昨日、蒲田の東京工科大学 大学院のバイオ・情報メディア研究科で、半日講義 をした。
話ができるのは「ベンチャー」のことで、最近の興味の一つが「ベンチャーの領域」だから、それをテーマに3時間くらい講義&ディスカッションをした。その中でもいくつか発見があって面白かった。
①ブルーオーシャン
ブルーオーシャン理論がハーバードビジネスレビューの載ったのが、一昨年末だかで、書籍(翻訳本)は昨年だったような記憶がある。正直、ネーミングは素敵だが、内容自体は乏しい気がしているし、無競争状態は必ずしも新規市場だけでないし、事例として挙げられている日本の散髪市場へのQBハウスの例も、ブルーオーシャンを築いたというよりも、これは大前研一氏も昔からしてきしていたように旧弊に甘んじていた/守り続ける業界に挑んだ勇気の事例だろう。
anyway、学生さんもこれを学び、受講生の間で共通語として普及していることにビックリした。
- W・チャン・キム, レネ・モボルニュ, 有賀 裕子
- ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する
②不動産業
日本で不動産ベンチャーのIPOしている件数は無私できない数である。
分類が難しいが、野村金融研究所の資料によるとセクター別で5位である。ちなみに1位はITで、医療・ヘルスケアを上回る。
受講生も事例研究の中で3人が不動産ベンチャーを取り上げていた。
今までREIT関連で特に山手線内の不動産価値の高騰や築15~20年のマンションの急増が、リノベーションを絡めた不動産ビジネスのチャンスになっていることは知っていたが、それがベンチャーの大きな事業領域となっていることまでは認識していなかった。
③ものづくり
電気・電子部品などのいわゆるものづくり領域が、ベンチャーが活躍できる領域か、特に日本のベンチャーとしてどうかは意見がわかれるところだ。ちなみに受講生の事例にもそういった会社事例はなかった。統計的には少なくはない。が、過去の長い蓄積のある下請け会社が上場するケースもあるから、必ずしもベンチャーの領域とは言えない気がする。改めてその理由を考えて見た。一番は直接顧客となる大手メーカーの態度にあると思う。要は要求が厳しすぎるのだ。採用までに長い年月を要していては普通のベンチャーは絶えられないし、増してや要求の一つが生産能力だったりすると、生産設備への先行投資を余儀なくされ、資金繰りとの攻防の中で大手からの朗報をひたすら待ち続けることになる。すると得てして、延期や微修正になり、資金がバーンして、ダウンサイドでのファイナンスに走り回ることになる。
昨日もベンチャー成功の要因として、自分が圧倒的な優位を築ける領域に特化すること、時代の潮流に乗ること=顧客からの絶対的なニーズが得られることが、絶対的な条件なんだろうと思う。些細な不具合で商談が延期になるのでなく、それでも買うシチュエーションが無いとベンチャーとしての成功は期しがたいのかも知れない。
中古のマンションの壁の小さなひび割れで、購入自体を止める人はいない。
しかしシリコンウェハーの超微細な不純物混合が一枚でもあれば、購入先を高くても定評のある会社に変えてしまう。
無責任日本体質の中で、しぶとく生き残り、成長を期する思案が必要だ。