個人所得税~短期滞在者への課税
短期滞在者の課税
短期滞在者への課税に関してはベトナム国内法での取り扱い、及び日越租税条約での取り扱いがある。日越租税条約の条件を満たす場合には租税条約の規定が優先して適用される。それぞれの取り扱いは下記の通りである。
l ベトナム国内法の短期滞在者の取り扱い
ベトナム国内法の規定では、2004年6月以前は滞在日数30日未満の滞在者は非課税とされていたが、2004年7月より施行されている改正個人所得税法によりこの規定は削除され、現状滞在日数が183日未満の短期滞在者に対してはベトナム源泉所得に対し一律25%が課税される。
l 日越租税条約上の短期滞在者免税規定
日越租税条約上に短期滞在者に関わる免税規定及び下記3つの免税要件が規定されている。
①ベトナムにおける滞在期間が、1暦年に合計183日を超えない
②報酬の支払者がベトナムの居住者でない
③報酬がベトナムにある恒久的施設(PE)により負担されない
租税条約上の規定としては上記3点の要件を満たせば原則免税されることとなるが、この免税規定が自動的に適用されるわけではなく、納税側が税務当局に対して免税適用に対し各種申請を自ら行う必要がある点注意が必要である。
個人所得税~税額計算方法
個人所得税額の計算
ベトナムでは会社負担の税額も課税対象とされ、タックス・オン・タックスが採用されている。ネット契約の場合の税額計算の流れは下記の通りである。
①ネットでの月収を税率表を用いてグロスアップする
②①の金額の15%を会社負担の家賃実額を比較し、小さい方を課税所得とする
③①②の合計額に関する税額を税率表を用いて算定する(会社負担の税額)
④ネットでの月収、②、③の合計額に関する税額を算定する(納税額)
個人所得税~課税対象
課税対象
居住者は全世界所得が課税対象となり、非居住者はベトナム源泉所得が課税対象となる。課税所得・非課税所得は以下の通りである。
①課税所得
定額所得 |
・ 給与・賃金・手当 ・ 賞与 ・ 役員賞与その他、利益処分からの所得 ・ 事業所得(利益税の対象となるものを除く) ・ 会社負担の社宅賃料・光熱費(上限グロス総所得の15%まで) |
不定期所得 |
・ 外国からの送金、贈与 ・ 個人の契約に基づく技術提供等による所得 ・ 文学、芸術作品、技術デザインの使用料 ・ セミナーや学術研究による所得 ・ 宝くじの賞金 |
②非課税所得
・ 社会保険、退職金、福利厚生
・ 技術開発、発明の報奨金
・ 国内・海外からの賞金
・ 国家からの報奨金
・ シフト手当、危険手当、僻地手当、年功手当、奨励金他
所得控除
現状ベトナムには非課税所得の規定のみであり、所得控除の制度はない。
個人所得税~申告納税事務手続き
申告・納税事務手続き
ベトナムでの個人所得税の納税手続きとしては月次での予定申告・納税及び年次の確定申告となる。
・ 月次申告
月次申告は暦年の総所得見込み額の12分の1に基づき計算され、翌月10日までに月次申告を行い25日までに納税する必要がある。
・ 年次申告
年次の確定申告では年間の実際の総所得額に基づいて年間の個人所得税額を算定し、2月末までに申告を行う。月次で既に納税した金額を確定申告による年間個人所得税額が上回る場合にはその差額を3月10日までに納税する。過払いの納税額がある場合には、翌年の納税額から減額される。
個人所得税~納税者区分と税率
納税者の区分(居住・非居住者)
ベトナム国内法の規定では、居住者/非居住者の判定は連続する12ヶ月の間でのベトナムにおける滞在日数が183日以上の場合には居住者、183日未満の場合には非居住者として判定される。
税率
居住者に対しては最高税率40%の累進課税が適用される。非居住者に対してはベトナム源泉所得につき一律25%課税となっている。
<居住者の定期所得の累進税率表>
(単位:月収・ベトナムドン)
税率(%) |
外国人 |
ベトナム人 |
||
超 |
以下 |
超 |
以下 |
|
0
|
|
8,000,000
|
|
5,000,000
|
10
|
8,000,000
|
20,000,000
|
5,000,000
|
15,000,000
|
20
|
20,000,000
|
50,000,000
|
15,000,000
|
25,000,000
|
30
|
50,000,000
|
80,000,000
|
25,000,000
|
40,000,000
|
40
|
80,000,000
|
|
40,000,000
|
|