年上のスタッフには音楽業界でもがいている人がいた。

当時の事件がきっかけで、告白され、特に何も考えず付き合ったが

数年後別れた。


もう一人男性のスタッフがいたが、女性スタッフの結婚式に律儀に出たり

口調はつっけんどんだがやさしい人がいた。

実際当時の事件に直接関わり助けてくれた人が彼だった。

だいぶ彼も脅されたようだが、(結構若かったはずなのに)怖気ずくこともなく

今は一部上場の企業で役職を持っている。

彼は特に関わりのなかった私にも時々連絡をくれた。

「元気?」

とそれだけの内容だったが、

「元気だよ」

とそれだけの返事をしていた。

何度か再会をしてみたものの、5.6年ぶりのお互いの顔に気づくはずもなく

初対面のような感じでそっけなく食事をした。

特に特殊な感情はお互いに無かったので、特になにもなかった。

喫茶店での雰囲気はまだ幼さが残る少年であったし、きっと私もまだ化粧もうまくできない少女だっただろう。

お互いに年をとったね、と話したりした。

いつだったか結婚を目前とした私は、恋愛のときめきを感じることはなくなっていたが

背もずいぶん高くなって、凛々しくなってしまった彼に

「ああ、大人になるってこんなことなのかな」

と、なんとなく思った。

まだ20歳そこそこの頃、勤務していたIT企業の昼休みに遊び心で行った流行の喫茶店があった。

当時出始めた「メイド喫茶」たるもので、平日の昼間はすいていて、尚且つ活気も無く「楽そうだな」とゆうイメージがあった。

冗談半分で「ここで働くにはどうしたら良いんですか」なんて聞いてみたら、案外簡単に方法を教えてくれた。

当時は若いながらもバリバリなOLまっしぐらだったが、デザイナーをやってみたくて先も考えずに退職し、求人雑誌にあった服飾系の会社にアルバイトしに行くことにした。

だが収入は驚くほど安く、高校生のおこずかいよりも安い月給だった。

一般企業とのギャップにげんなりし、先も考えずに退職。

初めての家賃が払えない状況に焦り、体を犠牲にしてみたりもした。

そのときに「メイド喫茶」を思い出し、応募してみたところ合格。

適当に「おたくでコスプレが好きです」と嘘をつき、働き始めることにした。

実際仕事は楽で、楽しかった。

人気がある店らしく、出勤にも制限があり、収入をそんなに期待できなかったため

偶然受かった税理士事務所に入社しながらも仕事は続けてみた。

休日限定で出勤していたとはいえ、当時人気急上昇のその店では看板の顔となることができた。

(別に歩合とか指名はなかったけれど)

暫くして、当時の店長が薬物で脅してきたこともあって無断で逃げた。

そのときのスタッフは男女ともに仲がよく、「レベルが高い」と言われていたものの

自然に皆辞め、「レベルが低い」店に早代わりした。

都内某所の心療内科。
アンダーグラウンドな店や画期的な祭でも盛り上がる人気の地域。
昨日の夜遅くまで(明け方まで)読書に明け暮れてたのもあるし、昼夜逆転してるのもあって、二時間も予定を押して受付を済ませた。

待合室は伝染病が流行った時代の総合病院のように混んでいる。
座る椅子もなく乱雑にパイプ椅子も置かれているが、それでも座る所はない。
平日の昼下がりだと言うのに、患者はさまざま。
活気のない生活に嫌気がさした風の主婦から、人生に疲れたサラリーマン。
今日初めて見たが、今診察室に呼ばれた青年は、日本語が話せない白人、美少年、まるでモデルだ。
通訳か恋人か、美しい青年には見合わない女性がついていった。
他には…
と、見回す。
若い女性は今の所私一人。いつもは10代の可愛らしい女の子がいるときもある。
診察室外の非常階段には、渋谷なんかにいそうなカッコイイおしゃれな青年もイライラしながらタバコをふかし、診察をまっていた。
ここのクリニックは女医の先生で、名医…のような感じはしない。
グレイズアナトミーのアジアンの研修医に似てる感じはするかも。
ここは予約制ではない。
だからこんなに取り留めもなく混み、二三時間待たないと名前を呼ばれない。

だが予約制なんてものがないからこそ、心が重い私達には来やすいのかもな。と思いながら、キイと音を立てて扉を開くのだ。