大人になってからでも生きやすく変われますよ。 | 心療内科 公認心理師カウンセラーの心を軽くするblog

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公認心理師。症例件数のべ8千人。生きやすさにつながる問題解決&提案型のカウンセリングで、常に2か月先まで予約がいっぱいのカウンセラー。

精神療法(カウンセリング)でよくなっていく患者さんにどんな変化があるか…ということを説明しています♪

※フィクションです

 

(このみ)は、32歳のキャリアウーマン。

前の会社で上司とそりが合わずストレスで転職したばかりだ。

初めて任された企画を成功させようと必死の毎日だ。

 

ジリリリリリ

目覚まし時計が鳴り響く。

 

「あぁ、もう6時だ。 起きないと。 今日の会議、頑張らないと。 全然眠れなかったから身体が重いわ……」

布団の中で、好は呟く。

重い体にムチ打って、朝食を準備し食べ始める。

一日の段取りや緊張や不安で頭の中はいっぱいだ。

 

会社に着き、エレベーターで、鈴木さんと乗り合わせた。

(朝からツイてないな。 鈴木さんと話すとなんか落ち込むんだよな)好は思った。

 

「今日の飲み会、話題のお店で楽しみですね」

当たり障りない会話で切り抜けようと考えた。

 

「僕、社内飲み会って大嫌いなんだよ。 君、よくあんなくだらない会を楽しみにできるね」

 

(はぁ、余計なこと言わなければよかった)

好の心の中にジワッと後悔が拡がる。

 

「そういえば課長がプロジェクトを好さんに任せて大丈夫か心配していたぞ」

「え……課長が?」

好は、答えに詰まるショックを受けた。

 

(私に能力がないって課長は思っているんだ)

そう思うと、嫌な気持ちがますます拡がっていく。

 

席に着くと、後輩の安田君がのん気に話しかけてくる。

「好先輩、これ教えてください」

 

(何で会議前で忙しいのに気づかないのかしら。 後輩なら察してサポートするべきなのに)

心では腹を立てているが、口には出せない。

時計をチラチラ見て忙しいアピールをしているのに、気付かぬ安田君にイライラしてくる。

 

会議が始まり、大勢の前で話し始める好。

緊張で資料を持つ手が震えている。ドキドキしてきた。

皆が好をバカにした目で見ている気がした。

 

「完全にダメだった。 転職早々、私、もう終わったわ」

好は会議が終わると息苦しさに我慢できずにトイレに駆け込んで泣いた。

 

見かねた友人が“生きやすくなる”というカウンセリングを教えてくれた。

カウンセリングなんかで生きやすくなるとは思えなかったが、藁にもすがる気持ちで通うことにした。

 

「人間関係のストレスや転職など衝撃が重なると生きづらくなる考え方の癖が強くなって当然ですよ。 単なる癖であって好さんの本質ではないので、生きやすくなる癖を身につけていきましょうね」

カウンセラーに言われた。

 

「自分が変わるのは怖いけど、癖なら変えてみようかな」

と思えた。

 

好は、つらくなる考え方や言動をしていたこと、意識が自分に向き過ぎて緊張していたことに気付き、色んな療法に取り組んだ。

感じたことを事実ととらえてしまう癖は、事実と感情を分けて捉える練習を重ねると、目の前が明るく開けていくのを実感した。

 

「皆にバカにされているって思っていたけど、皆って誰よ? 誰も言ってないことを、勝手に深読みして作って受け取っていたわ」

 

以前の考え方の癖に思わず苦笑してしまうほどになった。

好は、もう以前の好ではない。

好史上、最強の生きやすさになっているのだ!

 

そんな折、又、好は企画リーダーを任された。

 

会議の朝。

 

ジリリリリリリリ

目覚まし時計が鳴り響く。

 

「あぁ、スッキリ! 体が軽い。 そろそろ起きようっと」

起き抜けは、暗示が入りやすい脳のゴールデンタイムだ。今まで辛くなる暗示をかけていた自分に気付き、ゾッとした。

今では、ベッド横に入れたい暗示をメモして貼ってある。

 

「~しなければいけない」と言うのも考えるのも癖だったが、これはストレス脳内物質が出ていると知り「~しようっと」と、語尾を変えた。

すると焦燥感を感じなくなった。

 

好は、朝食の準備をし食べ始める。

今まで、同時に色々こなすことで、時間を有効に使っているつもりだった。

が、それは実は脳の偏桃体の疲労に繋がると知り、食事中は食べることに集中し五感を使って味わうようになった。

結果、より美味しく感じるようになったし幸福感を感じやすくなった。

マルチタスクで脳を酷使していた時より頭はスッキリして仕事の効率は格段にアップしている。

 

会社に着くと、鈴木さんにバッタリ会った。

 

(出た! 感情ヴァンパイア!)

感情ヴァンパイアとは、接すると活力が吸い取られたかのように感じさせる人のことだ。

それを知ってから、心の中でバリアを張れるので、嫌な気分に飲み込まれることがなくなった。

 

「部長が『今年の企画は全然ダメ』って言ってたよ」

鈴木さんは、相変わらずだ。

 

(お! 吸いに来ましたね! 鈴木さんてば、『全然ダメ』って典型的な漠然思考よ。 ダメってなにがどうダメなの? あなたの主観に満ちた言葉はもう受け取りませんからね)

そう思い、好はコッソリ、指で十字架を作る。

 

部長がどんな意図とニュアンスで言ったかわからないのに、いちいち真に受けて傷つくのは労力が勿体ない。

部長が直接言ってきたときに対処できることをみつければよいだけの話だ。

 

そう思うと、

「そうなんですね。 頑張ります」

と適当に答えられる。

 

会議の前に、安田君が話しかけてきた。

 

「今、会議前だから後でも大丈夫? その方が丁寧に説明できるから」

今まで、自分さえ我慢すればうまくいくと思って無理してきたが、重要なのは断り方だと知った。自分も相手も尊重するアサーションというコミュニケーショントレーニングを行い対人ストレスが激減した。

「言わなくても察してほしい」という期待は、叶いづらい願いナンバーワンと知って、その期待は捨てた。すると、他人のことも必要以上に忖度することがなくなり楽になった。

 

会議が始まり、大勢の前で話し始める好。

ドキドキしてきた。

が、以前のように緊張から嫌な結末を予想して不安に飲まれることはない。

 

「大勢の前で話すのだから緊張して当然。 どうすれば伝わるかに意識を切り替えよう」

今までは、緊張=よくないことだと思って必死に押さえつけようとしていた。けど、押さえられなくて更に緊張していた。

感情に抵抗することを止め受け入れていると、自身に向かっていた意識を周りに向ける余裕が生まれた。

対処できることが増えると、それが自己肯定感につながっていった。

 

会議が終わって席に戻ると、何人かと目が合った。

今まではバカにされていると感じた目線だったが、言われていないことは勝手に受け取らない練習をしたところ、目が合ったという事実だけをとらえ、バカにされているとは思わなくなった。

 

「私も以前はヴァンパイアだったわ。 事実じゃないことを勝手に受け取って嫌な気持ちまき散らしていたから。 これからは、幸せと活力をばらまく、ポジティブ・エナジャイザーになるわ!」

 

好は、生きやすさを手に入れた上に、新たな目標まで持ち始めたのだ。

 

●患者様へ●

2月より文章鍛錬スクールに通い始め、テーマや文体がかなり変わっています。

今まで、患者様の症例や症状を中心に書いていましたが、暫くはスクールの課題に沿ってカウンセラー自身の体験を交えたblogになります。

心理療法のよさをもっとわかりやすく伝えたいという想いから通い始めたスクールですが、まだ試行錯誤中です。

 

通常のカウンセリング内容に変わりはなく、私のキャラが突然変わったわけでもないので、安心してご来院ください♡