La Prima Stella ☆

La Prima Stella ☆

このブログは白峰壱把の運営する二次創作サイト【Vesper.】のサブブログです。
主に突発的な作品や、過去作品を置いていきたいと思います。

取り扱いジャンル:WJ(死帳・脱色etc...)・MMO・創作
※女性向け表現・メンタル表現有り。

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ある時、気付いたら服が一着無くなって居た。
買い置きしてあった、いつもと同じ服の一つが。

その時の私はたかが服がと、別段気に止める事も無く過ごして居た。

だがそれは、意外な場所で見つかる事となる。




「何を、やっているんだ?」
「やぁ、おはようエラルド。クフフフフ、似合うかい?個人的にはなかなかに似合わないと思うのだけれどね」



朝、目を覚ますと。
そこには【私】が居た。

…否、表現が正しくない気がするので訂正するとしよう。
私の目の前に、私の姿を模した人間が居たのだ。

よくよく見て見ればそれは私が良く知る人間であり、服もあの時無くした一着であるのだと寝ぼけた頭で理解する。
欠伸を一つ。
そうして漸く今の所の自分の状態を確認した。


目の前には、私の格好をしたビヨンドが居る。

目線だけで辺りを確認すると、其処は確かに私の部屋だった。
目を開けたばかりの私は就寝時と同様、ベッドに横たわったままの状態で…目に映るのは、彼とその背後にある見慣れた天井だけ。
胸の息苦しさからも察するに…どうやら、私の上に彼は乗って居るらしい。


何時もならば特に何かに感情を揺らされるでもない私は、ただ幼稚な悪戯だとでも思うのだろうが…彼の格好からか、自分が乗って居る様な奇妙さが強く。些か薄気味悪いなと自嘲した。


「どいてくれないかい、ビヨンド。これでは起きれない」


それは失敬。
そう呟いたか否か、ワザとらしく今更気付いたフリをして彼は私の視界から退いた。

ダメ元で言って見たのだが、どうやら起床の邪魔立てはする気は無いらしい。

そうして私は漸く上体を起こし、改めて気違いな格好をしたビヨンドを見直した。

簾上に下ろした髪。
緩いジーンズにロングTシャツ。
顔には私を似せる為か、些か化粧の作り物めいた色合いが乗って居る。

客観的に言うならば。
正しくそれは、特徴だけ捕らえたら私そのものであった。

無論身長や体格、輪郭線などの違いばかりは直し様が無かったのではあるのだが。


「似合わないだろう?」


再び、彼は同じ台詞を問うて来た。
普通は似合うかと聞く処だが、彼は真逆を口にして笑って居る。

それは楽しげに。
笑う。笑う。嘲笑う。

さて、この場合はどう答えるべきだろうか?
相手の望むように答えるのも癪だが、提示された問題に正解出来ないのもなんだか負けた気がして嫌だったので、この場で一番ふさわしい答えを考える。


「…そうだね」


たっぷり間を開けた後、私はそう答える事にした。

寝台から身を下ろし、眠気に欠伸を浮かべながらクシャクシャの髪を掻き混ぜる。
その様子を、ただひたすら笑いながらビヨンドは観察して居た。

何が楽しいか解らない。
しかし、彼は笑う事だけは得意だから、楽しいとは限らない。


「ふふふ、…ヒャハハッ!ちゃららーんっ…うん、最後は何か違ったね。でもそうか、似合わないか。やはりね」


納得した様に笑いつつ、先程の私の仕草を真似てビヨンドは欠伸を浮かべるとクシャクシャに整えた髪を掻き混ぜてみせる。

何がしたいのか、何が言いたいのか、彼の遠回しの行動は、曲したトンネルの様に出口が在るくせに先は見えない。


「ビヨンド、私はお前の遊びに付き合ってやったんだから、意図くらい説明すべきだろう?」
「クククク、そうだね。そうだった。忘れて居た訳では無いのだけれど、説明する必要性があるのかは判らなかったんだよエラルド。…そうだね、一言で言えばお前になりたかったそうだよ」


私の質問に、まるで他人の話の様に答えるビヨンド。

だがその説明は、曖昧かつ、先程の何よりも適格で判りやすかった。
ただ、理解は出来そうにないだろうと思う。
私が彼なら、【私】になどなりたくは無いのだから。


「似合わないだろう?エラルド」


3回目の問いが、自棄に切実味を帯びて居る気がした。
相変わらずの笑みのままに。

私は少し考えると、徐に手を伸ばして彼の顔を覆って居る髪をちょいと退かしてやった。
黒の下から現れた、真っ直ぐな黄金(きん)の瞳。

私にはない、非現実的な色。
こんなに美しいのに、なぜ隠そうとするのか解らない。


「ビヨンド、お前は私にはなれないよ」


だってお前は、お前であるが故に存在して居るのだから。

そう言ってやると彼は複雑そうに眉をしかめながら、本日一番、嬉しそうな顔をした。







(それでも私は、私以外の何かになりたい)
(出来る事ならば、お前になりたい)



それは所謂変身願望
(Beyond+Errold)




今まで女性アカウントの方で更新していた短文をメインの方に持ってきました。

というより…アカウントの名前が別だったので、別人だとかパクリだとかの疑惑がわくだろうということを失念してましたので、本日を機に統合してみました。


どう考えても、男性アカウントの方が使用率高いですしね^^;


更新率は亀の歩み並みの超低速更新ですが、徒然なるままに書きなぐっていきたいと思いますので宜しくお願い致します。












「明日が在ると言う言葉程、絶望的な台詞は無いと思うのだけれどどうかな?」


それは、余りにも唐突で脈絡も無い話題の切り出しだった。


「んっんー。だってそうだろう?明日がある、なんて。偽善でしかない。人は何時死んでしまうかなんて判らないのだから。その上、絶望に飲まれた時程、明日が来る事に恐怖を覚える事は無い」


彼…ビヨンド=バースディは、さも面白可笑しい事を思い付いたかの様な表情で、些か悲観論的な文句を言葉の意味に似合わず楽しげに話し始める。
私はそれを聞き入る気などなかったが、小気味悪いBGM低度の解釈で意識のうちに止どめつつ、手にして居た書物の続きをと勤しんでいた。


「明日、明日か。明日とは続き、先。未来形。現在進行形。生きるとは、時間が続く事。と言う事は、生命と言うのは現在進行形なのだろうか?どう思う?エラルド」


言葉遊びを紡ぎつつ、彼は独り言を質問に変えて私に振って来た。
否、先程から私に語り掛けて居たのだろうが、痺れを切らして名前を持ち出したのだと判断するのが正しいのだろうか?

目の前の子供を、前髪の簾越しにチラリと一瞥する。
ケラケラと、嫌な笑みを浮かべたままにビヨンドは私の回答を好奇心を帯びた動物の目で待ちわびて居た。

溜め息を、一つ。
先程の質問を脳内で復唱しつつ、本を閉じて相手の方に意識を向けてやる。

それに気付くと、待ってましたと言わん許りにビヨンドはその口を可能な限りにニンマリと歪ませた。


「過去進行形だろう?生まれてしまってから今迄、だからね」


私の答えに、関心する様にビヨンドは頷き笑う。
先程から彼は笑い続けて居るのだけれど、彼は笑って居る時の方が喜怒哀楽がはっきりして居る様に思える。
構って欲しかったならそう言えば良いのにとも思ったが、それを口にすれば彼は笑いながら怒りの牙を私に向けるだろうから止めて置いた。


「私はね、エラルド。如何にして生きるかより、如何にして死ぬかの方が大事だと思うんだ」


先程の明日がどうと言う下りは、この話への伏線のつもりだったのだろうか?
今度は至って真面目な口調でビヨンドは話を振る。
その表情は、先程と寸分変わらずに笑顔だったのだけれど空気の変化だけはひしひしと私に伝わって居た。


「顔に似合わずペシミストなんだな、ビヨンド」
「ふふふ…否、違うか。クハハハ!…ぷぁー。ゾゾゾゾ…うん、判らなくなったから笑い方は置いておこう。取りあえず褒めてくれてありがとうエラルド」
「褒めてる気は無いけどね」


その言葉は、悪態の吐き合いでしかなかったけれど。
ビヨンドは満足げに笑う。
先程から笑い続けて居る。
そう。過去進行形に。


「明日が在るなんて、期待を抱いて失望するのは馬鹿のやる事さ。それよりは、死ぬ時に未練や後悔なんか残さない様に日頃から死に備えて生きて居た方が楽しいと思うのだよ」


そう言って、ビヨンドは欠伸を浮かべた。
当たり前の事を話した退屈さの様に、泣き言を喚き散らして吐かれ果てた眠りの前の様に。

彼の口にした台詞を、私は吟味し。咀嚼し、飲み込む。
そして自分で理解する。


「私は…そうだね。最初から何かを予想して生きるよりは、今に充点を置くべきだと思うよ」
「それは、今を精一杯生きろと言う事かい?エラルド」
「否?お茶が覚めるから早く飲んだ方が良いと言う事さ」


私達が囲むテーブルの上、彼の為に用意されて居た紅茶は飲み頃を過ぎてすっかり冷めてしまって居た。
ビヨンドは、漸くカップに気付いたかの様に笑みを止めて驚きを含めて瞳だけ大きく見開いた。


「ほら、後悔しただろう?ワタリの淹れるお茶は美味しいからね。飲み頃を過ぎる事程後悔する事はない」


確かに、残念だ。
聞こえるか聞こえないか低度の声で、ビヨンドは呟き冷たい紅茶を飲み干す。

その姿を見ながら、私は漸く唇だけの笑みを浮かべた。


「思考しながら生きると、後悔は後からついて来るのさ。先程の言葉は訂正するよ、ビヨンド。君は随分と前向きに生きて居た様だ」




それはある日の戯言
(Beyond+Errold)







信じて居た世界があった
信じて居られる人たちがいた

それが根こそぎぶち壊れたら
今度は何を信じればいい?


【Wolves&Seven's Kid】



俺は、7人兄弟の末っ子だった。
理由は両親が至って絶倫で。
俺が生まれてもバカスカバカスカ、夜に元気に遊んで居たからだ。

ママは所謂快楽主義者で、セックスしないと生きてけないらしい。
働くも家事もパパの仕事で、ママは何もしなかった。


それでもママは綺麗だったから、パパが毎晩夢中になるのも俺には仕方無い気がして。
何も言わずに兄弟達と、すくすくすくすく育って行った。

ちゃんと構って貰えた例はないけど、兄ちゃん姉ちゃんは優しいし。
パパの手料理も美味いから、俺は幸せと思って居た。


そんな中だ。
パパが事故で死んだのは。

その日からだ。
ママが家に帰らなくなったのは。


貧困生活といっても差支えはなかった。

俺は外に出るのが滅法苦手で、しかも小さくて働き出にはならないし。
他の兄弟も頑張りはしてたけど、子供を雇う場所は余りにも少なくて。
支援が有れどもその日暮らし。
それでも皆は優しくて、毎日皆で仲良く小さなパンを分け合いながら生きていた。





俺はまだガキだったから、何が良くて何が悪いかなんて解らなかったけど。
確かに幸せに生きて居た。


ある日、俺はお気に入りの隠れ場所。
大きな柱時計の中でゆっくりと昼寝を嗜んで居た。

上の兄弟は今日は内職で。
みんな全員家で過ごしてた。

その時、扉を叩く音。
締め切られたその向こうから、何年ぶりかのママの声がした。


「ただいま、皆。苦労かけたわね。私はお金持ちの方と結婚するの。貴方達にはもう苦労させずに済むわ。お願い此処を開けてちょうだい?」


それは甘い声だった。
どんな女でも俺達にはママに変わりなんてなくて。

苦労せずに済むって甘い誘惑、乗らずになんか居られなかった。

兄ちゃん姉ちゃん大喜びで、大きなドアを開いたさ。
俺ももちろん飛び出そうとした、その時だ。


「きゃぁぁぁっ!」


甲高い悲鳴が響いたのは。


「あぶっ…ぁ…」
「嫌ぁ…お母…あ゛ぁぁ」


柱時計の隙間から見えた。
兄弟達の四肢累々。
真っ赤な真っ赤な血の水溜まり。

余りにも非ぃ現実的過ぎ。
落ちたコップから零れて見えて、それは葡萄酒の海にも見えた。





「ありがとうね」
「ガキの数人、たいした事無いさ」


海の上に居たのは、間違う事なく俺のママと。
見た事も無い、狼の様な獣の目をした男だった。
ママは男にお札を渡して、男はそれを数えて居る。


「これで沢山の保険金が入るわ。強盗が入った事にするの。貴方には毎月お金を送るから何処か遠くに逃げてちょうだい」


それはそれは嬉しそうな、聴いた事もないママの声。
狼みたいな男は笑い、兄弟の死体をけり飛ばす。

俺はとても情けない事に、怖くて此処から動けなかった。


「しっかし沢山ガキを産んだな。これで本当に全員か?」
「えぇ。何人産んだかなんか忘れたけど、6人で子供は終わりなはずよ」


その時だ、俺の中で何かが壊れたのは。
血だまりの中に6つの死体。子供を全部殺したママと、お金で動く狼男。

俺は、何処にも居ない。
この中には居ない。

俺を知るのは誰も居ない。


世界が、音を立てて壊れた気がした。


俺は、愛用のゴーグルを装備した。
顔や涙が見えない様に。

片手には鋭利なアイスピック。
危ないからと兄弟達が、物置代わりの此処に隠したものだった。





男は裏を向いて居る。
無駄に本ばかり読んでた頭は、瞬時に計画を算出した。


いける…


そう踏んだ俺は、柱時計から飛び出して…


男の目玉を、貫いた。


「ぎゃぁぁぁっ!!」


急な襲撃に眼を押さえ、よろめく目の前の狼男。
俺はそれに怯む事はなく、両手両足を貫いた。


前に読んだ、東洋の本。
人体急所が書いてあり、そこを貫けば肉体は使えなくなると在った。

案の定、人形の様に動かなくなる狼男。

その様子に、怯えた様にママが泣いて居た。


「いやぁぁぁっ!貴方、誰!?殺さないでっ」


ズキリと。
胸の内が痛む。

別に期待してた訳じゃぁ無い。
アンタなんかに抱かれたくはない。


ただ、悔しかった。
俺の存在意義が無くなった気がしたから。

俺の手には、もうピックでは無く樵の斧…


「ばいばい、ママ。」





次の日の新聞は、一面に同じ見出しが描かれて居た。


【一家惨殺事件発生!強盗が押し入り、6人の子供と夫婦が殺される悲劇!犯人は未だに見つからず、迷宮入り必至か?!】




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俺は役所のデータを弄り、俺の名前を抹消した。
代わりに死んだパパの後父として、狼男の名前を入れる。

人生初めてのハッキングだが、事はするりと解決した。
世界は俺が思ったより、頭の悪い奴等で出来て居る。


惨殺事件は迷宮入り。
7人の子供は居なくなった。

それで、この物語はお終い。


あぁ、余談だが俺の悪事はバレたんだぜ?
あの眼の下黒い名探偵のご立派な推理で。

戸籍完璧に書き替えたのに、消された俺に気付いたんだとさ。
やっぱり昔もLは天才だ。
ちゃんと事件の概要も真実も見抜いた。


で、何故か俺は彼のご好意で。
ワイミーズハウスに引き取られた訳だ。


面白かったか?

そんな神妙な顔するなよメロ。
そんな泣きそうな眼をするなよニア。


仕方無いな、二人とも。

とっておきの呪文教えてやるから。

日本の有名な呪だぜ?




あぎょうさんさぎょうご。



ほら、二人とももう大丈夫。
俺は目茶目茶怒られた。



…fin。