これは悪魔の誘いか天使のささやきか
2025年の春に大コケした訪問看護ステーションの仕事。全くの無計画で「訪問看護は儲かる」などと馬鹿な幻想を抱いた社長の夢は無残に散りました。結集した職員は2か月にして職を失う結果となり、給与の遅延や未払い、恫喝など散々なストレスを与えられ、労基署や弁護士などを巻き込んだ戦いは退職後も2か月続き、スタッフ皆非常に疲弊しました。
その後に訪れた、またまた訪問看護ステーションへの誘いのその後の話です。
どんよりした空気の中過ごしていた時にあるお誘いが。「今何かやってる?訪問看護ステーションの所長が退職することになって、その後の所長のなり手がいないんだけど。まずは話だけきいてくれないですか?」そんな1本の電話がありました。
また訪問看護
所長を引き継いでくれないかとのお誘いでしたが、もちろん答えはNO!
私は、小さいながらも会社をやっています。一番優先させなければならないのは自身の生活と会社を軌道に乗せる事。春からの訪問看護に関わったおかげで自社の売り上げは激減。自身の会社の仕事をしながらで良いとの条件でお手伝いすることになりましたが、実際は自身の会社の仕事ができる状態ではない程忙しかったです。
見通しが甘く、無謀な挑戦でした。今回も受ければ同様の状態になるのは見えています。
そして給与が支払われればまだましですが、それさえも約束されないとしたら・・・。
今回も仕事を受けてしまえば、甘えも妥協もありません。全力で取り組まなければいけないのが訪問看護です。
訪問看護は素人が考える程甘い仕事ではないです。私は過去に鬼のような訪問看護ステーションで3年間管理者を務めました。その時は、入社1週間目にしてすでに22時帰りとなっていました。入社月に、人生初の徹夜業務を経験しました。その後も忙しさは増していき、もう少しでうつ病になってしまうんじゃないかというぐらい精神的に追い詰められていきます。
訪問看護の管理という仕事は、24時間、365日体制の、1日たりとも休めない訪問看護の管理をする仕事です。そこに働く看護師さん達は常にストレスフルな状態で、日々命と向き合う仕事をしています。そんな状況なので、離職率も非常に高く、月に数名の退職者と入職者が発生していました。
そして訪問看護が特殊なのが、訪問スケジュールに空きは許されません。すべてが個別対応なので、人がいないのでしないという訳にはいきません。その日に絶対的な人数が決まっているので、体調不良で休んだ人がいるからといって一人少ない状態でまわすというのができないのです。
例えば10時から訪問予定の人が3人いれば、職員は3人必要です。一人が同時にあちこちに訪問することはできません。誰かが休めば。休みの人を借り出して補充しなければいけない。それが今日だけ、明日だけではなく365日ずっと続くのです。お盆だろうと正月だろうと。
毎日それをこなすだけでは済みません。体調不良になる方もいれば、救急搬送やご逝去される方もいます。
病院はある程度余剰があるので回せますが、訪問看護は余剰人員なんて置いたら即倒産です。
トラブルが起きれば自分たちで全てかいけつしなければいけないのです。スタッフに負担をかければ、ただでさえ負担がかかっているのですから即退職です。
そこで全てを被らなければならない仕事。それが訪問看護ステーションの所長(管理者)という仕事です。
受けるか迷った挙句
辞めるという所長に話を直接聞きました。自身が立ち上げたステーションを去るという決断。その後の職員たちの行く末。自身が必死に獲得し、繋いできた利用者のその後。いろんな気持ちが入り混じりながら「自分では無理だ。支えられない」そんな思いが感じられました。引き受ける方がいなければ閉鎖も致し方ないという・・・。
ここまで聞くと、受けないという選択肢はなくなります。
「何とかできないものか・・・」
訪問看護ステーションの管理者は、それを経験した人にしかわからない。自身の命を削り、家庭を犠牲にしてでも利用者の命を守る仕事。看護師としてのプライドをかけて。
訪問看護が嫌いな理由
訪問看護は、甘い考えで始めると痛い目を見る。もちろんいいかげんにやればできなくはない。それは利用者さんの命を軽んじるということ、法令遵守ということを捨てるという事です。そうすればやれなくはない。
訪問看護の原資は税金として納められた介護保険料や医療保険料です。法令は遵守するのはどんな事に対しても当然ですが、特に安くはない利用料(税金)を頂いてする仕事ですから、正しく使われなければなりません。
医療保請求も気が抜けない。利用者への訪問は絶対にいい加減ではいけない。スタッフの勤怠管理の甘えは利用者さんへの提供する看護の質に直結します。やらなければならないことのハードルが高いんです。訪問看護は。
だから、私が起業する時には、訪問看護は絶対やらない。できないと思っていました。
訪問看護の知識や技術はあるけれど、それをやり抜く気があるか、責任を取れるかと言ったら「絶対できる」とは言えないからです。全力を尽くしても、利用者さんが孤独死したり、自宅での転倒事故を絶対防げるわけではないですから。
理事を受けて2か月が過ぎ
最近、朝5時に目が覚めます。目覚ましが鳴る前です。そして6時には自宅を出ます。通勤時間は日中だと1時間から1時間半はかかります。ですが早朝であれば40~50分くらいで着くので、時間が節約できます。
ステーションについてまずするのは、寒いステーションのストーブの電源を入れ、神棚のお水を交換し、1日の無事を祈ります。加湿器に水を入れ、ゴミを出しに行き、1杯のコーヒーを淹れる。
さぁ今日一日も忙しい日が始まると気合を入れ、仕事を開始します。
昼間になれば少ないですが、訪問にも出動します。緊急対応が入ることもあります。電話対応に来客対応。ひたすら溜まっている仕事を消化していきます。消化したら、また新たな問題が発覚するのが最近です。
膨大な仕事に埋もれながらも、日々仕事を溜めずにこなし、気づけばだいたい20時くらいです。
こんな毎日ですが、片付けの出来ていなかったステーションはすっかりキレイになりました。
今まで数か月、物によっては数年放置されていた問題を解決のテーブルに乗せ、解決に向かって動き出しています。
とにかく時間は足りないけれど、優先順位をつけて整理し、業務が滞らず先を見て仕事ができるようになってきています。
責任が重すぎて嫌だった仕事が、少しづつ良い方向に向かっていく。
今年はたぶん良い年になります。




