「ねぇ、もし死神のバイトとかあったらどうする?」
「えっ…時給による」
彼女は突然突拍子もないことを言う。
焦げ茶のボブに、黄色いシャツワンピ。
グレーのカーディガンにぺったんこのサンダル。
デザートの林檎の皮剥きをする横顔は真剣だ。
見た目は悪くないのに、彼女のこのぶっ飛んだ思想のせいで、彼女はたまに損をする。
(現にサザエさんの真似をするんだーと言って丸々の林檎の皮剥きをしている。茶色く酸化させながら。)
とはいっても、随分昔から、彼女がこういう話題を持ち出す相手は限られるようになっていた。そうやって自分を守って来たのだ。
「そりゃもちろんいいよ、死神だもん」
「んーでも業務内容にもよるよね。実務とかだったらやりたくないなぁ。あの鎌とかで首『がっ』ってやったりすんのやだもん」
「事務だったら?」
「じ…事務?死神に事務あんの?」
「わかんない。もしかしたら今の死神は内職系かもよ。メールみたいなの送るとその人死んじゃうの」
「あはっ、まじで? それは怖いね」
「ね。自分のせいなのに、自分の知らないとこで死んじゃうの」
「うわぁ、そしたらでも人気ありそうだね、実感がないけどヤバいお仕事だから時給高いみたいな」
やりたくないけど、と付け加えながらあたしは林檎を剥くのを再開した。
あたしもやりたくないわー と彼女は笑うと、できたっ とガタガタの林檎に嬉しそうにかじりついた。
んん、甘いよすっごく!!
彼女は林檎の果汁を伝わせながら笑う。
その姿を見て、あたしは思うのだ。
この子は何を考えているのかわからない。
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