呼ばれた。
呼ばれた・・・気がした。
深い・・・深い、眠りから覚めたように、瞳を開ければ暗黒の空が映った。
ここはどこだ・・・?
何も分からないのに、何故か懐かしい気もする変な感情があった。
だがそれをなんと表現するのかは分からない。
体はと言えば・・・とても軽い。
なのに、どこか胸の辺りが重たくも感じるのは何故だろうか・・・・
もう一度・・・座ったまま空を見上げた。
膝を立てて。
晴れ渡る空が見たいと、心のどこかでなのか、
もしくはずっと昔から願っていたかのように
静かに・・・ただ、静かにその空を待った。
「ふん・・・・やっぱり重い気がする・・・それに・・・
なんか背中が疼くな・・・。」
その者・・・
いつからどこに現れたのか、誰も知らない。
その者自身でさえも・・・
こんなにも真っ暗な空だっていうのに、視界はいたって良好だ。
よく見える・・・
遠くに行き交う人々さえも、海の向こうでゆっくりと進む船も。
その者は、いつまでもいつまでも・・・
静かに、静かに・・・ただそこに佇んでいた・・・・。
=====================================
ポカポカ・・・・
暖かい日差しとコーヒー。
いつものように俺が起きると、そっと手を掴んで
それを持たせてくれる。
庭にある花が、これから咲く準備の為に、真夜中の冷たい空気と
朝の暖かな光を浴びて、今か今かと顔を上げてひたむきな幸せを
噛み締めているように見える。
「ん~・・・なんて、いい日だ・・・。」
ソンギュは細い目を更に一本にし、今日のスタートを
楽しんで何故かにやけていた・・・・。
ソンギュ:「へっくしっ!!うぅ~~さぶっ!!入ろっ入ろっ!!」
身をかがめながら腕を擦り、震える手でベランダから室内へ入るソンギュ。
カオリ:「クスッ・・・。日光浴は終わったの?」
ソンギュ:「・・・・・・うん。」
カオリはそんな恥ずかしそうにするソンギュをまたクスリと笑った。
ソンギュ:「何っ?」
カオリ:「いいえ、何も?」
ソンギュ:「あぁ~それにしてもうちの天使はまだ寝てるのか・・・。」
カオリ:「起こす?」
ソンギュ:「いやっ、俺の欲で天使様の眠りを妨げるわけにはいかないからいい。」
カオリ:「大袈裟ねwもう、10時よ?」
ソンギュ:「だなっ!起こしてもいいよなっ??」
カオリ:「そうねw今日はもう起こしたほうがいいかもね。」
ソンギュ:「今日は?・・・はっ・・・起こしてくるっ!!」
そんな事を考えるよりも、ソンギュは早く娘の顔が見たくて仕方が無かった。
カオリ:「まったく・・・・w」
子供のように浮かれて廊下を小走りにソンギュは
娘の部屋へと向かっていった。
その後ろ姿にカオリはまた笑わずにはいられない。
カオリ:「ふぅ~・・・私は幸せだな・・・うん・・・。
これが・・・幸せというものなんだろうな。」
======================================
それにしても・・・・
あれから何年経っただろうか・・・・
みんな元気にしてはいるけど、どことなく寂しげなのは私のせいね・・・
カオリはそんな風に自分を責めていた。
消えていった神と悪魔。
でも、それは私たちの為だったなんて・・・・
もしかしたら自分のせいかも知れない。
ソンヨルもホヤもウヒョンもミョンスのところにさえ、まだあの子達は戻らない・・・
そんな物思いにふけていると、何やら娘の部屋からソンギュの叫び声が聞こえた。
ソンギュ:「うぁわあああああああっっっ!!!!」
アテン:「んもぉ~・・・なぁに~?うるさいよぉ~アッパはー・・・・。」
ソンギュ:「カッカッカッカっ!!!」
アテン:「カ?カがどうしたのぉ~・・・ふぁ~・・・
ふぉ~んと・・・アッパはうるさいんだから・・・。」
アテンは大あくびをしながら、文句を言った。
ソンギュ:「おっ・・・大きくなってる・・・・。」
ソンギュは娘を見下ろして、目を丸くしたまま動けなくなっている。
アテン:「んっ?アッパっ!!どこ見て言ってんのっ!?変態っ!!」
ソンギュ:「やっ!やっ!違うッチガウッちがうっ~~~!!!」
アテン:「フンッ!出てって!!」
ソンギュ:「カッカッ・・・カオリぃいいいいいっ!!どういうことだっ!???
カオリィ~~~~っ!!!!!」
カオリ:「はい・・・。ここにいますけど?」
ソンギュ:「うわっ!!びっくりしたっ!!」
既にソンギュの真横に並んでいたカオリに、ソンギュは驚きを隠せない。
ソンギュ:「心臓がどうにかなりそうなんだっ!!こっっこっこっこっ・・・・」
アテン:「朝から鶏のマネ?www」
ソンギュ:「違うっ!!そうじゃなくてっ!!アテンッ!!お前は今一体
何歳なんなっ???」
アテン:「何歳なんな?って何・・・・;;;」
カオリ:「まぁ・・・16歳ってとこかしらね?」
アテン:「ん・・・ママおはようぉ~。」
カオリ:「おはよう、アテン良く眠れたようね。」
アテン:「ご覧の通りっ♪アッパのセクハラまがいの言葉にも上手く返せてるわっ!^^」
ソンギュ:「はぁ~・・・・なんてこった・・・。」
ソンギュにはアテンの悪ふざけも聞こえていない。
勝手に、ワナワナと震えて、この現状を受け入れられないままだ。
アテンが大きくなってる・・・。
昨日まで10歳ぐらいだったのに。
これは初めてのことじゃないんだけど・・・・
その前なんて、6歳ぐらいで・・・その1年後には10歳ぐらいになった時でさえ
驚いたのに、今回これは・・・
これは悪魔の呪いか・・・それとも神の悪戯なのか・・・
俺には全く分からない・・・。
アテンが生まれて次の日にもう立ち上がってたし。
うぅ~ん・・・このまま一気に年とって、俺より老けていって
俺より先に死・・・・いやいやいやっ!!
そんなワケないっ!!
そんな事あってたまるかっ!!
ソンギュは顔面蒼白しながら、アテンの肩を掴んで言った。
ソンギュ:「天使よ・・・もう少し寝ていなさい・・・。アッパはちょっと
カオリに話が・・・・。」
アテン:「えぇ~っ??今起こしたよねっ?そんで今度は寝なさいって・・・。
ソンギュ:「っ!!そうだなっ!!」
そうだ・・・確かに何十時間も眠ると急激に成長してる気がする・・・。
これ以上の成長はご近所の目もあるし困る・・・
何よりも俺がどうしていいか分からない。
ソンギュ:「カオリ・・・じゃぁ、ちょっと向こうで話そうか・・・。あれっ?」
アテン:「ママ、いないよ?」
ソンギュ:「へっ?なんでっ??」
アテン:「先にリビングに行ったんじゃん?」
ソンギュ:「そうか・・・じゃぁ、後でな。」
そう言ってソンギュはアテンの部屋から出ようとした。
アテン:「アッパッ!!」
ソンギュ:「っ?」
アテン:「ファイティンっ!!^^」
ソンギュ:「・・・・;;;;;っ。」
ソンギュは唇を引きつらせながらも、弱々しいガッツポーズを取った。
『何をだっ!!
何をファイティンなんだっ?天使よっ!!』
ソンギュの頭の中は混乱でしかない・・・・
まるで台風。
カオリ:「落ち着いて?まるで台風ね。」
ソンギュ:「何がっだよっ!?」
カオリ:「言葉が飛んでるわよ?」
ソンギュ:「そっ・・・そんなことより・・・アテンはこのまま俺たちより年を取って
先に死ぬんじゃ・・・・。これって、ルシ・・・いやっ・・・あいつもかわいそうなヤツ
だったよな・・・俺今混乱して・・・ごめん、カオリ・・・こんなこと口にするなんて。」
カオリ:「・・・・いいのよ。あなたのせいでもルシファーのせいでも神のせいでもないの。」
ソンギュ:「うん・・・だよな。俺たちだけはあいつら二人を否定しちゃ・・・ダメだよな?」
カオリはゆっくりと瞼を閉じて頷いた。
ソンギュ:「それにしても・・・あいつら元気かな・・・?マリーさんとか・・・リナさん・・・
アキ・・・レナさんは・・・・。」
カオリ:「そうね・・・まだ目覚めていないのかしらね・・・ウヒョンからあれから連絡は?」
ソンギュ:「・・・一応・・・ウヒョンにも他のみんなにもカオリと結婚したことと
子供が生まれたことは連絡したけど・・・誰からも連絡はないんだ。」
カオリ:「仕事場では会わなかったの?」
ソンギュ:「俺達が活動してる時はカオリも見ての通りだったと思うけど、
だんだん活動の幅も広がってきてからはあんまり・・・。」
カオリ:「INFINITEは活動しないの?大分休んでるわよね?」
ソンギュ:「もちろん解散してるわけじゃないから、これからやると思うよ?」
カオリ:「また新しい何か・・・社長も考えているのかしらね?」
ソンギュ:「そうだといいな・・・。」
カオリ:「ソンギュ・・・そんなに自分を責めないでね?
誰のせいでもないの・・・・それにしても・・・あの子達はいつ起きるのかしらね。」
ソンギュ:「あぁ・・・ほんとにな・・・。」
ピンポーン♪
ソンギュ:「んっ?誰だっ?」
アテン:「あっ!私出るっ~♪」
カオリ:「ウフフ・・・お願いね?」
ソンギュは二人の顔をキョロキョロと行き来しては、
何事かと不思議がって目を膨らませた。
ソンジョン:「こんにちはぁ~^^ソンギュヒョンいますか?」
(ん?誰だろ・・・ヒョンの親戚の子・・・?)
アテン:「オッパ!!やっと会えたねっ!!」
ソンジョン:「えっ!?やっと・・・会えたねって・・・。」
(嘘っ?もしかして・・・アテンちゃん???
それにっ・・・あのアテンちゃんなのっ!??)
ソンギュ:「えっ!?ソンジョンッ!!???」
ソンジョン:「あっ!ソンギュヒョンっ!久しぶりでーす。
ちょっと遅くなっちゃったけど、赤ちゃん生まれたって聞いて・・・これっ!」
アテン:「私にっ!?」
ソンギュ:「えっ・・あっ・・おいっ!」
そう言ってソンジョンが抱えてきた大きな花束を、アテンは腕を大きく広げて
抱え込むように受け取った。
ソンジョン:「あっ・・・えっ?・・・あのぉ~・・・。」
カオリ:「ソンジョン、久しぶりね。この子が私とソンギュの子よ?」
ソンジョン:「え゛っ!!」
ソンギュ:「分かる・・・分かるよ、ソンジョンア・・・だよな・・・だよな?」
カオリ:「なんだか、この子・・・どういうわけか16歳ぐらいよね?」
ソンジョン:「えっ・・・?へっ・・・・???ぐらいよねっ・・・・て。ヒョン?」
ソンギュ:「まぁ、なんだ・・・とにかく入れよ。」
ソンジョン:「あっ・・・はい・・・。」
アテン:「オッパ!やっと会えたっ!!私ね?ずぅ~っとアッパに
写真とか(自分のだけど)DVDとか(自分のアップのとこばっかりだけど)
見せられてたのっ!!)かなり無理やり)だから、早く会ってみたかったんだぁ~^^」
ソンジョン:「あっ・・・なるほど・・・wありがとう^^僕もずっとアテンちゃんの
顔を見たかったんだよ?なかなか来れなくてごめんね?」
(なんだ・・・君じゃないのか・・・あの、・・・アテンじゃないのか・・・。)
ソンジョンは少しだけ胸が痛んで、笑った。
その笑顔には少しだけ苦い思いが溢れていそうで、ソンギュの眉も
少しだけ下がるようだった。
ソンギュ:「やっ・・・見せられてたって・・・。」
アテン:「事実・・・でしょ?」
ソンジョン:「あははっアテンちゃんはカオリさんに似たのかな?w」
カオリ:「ソンジョン?」
カオリの軽い睨みにソンジョンは肩をすぼめる。
アテン:「あっ、そうだっ!!私これから友達と約束があったんだった!!
ママっ!ちょっと行ってくるね!!」
カオリ:「気をつけてね。」
そう言って、アテンはカオリにハグをしているのを観たソンギュは
笑顔で両手を広げた。
アテン:「じゃっ!行ってきまぁ~すっ!!」
ソンギュ:「あっ!ちょっ!アテンッ!!アッパ!アッパ忘れてるっ!!」
すると走り向き直ったアテンの足が急に立ち止まり、
ゆっくりと振り返り、ゆっくりとソンギュに近づいていった。
ポン、ポン・・・
アテン:「はぁっ・・・はいっ!じゃねっ!!」
ソンジョン:「・・・・・;;;」
ソンギュ:「何だよっ!?俺は子供扱いかっ!?おいっ!アテンッ!!
アッパにそれはないだろぉ~~っ!???」
カオリ:「もういないわよ?」
ソンジョン:「ですね・・・。」
ソンギュ:「あぁ・・・あの、つれなさは一体誰に似たのか・・・。」
カオリ:「wwwさぁ?」
ソンギュ:「はっ!!ところで、今日あんなに大きくなったのに友達って???」
カオリは首をすくめて分からないという。
ソンジョンは少し不安げに混乱している。
ソンジョン:「ところで・・・僕まだ紹介もされてないんだけど・・・・
まぁ、状況は理解してるよ・・・。ソンギュヒョンの子って
さっきの・・・大きくなった?アテンちゃんだよね?」
ソンギュ:「あっ・・・すっかり忘れてた。そうなんだよ・・・どういうわけか今朝になって
起きたらあんなに大きくなってて・・・俺、朝からずっと混乱してんだよっ!」
ソンジョン:「今朝?じゃぁ、昨日までは赤ちゃんだったの?」
ソンギュ:「いやっ・・・それが違うんだ。
もう、何度も急激な成長を何度か繰り返してる。ただ・・・。」
ソンジョン:「ただ?」
ソンギュ:「あの子の時の流れがやけに早いままなら・・・このままなら・・・。」
ソンギュは苦悩の表情を見せた。
ソンジョン:「ヒョン・・・・。」
ソンギュ:「なぁ、ソンジョンア、数年前に生まれたばかりの子が今は既に、
見た目が16歳ぐらいってなぜだと思う?」
ソンジョン:「うーん・・・正直分からないけど、やっぱり何かの歪みなのかな・・・?
それおもカオリさんが今まで使ってきた命に関係があるんじゃ・・・。」
カオリ:「私に?」
ソンギュ:「カオリが・・・俺たちに命の源の光を与え続けたことか?」
ソンギュが引っ掛ていた事を言うと、ソンジョンも同じように
思っていたのか静かにうなづいた。
ソンギュ:「あの子が眠るとこうなんだ・・・。深く居眠りついた日の翌日には
急激に大きくなってる。それが最近、その成長っぷりがものすごく早いんだよ。」
カオリ:「このあたりでゆっくりになればいいけど・・・心配よね。」
ソンジョン:「そうですね・・・それで、他のヒョン達はソンギュヒョンの所に
会いに来ました?」
ソンギュ:「いや・・・まだ・・・。」
ソンギュがそういった後に、ソンジョンはカオリへと顔を向けると、
カオリは首を横に振っていた。
==========================================================================
はぁ~・・・・それにしても、今日はいい天気だなぁ~♪
うるさいアッパからも開放されたし~♪ほんと気分がいいや!
アッパはほんっと心配性なんdなよねぇ~・・・
まっ、嫌いじゃないけどっw
ん~。。。それにしても、私・・・昨日何してたっけ?
ま、いっか!あそこに行こっと!!
そう言って、アテンはよく行く場所へと足を向けた。
広がる青い空と、まだらにゆっくりと流れる雲。
それに伴って、頬をかすめていく暖かな風は、
どこか自分を優しく包んでくれるように感じる。
たくさんの小さな声があちこちに飛んでは消え、
また違う方向からも飛んできている。
そこへどんどん足を踏み入れていくアテン。
たくさんの小さな靴と大きな靴が追いかけっこしているここで、
大きな敷地の真ん中あたりでは時間が来ると、クジラが海面から顔を出すように
水しぶきを上げていた。
アテン:「おっ!あったあった!私の指定席!!よいしょっとっ!!」
アテンは海面から顔を出したクジラの時間に間に合い、
いつものあたりに腰掛けた。
アテンは人の目を引いた。
とても長くふんわりとウェーブのかかった髪を揺らすと
誰もが振り向き、目を奪われた。
それはまるで絵に書いたような姿だった。
目をつぶって空を仰ぎ、何も考えずにただじっとしていると、
耳の奥に蝸牛をぐるぐるとたどって、ゆっくりと”それ”が伝わる・・・・
(ん・・・・?)
何か?と考える間もなく、突然目の前が陰った。
もちろんまだ目は閉じたままだが、それはわかった。
だが、目を開いてみても目の前には誰もいない・・・
声・・・・・?
違うかな・・・・風?
アテンは訳も分からず、ただ導かれるように歩き出した。