年内のテストが終わったということで、映画を借りてきました。

かねてより気になっていた、ダーレン・アノロフスキー監督作品、ナタリー・ポートマン主演の『ブラック・スワン』。

以下感想&ネタバレです。

























『ブラック・スワン』

一応スリラー映画というカテゴリになるみたいなのだが、結構ホラーじみた演出だったので戦々恐々として観ていた。しかし同時に、主人公・ニナの崩壊していくさまに強く惹きつけられた。

これを観て、私は小説の『刺青』とアニメ映画『パーフェクトブルー』を思い出した。あとで調べてみたら、後者の作品に関しては制作後に関わりがあったみたいだ。

しかし個人的には以上に挙げた二作品よりも、人物の闇の引き出され方が鮮烈だったように思う。生きたまま生皮をはがされるような。


母親の異常な期待、仲間内からの嫉妬や嫌がらせだけでは到底あそこまでは壊れなかっただろう。

成長という言葉ではぬるい、役にのまれるというのはこういうことなのだなと思ったり。


トマの性的発言に関して、不思議とそこまでいやらしい印象は受けなかった。彼がいくら女性好きだったにせよ、そこに性衝動は感じられなかった(全くなかったといえばもちろん嘘になるが)。観客を、パートナーを誘惑する黒鳥を演ずるにあたって、確かにそういう経験は必要なのだとも納得してしまったせいかもしれない。そして、順序が逆かもしれないが、トマは男である前に芸術家だという印象があった。性慾すらも自分の作品の肥やしにしてしまうような男性。

そんなトマと、完全にそちら側の人間であるリリーの二人組、そして几帳面で真面目なニナという配置はうまく機能していたと思う。けれど、きっかけを与えられはしたものの、ほとんどニナが一人で黒鳥の役に染まっていった。それは彼女のうちにもともとそういうものが眠っていた、というよりは、彼女の性格故に壊れた結果、という感じがする。『刺青』の場合は少女に開発される余地のある官能が備わっていたという感想を持ったが、こちらは女性視点だったからか、そういう魔性的なものがいくらか少ない。もちろん黒鳥の役を演じるシーンで蠱惑的な色気を感じずにはいられないのだけど。

うーん…変貌の過程や心理を詳しく見せられるかどうか、の違いなんだろうか。


白、黒、赤というコントラストで映像が飾られていたのも面白かった。ニナの部屋はピンクが基調だったし、きらびやかなシーンもあったはずなのだが、白鳥との白と黒鳥の黒、ニナの血が前面に押し出されている。特にニナの血の表現はいろいろ意味が考えられるよな…。

抽象的な映像表現はちらほらあったが、ニナの小さな怪我というのは不可解な点が多い。背中の傷は、もともと抱えていたプレッシャーや重みの象徴だったんだろうか。それが消えたとき、彼女はもう以前の彼女じゃなかった、ということなんだろうか。うーむ。


中盤まではとても面白く観れたが、終盤の方は正直小さくまとまってしまった感が否めなかった。

そして一番気まずいシーンで母親が部屋に入ってきたのも残念。あはは。

たった今、ニュースでプロボクサーの井上尚弥さんのことが特集されていて、つい興奮してしまったので書きとめておく。


普段ボクシングを見ないので、彼の名前はさっき初めて知った。

ボクシングのルールや了解などはわからないけれど、彼の所属するジムの会長である大橋さんの解説で、すごく興味をひかれた。避け方や攻撃の速さが素直にかっこよかった。


そしてそこに辿り着くまでの道のりやお父さんとの関係に、感動すると同時に尊敬した。

試合の流れをアドバイスするお父さんの真意を汲めるってすごいことだ。あと井上選手が大人びていて本当に19歳かと。


やっぱり何かに一生懸命取り組んでいると、精神的にも磨かれていくものなんだろうなと偉そうなことを思ってしまった。


いつにもまして稚拙な文章になってしまったけれど、あまりに感動したので。

電車の中で集中して読むと頭が痛くなる…。

今日読んだ本。以下感想です。














中村うさぎ 『さびしいまる、くるしいまる。』


中村さんのエッセイはまだいくつかしか読んでいないが、やっぱり面白い。

ショッピングの女王などの異名を持つ中村さんだが、ここではホストクラブ通いの日々を綴っている。

正直私もホストクラブと聞いてあまりいいイメージを持っていなかったのだが、中村さんの苦悩や葛藤の軌跡を通じて、いろいろと考えさせられた。ホストクラブそのもののイメージというか、ホストクラブに金を注ぎ込む客の気持ちについてのイメージが変わった。

裏表紙の紹介欄で興味をひかれ、ついページをめくってしまっていたのだが、気になっていた結末はほんのおまけのように思えた。中村さんがホスト通いを通してわかったことの方が大きくて。


今まで、ホストクラブといって思い浮かぶのは自分の指名したホストをナンバー入りさせるためにシャンパンを注文する女性と、笑っているホストの男性。私は、女性がホストクラブに何を求め、何を買いに来ているのか、店の競争に加担することのどこに歓びを感じているのかわからなかった。

だが、中村さん本人による体験を読んで、その内側がわかった気がする。これはあくまで中村さん個人の記録であるが、少なからず心理的に共通するところはあるのだろう。どのお客さんにも。


文庫版あとがきの内容が(指名ホストの実情が明らかになる点が)不思議と薄く見えてしまうのは、中村さんがそれまでにたどった道のりがあまりにどろどろしていたからだろうと思う。自分と向き合い、自分を書く。自分しかいない世界に気がつき、ホストに自分を重ね、ひきくらべ、自分、自分、自分・・・。

それを書いた中村さんを私は尊敬する。彼女の激しい浪費や遊びを表面だけで笑うことはできない。

なかば反面教師でもあるけれど。


だから理想を重ねたホストがどんな所業をはたらいていようが、読後感はあまり変わらなかった。

この本にはあまりホスト本人のことを書いていないから。これがそのホスト自身のことをどんなに愛したかとか、盲目な文章であったなら、ラストの衝撃も大きくなろうが、いかんせん中村さんが終始自分を見つめ通しているので、特に大きなインパクトがあるわけでもなかった。じんわりとした哀しさや切なさが残るエッセイだった。