの用意はしておいてください」
その後私は東京中の友人に電話した
「銀座のいい店でですしをご馳走するから家族全員、なんなら友達を誘って来てくれ!」
短時間で40名を集めるのは至難の業ではあったがなんとか20名が集まって「にわか同窓会プラスその友人会」みたいな感じで大広間は半分埋まった。おそらくこのブログを読んでいる方の中で何人かは「ああ、あの時の急なすし大食い大会の舞台裏はこうだったのか」と納得していただけたであろう。そのせつは急な呼びかけにもかかわらず大変ありがとうございました。
全員にお持ち帰りをさせて食べ物は終了、お金も払ってこちらも終了とあいなったが、すし屋の店主の気持ちはよくわかる。逆の立場であったら大怒りであろう。
すいませんでした。
なんか書いていて日本のバブル期の話のようであるが何度も言う「ひげはいいやつ」だ。

へとへとの旅は続きます。