シアタークリエで上演中の音楽劇『ライムライト』を観劇しました。

主人公カルヴェロを演じる石丸幹二さんを中心に、吉野圭吾さん、植本純米さん、保坂千寿さん、舞城のどかさんの初演からのキャスト。

再々演には新たに、ヒロインのテリーを朝月希和さん、ピアニストのネヴィルを太田基裕さんが演じています。

舞台は1914年。

第一次世界大戦勃発の年に設定されていました。

チャップリンの映画『ライムライト』は見ていますが、舞台は初めて。

私は宝塚歌劇団時代の荻田浩一さんの演出が好きで、デラシネとでもいうのでしょうか、何処にも誰にも属せない漂うような感じが心地よいのです。

『ライムライト』は、時代に取り残された老いた芸人と、姉の秘密を知った疚しさから脚が動かなくなったバレリーナ、そして彼女に助けられて成功を手にしたピアニストの愛の物語。

映画では、愛するがゆえに前途あるテリーを突き放そうとするカルヴェロと、カルヴェロと結婚しようとするテリーに、ややくどいと思えるところもあるのですが、この舞台ではお互いを思う愛だけが伝わってきました。

また、ネヴィルのプロポーズを断るテリーの決意がうかがえます。

少し残念に感じたのは、ネヴィルが軽く見えるところです。

軽妙さが救いでもありますが、テリーの心を包み込む大きさや真摯さを感じられませんでした。

劇場支配人ポスタント(吉野圭吾さん)、演出家のボダリング(植本純米さん)の存在が、カルヴェロの昔日の栄光と今の剥落を際立たせ、アパルトマンの管理人オルソップ夫人(保坂千寿さん)は20世紀初頭の女性への倫理観や道徳を持つ女性。

映画『哀愁』を思い出しました。

舞台を引き締めたのはバレリーナの中川賢さん、舞城のどかさん。

2人の存在は街の中に、劇場の中に、カルヴェロやテリーの心を映しているようで印象的。

これぞ荻田先生！です。

元宝塚歌劇団雪組トップ娘役・朝月希和さんの退団後の舞台は『シェルブールの雨傘』に続き2作目ですが、確かな実力と可憐な魅力に磨きがかかり、今後ますます楽しみな女優だと思います。