キリスト教神学の入門書、概説書として、良質のテキスト。恥ずかしながら、昔、カトリックの中高に通ってはいたものの、これまでキリスト教について、きちんと勉強したことがなかったので、本書を読んで目からうろこが落ちる思いがした(「目からうろこ」という表現については、本書132頁ご参照ください)。

売れっ子、佐藤氏が本来の土俵で楽しみながら書いていることが伝わってくる。正調の神学論なのだが、時々話が脱線するところが、大学の人気教授の名講義を聴いているようで、飽きさせない。


それにしても、佐藤さんという人はすごいですね。先日、ラジオに出演していて、執筆量月1200枚、12月は年末進行で1600枚と言ってました。一日50枚以上?やはり怪物ですね。



はじめての宗教論 右巻~見えない世界の逆襲 (生活人新書) (生活人新書 308)/佐藤 優
¥819
Amazon.co.jp


新潮文庫の新刊。07年度三島賞受賞作品とのことで、手に取ってみた。最近ほとんど小説を読んでなくて、小説の世界にすんなりと入れるかどうか不安だったが、面白く読めた。メタフィクションというのか、高橋源一郎風というのか(こういう括り方は作者に失礼だと思うが)、いわゆる「小説についての小説」という、いかにも消化の悪そうなテーマにもかかわらず、さすがにメフィスト賞作家、スムーズに読者を導いていく筆力に敬服。小説から遠く離れてしまった私には幸運な出会いだった。この著者の他の本も読んでみたい。


1000の小説とバックベアード (新潮文庫)/佐藤 友哉
¥460
Amazon.co.jp

「おわりに」より・・・

「マージナルマンとは境界人という意味で、複数の系の境界に立つ生き方という意味である。ひとつの足を帰属する企業・組織に置き、そこでの役割を心を込めて果たしつつ、一方で組織に埋没することなく、もうひとつの足を社会に置き、世界のあり方や社会のなかでの自分の役割を見つめるという生き方、それをマージナルマンという。 ・・・ただ、仕事先の組織を唯一の世界と思い込み、「うちの会社」という意識に埋没し、家畜ならぬ社畜となって自らの存在すべてを譲り渡すことはするまいという意識を失うことはなかった。自分の時間を確保する努力をし、会社の外の研究会に参加したり、フィールドワークをする試みを続け、それを毎夜机に向かい整理して作品にしてきた。」


本文にも大いに啓発されたが、この「おわりに」に撃たれた。多分、多くの人が同様の思いを抱きつつ、日々の生活に疲れ、実行には移せていない。たとえ実行できたとしても、まがりなりにも社会に認められる成果を生むのは至難の業だ。この人は企業人として日本を代表する商社の常務にまで上り詰めながら、それ以外にも産官学を通じ、煌びやかな活動を展開し、多くの質の高い著書を上梓し、メディアにおいて真摯で説得力のある発言をし続けている。頭が下がる思いです。

世界を知る力 (PHP新書)/寺島 実郎
¥756
Amazon.co.jp


  ・・・