講義の補足その2
第2回の講義は、「戦略」が主テーマで、経営のフレームワークを学んでもらうことがメインでした。
「ベンチャーでなぜ戦略が必要か?」
「ベンチャーの経営戦略を考える際に大企業向けに開発されたフレームワークが有効か?」
と言われると、確かに心もとない部分もある。
経営に過去と同じパターンが使える部分は多くなく、ましてやイノベーションを起こすベンチャーが他社と同じ発想で良いのかという指摘もあろう。
ただ、これらのフレームワークは偉大な先輩が、多くのケースから生み出した知恵の詰まったものであり、それを一部でも活用できれば良くて、また人に説明する場合には、相手も同じフレームワークの知識があるから共通語で話をすれば理解が早い。
したがって、講義の中では一揃いのフレームワークを紹介しつつも、それぞれについて深入りすることはしなかったつもりである。ビジネスマンとしての「常識」として知っておく部分と、自分の頭を整理する際に活用することがあれば、逆にその程度で、先に述べたように万能薬ではない。・・・と思うからである。
配布資料に無かったスライドで重要なものだけ掲載して、再度説明する。
BCGマトリックスは、企業における事業ポートフォリオの分析に用いられる(ゆえにケースもキリンだった)が、昨今、ベンチャーとしても複数商品を持っていたり、単品経営からの脱却をIPO前から求められることからも、知っておくべき「常識」であろう。
4つの象限に分類することは良いとして、それぞれの象限ごとに戦略定石がある。
問題児とスターに投資するのは間違いない部分として、気をつけないといけないのは、金のなる木のビジネスへの対応である。
ここでの定石は投資をしないで、利益回収を図ることだ。成長は鈍化しつつあるとは言え、シェアも高くて利益も上がっている事業を、その段階で見切りを付けて利益最大化を図る、最近の流行で言えば事業売却さえも視野に入れることになる。
口で言うは易しだが、実際には難しいし、この舵取りが重要である。
戦略定石と言う意味でもう一つのスライドが、ポーターの戦略を示した下のもの。
ポーターは競争手段とターゲットで3つの戦略を示している。
講義の中では自動車業界を例にあげて、戦略を示した。
トヨタがコストリーダシップであり、BMWが差別化、集中ではポルシェとスズキなど。
それにつけても先週発表されたトヨタの業績は素晴らしい。金融・資源でなくて、営業利益2兆円というのは誇らしくさえある。
「ニッサンがかつて「技術にニッサン」を標榜して差別化戦略をとったのに対して、トヨタは同質化戦略を挑み一旦は打ち負かした。そこでゴーンは二番手ながらコストリーダシップ戦略に立ち返り、徹底したコスト削減で成功した」と話したが、これについてはきっと諸氏意見があろう。
学生さんには、「技術のニッサン」の時点で「?」だったので、あまりピンと来なかったようだが。
埋めがたいジェネレーションギャップ。。。
ジェネレーションギャップと言えば、ベンチャー企業紹介で、前回、「牛角」を取り上げて、牛角のイメージを聞いたところ、「高い」「汚い」だった。それ以前の焼肉がまさに「高い」「汚い」だったところへ、「安くて、モダン」にしたのが牛角のイノベーションと言いたかったが、すでに今の焼肉が当たり前の若い世代には通用しなくなっている。まさに牛角/レインズの悩みもそこにあるんだろうなあ・・・と再認識。
次回の講義では、ユニクロを企業紹介に取り上げるつもりだが、その延長で考えると、学生さんは昔のフリースの熱狂を知らないんだ・・・。