了くん（奥）「孤独について考えたことある？」

あすか（手前）「ん？孤独？時々かな」

了くん「“光の街はない。世界が一つのかがり火になることはない。全ての人が自分の火を持っているだけ孤独な自分の火を掲げているにすぎない”」

あすか「了くん、スタインベック読むんだね」

了くん「うん」

あすか「どうしてそんなこと、考えたの？」

了くん「うーん。最近、命について思うことが多くてね。命の瞬きって簡単に消えてしまうこともあるし、そうでないこともあるでしょ」

あすか「そうだね」

了くん「生命力ってすごいもんだよね。一つも同じ命はないんだ」

了くん「同じ火がないってことは、ひとりひとりみんな違うんだ。みんな孤独なんじゃないかって。おれひとりが孤独なわけじゃないんだって思う」

あすか「そう思うんだね」

了くん「そうすると不思議と孤独じゃなくなるんだ。不思議な矛盾だよ」

あすか「うん」

了くん「おれ達の命は人に作られたものだけど、普通と何も変わらないんだよね」

あすか「うん」

あすか「熊を追っているとき、ひとりでしょ？どんな気分？」

了くん「あれも孤独は感じないな。熊撃ちの時は熊が乗り移るっていうか、熊に焦がれているっていうか、熊のこと全部知りたくなる」

あすか「わー、こわーい。入所者さんにも焦がれてる？」

了くん「入所者さんのお世話してるときはまた違うね。あれは忙しいけど、おれ頑丈だから、人のお世話できるって幸せかな」

了くん「一番つまらないのは射撃の大会の時。的が熊や鹿じゃないとモチベーション上がらない。たくさん人がいても孤独」

あすか「やっぱり恐いな」

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了くんにとって大会がつまらないのは、お肉が獲れないからなんですけどね。かれの孤独感はそういう基準なんでしょうかね。

了くんの孤独