今年も夏がやってきた。僕は暑いのが得意ではないので正直うんざりしている。でも、アイスを食べていても
変な顔をされないからやっぱり夏は好きだ。

と言う事で夏真っ盛り。照りつける太陽、立上る入道雲、青い空、白い雲、青い海は漣(さざなみ)を奏でている。
今僕は、・・・僕たち、僕とマスター、それにがくぽとレンは海に来ている。
事の発端はレンが「海水浴に行きたい」って言ったことだった。
僕はレンとがくぽがはしゃぐ姿を砂浜から眺めていた。二人とも本当に楽しそうで、来て良かったな、なんて思っていたりする。
そんな僕にマスターが声をかけてくれる。
「大丈夫か?」だなんて聞くもんだからどう答えていいか一瞬躊躇う。
僕は無難に「大丈夫です、楽しいですよ。二人の様子見てるの」と答えた。
「そうか?じゃぁそんなカイトのためにアイスでも買ってくるかな」ってマスターが立ち上ったから僕は素直に喜んで見せた。

不意に海で遊んでいたがくぽとレンと目があった。
僕は二人に向かって手を振ると二人も手を振り返してくれた。
そのまま二人を眺めているとレンががくぽに耳打ちするのが見えた。
がくぽは小さく頷くとまっすぐに僕のほうにやってきて僕を抱えた。
「え・・・っ!?ちょ、と・・・・・・!?」
突然のことに僕はあっさりとがくぽに姫抱きにされる形になる。がくぽは僕を抱いたまま海の中へと入っていった。
「がくぽ!!だめだって!!!離して!!!はなせっ!!!!!こら―――――!!!!!」
僕の必死の抵抗もむなしくがくぽはどんどんと海の中へと入っていく。
「カイト、お前、水が怖いのだろう?」
「違っ・・・ぼく、海水は・・・・・・っ」
言いかけたところで勢いよく海の中に放り投げられた。
突然のことに、がくぽにしがみつこうと伸ばした手はむなしく宙を切って、僕は海の中に落ちていった。
がくぽとレンがいたずらっぽく笑っているのがスローーモーションのように映った。

そこで僕の意識は途切れた――――――




事の発端はレンの「海水浴に行こう」の一言だった。
俺も、レンも海を見るのは初めてだった。
水平線が見える。始めてみる海に、俺も、レンも気分が高揚していた。
レンが俺に耳打ちをしてくる。
「カイ兄きっと、水が怖いんだぜ。脅かしてやらね?」と。
確かに海に来ているというのにカイトは砂浜でビーチパラソルの下から動こうとはしなかった。
俺たちが呼ぶと笑って手を振るものの一向にそこから動こうとしない。
そんなカイトにちょっとだけ苛立ちを覚えていたのも事実だった。
「そうだな。ちょっとだけ驚かせてやろうか」
俺はレンの提案に乗るとマスターがいなくなったのを見届けてカイトの方へと向かった。
先手必勝。こういうのは考える隙を与えない方が良い。
俺は有無を言わさずカイトを抱えあげた。カイトが一瞬きょとんとした表情でこちらを見る。
そんなカイトが可愛くてにやけそうになったことにカイトは気づいただろうか。
まぁ、気づかれても良いのだが。
俺はカイトを抱えあげたままレンの待つ沖のほうへと向かって行った。
レンが「カイ兄も一緒に遊ぼうぜ」なんて言っていたような気がする。
俺はカイトを海へと放り投げた。
不意をつかれたのかカイトはこちらへ手を伸ばしたもののそのまま海へと沈んでいった。
俺は、いや、俺たちはすぐにカイトが「何するんだよ!」って怒りながら顔を出すと思っていた。この時は・・・・・・


しかしカイトが顔を出す気配はなかった。
最初はカイトが逆に俺たちを驚かせようとしているのかと思ったが、それでもなかなか上がってこないカイトに不安を覚え引き上げてみるとぐったりとしていた。
「カイト・・・?カイト――――――!?」
頬を叩き、呼びかけてみたが睫は伏せられたままだった。
再びカイトを抱えあげると岸の方へと向かった。
「レンはマスターを呼んできてくれ!!」
見るとレンも青ざめているようだった。俺が声をかけるとレンは頷いて駆け出した。
岸に戻り、パラソルの下にカイトを横たえると再び名を呼んだ。
「カイト!!カイト!!!」
しかしカイトは一向に目を覚ます気配すら見せなかった。
ボーカロイドは人型であるとはいえ、酸素を取り込み息をしているわけではない。
わかってはいたもののその時の自分は気が動転していた。
カイトの鼻を摘み、見よう見まねで息を吹き込んだ。2度、3度・・・・・・
「ん・・・・・・」
カイトの口から僅かに息が漏れたような気がした。
「カイト!?カイト・・・!!!」
呼びかけるとカイトがゆっくりと瞳を開いた。
「が・・・く・・・・・・・・・・・・?」
カイトが自分の名を呼ぶのに全身の力が抜けるのを覚えた。



――――――・・・ト・・・・・・カイト・・・・・・
呼ぶ声が聞こえた。
そういえば海の中に落とされたんだったっけ。
だとしたらここは海の中なのだろうか。
ふわふわと、揺れるような感覚。
海の中って気持ちが良いな・・・・・・
でも、もし、そうだとしたら、僕、死んじゃったのかなぁ・・・・・・
ボーカロイドって死ぬんだろうか・・・

「カイト!!カイト!!!」
――――――――――あ、れ・・・・・・?

目覚めて一番最初に見たのは、心配そうに覗き込むがくぽの顔だった。
「がくぽ・・・・・・?」
「良、・・・かった・・・・・・・・・・・・」
僕ががくぽの名を呼ぶと同時にがくぽが脱力したのがわかった。
そんながくぽの様子がおかしくて笑って見せるとがくぽはふてた風だった。
「本当にこのまま目を覚まさないんじゃないかと思って心配したんだからな」
「ごめん・・・」
がっくりと肩を落としたがくぽがなんだか可愛く見えて謝りながらも笑っていたらがくぽは僕の髪を梳くように撫でた。
「いや、俺のほうこそ、すまなかった・・・」
心底申し訳なさそうに謝るがくぽになんだか僕も申し訳ない気持ちになった。
「僕、さ。防水機能に欠陥があるみたいで全身海水に浸かるとショートしちゃうんだよね」
僕がそう言って体を起こすとがくぽが一瞬固まったように見えた。
何か言いたげにこちらを見たかと思うとひとつ盛大にため息をついた。
「そういう大事なことは行く前に言ってくれれば」
「言ったらがくぽ海に行かないって言うだろ?それに、せっかく楽しみにしてるのに気を使わせたくなかったんだ」
僕は拳を作ってがくぽを軽く小突いた。
がくぽはまた一つ小さくため息をついたけど、笑って小突き返してきた。
僕はそんながくぽのことを見て海が嫌な思い出にならなければいいな、なんて考えていた。


目を覚ましたカイトは衝撃的な事実を告げてきた。
『防水機能に欠陥がある』
一緒に生活していて普通に風呂にも入っているから全然気づかなかったがどうも塩分を含んでいるとショートしてしまうらしいと言う話だった。
そんなカイトの話を聞いていたらため息が漏れた。
「そういう大事なことは行く前に言ってくれれば・・・」
無理に海に行こうだなんて言わなかったのに。そう思ったがその言葉はカイトの言葉によって遮られてしまった。
こう言うことには妙に勘が働くらしい。
でもカイトの言葉はもっともだった。確かにレンも、俺も、初めての海を楽しみにしていたし、行く前にカミングアウトされていたら無理をしてでもカイトと留守番、なんて話になっていたことも十分にあり得ることだった。
何も考えていないように見えて結構周りのことを考えている。自分のことよりも。だから時にはこんなことになったりするわけだが。
また一つ小さくため息が漏れたが、カイトが元気そうに振舞うので俺も気にしていないそぶりを見せた。

「お前、どさくさにまぎれてキスしただろ。」
カイトの言葉に一瞬手が止まる。
見るとカイトが楽しそうに笑っていた。きっと今すごく変な表情をしているんだろう、と思う。
「あれはキスしたわけじゃなくて、お前を助けようと必死で、だな・・・」
そう口篭るように答えるとカイトはわかってる、とばかりに大きく頷いた。
「ありがとな、がくぽ」
一瞬何がおきたのかわからなかった。瞳をしばしばと瞬くとこちらを見て微笑んでいるカイトが見えた。
キス、されたのだと気がついたのはそんな自分の様子を見てカイトが吹き出した後だった。
「・・・・・・!!!それは即ち、襲ってほしいということだな!?」
相も変わらず笑っているカイトを押し倒そうとした、その時だった。


「あーっ!!!カイ兄生きてた――――――――――!!!!!」


レンの声が聞こえてきた。




がくぽは僕の気持ちを知っているのだろうか・・・・・・
ふとそんなことを考えてしまったら矢も盾もたまらなくなってしまった。
唇に僅かに残る感触、多分動揺しただけなんだろうけど人工呼吸、されたのかな、なんて。
もちろんボーカロイドにマウストゥマウスが役に立つだなんて考えては居ないのだろうけど。
それでも、覚えてないけど、ファーストキスだったんだぞ。とか考えていたらなんだか無性にやるせない気持ちになった。
だから今度は僕の方からがくぽにキスをしてみた。それくらいの意地悪、してもいいだろ?
案の定がくぽは瞳を白黒とさせていた。
きっと何が起こったのか必死で纏めようとしているに違いない。
そんながくぽの様子がたまらなくおかしかった。
おなかを抱えて笑い転げていたらがくぽから反撃を喰らいそうになった。
でもそれは、レンの声に遮られることになったんだけど。



「カイ兄大丈夫?気分悪くない?」
レンは僕の姿を見ると駆け寄ってきて矢継ぎ早に聞いてきた。
どうやらレンにも心配をかけてしまったらしい。僕はレンの頭をぽんぽんと撫でながら「ごめんな」と謝った。
レンに比べるとマスターはのんきなもので、アイスキャンディーを銜えながらゆっくりとこちらへ向かってきた。
「よーう、カイト。溺れたんだってー?」
けらけらと笑いながら袋を差し出してくる。もちろん中にはアイスキャンディーが入っている。
「おぼれたわけじゃないですよ。マスターだって知ってるくせに・・・」
ぶつぶつと文句を言いながらも僕はしっかりと中のアイスを一本取り出した。
がくぽも、レンも一本ずつとるとそれをほおばった。

「んじゃーそれ食べたら帰るか」
一足先に食べ終えたマスターが伸びをしながら言う。
マスターも久々の海を満喫したように見えた。
そりゃ僕だって始めから欠陥があるなんて知っていたわけじゃない。
インストールされて最初の年はマスターと一緒に海に来ることもあった。
でも、そのたびにどこかしら調子が悪くなることに気づき、最終的には今日のようにショートしてしまった。
それ以来、僕も、マスターも、海に来るということは禁句になってしまっていた。
だから知らないとはいえレンが「海水浴に行こう」って提案してくれたことが嬉しかった。
本当は、レンが、じゃなくて僕が一番海に来ることを楽しみにしていたのかもしれない。
だから海に入れないことは言わなかったし言えなかったのかもしれない。
つい、そんなことを考えてしまっていた。

不意にくしゃりと頭を撫でられるのを感じた。
見るとマスターの手が僕の頭を撫でていた。考え事をしていて、表情が曇っていたのかもしれない。
視線が合うとマスターは笑ってがくぽも、レンも同じように撫でた。
「また来ような、海」
そういって荷物を片付け始めた。僕たちは大きく頷いてマスターの片付けるのを手伝った。



この時はまだ、僕の体に異常が起きていることなんて、マスター以外知る由もなかったんだ。
7/18 ボカロTHEフェスタ 5th   スペースNo.6
     新刊 7.31 コピー本他既刊数種持参予定

7/31  TRIGGER   スペースNo.27
     持参物同上

8/21 ガタケット117   委託参加するかもね

9/4 ボーマス17   スペースNo.F72

9/24 vocaloid ISLAND   参加したい…


10/23 C.City Spark6   申し込み済み

10/23 ナイスプチオンリー   申し込み予定




全てサークル名【J.B.】で申し込んでいるはずです。
お近くにお越しの際はお立ち寄りいただけるだけでも喜びます。
ある朝目が覚めたら横で寝ていたカイトに耳としっぽが生えていた。
「カイト…」
声をかけてみるとカイトは眩しそうに薄く瞳を開く。
もう一度呼んでみるとカイトは瞳を細めて小さく…鳴いた。
変な種を植えたつもりはないのだが…。
試案を巡らせていたらカイトが再び鳴いた。

『うにゃぁ…?』

何か言いたい事があるらしい。が、いかんせん猫語、なのだろうか、に精通しているはずもなく。
訴えている事がわからないまま手を伸ばしてカイトを撫でる。
カイトはくすぐったそうに笑うとその手を舐めた 。
ざりっという猫の舌特有の感触が肌に伝わる。
「カイト…くすぐったい…」
ざりざりと自分の手を舐めているカイトの顎を指ではじいた。
『ふにゃ…ん』
カイトは瞳に涙を浮かべながらこちらを見た。申し訳ない気持ちになる。
「痛かった、か…?」
撫でようと手を伸ばしたが、カイトはそのまま後ずさって布団の中にもぐってしまった。
「カイト、ごめん」
名前を呼ぶと僅かに布団からはみ出しているしっぽがパタパタと揺れた。
「カイト」
その様子がかわいくてもう一度名を呼ぶ。揺れる尾が肌を擽る。小さく笑みが零れた。
「カイト?カイト―――?」
何度か名を呼ぶがしっぽをはためかせるだけで一向に出てくる気配はない。

そうこうしていたら再びざりっと言う感触を肌に感じた。しかも足の、指に―――
一瞬体が強張るのがわかる。しかしそれも束の間、今度はその指を吸い始めた。

「カイト――――――!?」

たまらずに布団をめくって様子を窺う。するとカイトはトロンと目蓋を伏せがちにしながらシーツを握ったり開いたりしていた。
思わず噴き出しそうになるのをぐっとこらえる。
体を起してカイトの頭をくしゃりと撫でるとベッドから抜け出した。

『にゃ……』

後ろでカイトが小さく鳴いた気がした。



さすがに哺乳瓶などと言うものは持ち合わせていなかったので、カップを持って戻った。
カイトはベッドの上で丸くなって寝ているようだった。
「カイト」
声をかけるとカイトは片目だけ開くが再び瞳を閉ざしてそっぽを向いてしまう。
「こらこら拗ねるなって」
そんなカイトを抱きしめたい衝動に駆られるがぐっと我慢をしてカイトの鼻先へとカップを近づけてみる。
カイトは眼を閉じたままふんふんとその匂いを嗅いだ。そして薄らと眼を開けると一瞬自分の顔を見た後、カップの中へ指を入れ、舐めた。
再び指を入れようとしたのでカップを持ち上げるとカイトは恨めしそうにカップを視線で追った。
「カイト、違うよ。座って?」
カイトのそばに腰を下ろすと隣に座るよう促した。カイトの視線はカップに釘付けだ。
「カイト。ちゃんとあげるから、座ってごらん?」
再びカイトに声をかけるとカイトはようやく隣に座ってくれた。
カイトにカップを持たせてみると不思議そうにカップと自分とを交互に見た。
一体カイトはどうやって飲むのだろうと、興味津津に見つめていたら案の定カップにそのまま舌を差し込もうとした。
「はい、ハズレ」
カップとカイトの間に手を差し込む。みたびざりっと言う感触。小さく噴きだすが当のカイトは睨むように自分を見た。
「違うんだよ、カイト。カップはね、こうやって飲むものなんだよ」
カイトの手を取るとカップの縁をカイトの口元へと近づける。カイトの口へと触れたところでカップを傾ける。

「……ゲホッ!!!」

一度に流れ込んだ量が多すぎたのかカイトはむせ込んだ。思わずトントンと背中をたたく。
涙目になったカイトの瞳が自分を見詰める。
「ごめんごめん…今度は自分でやってごらん。量を調節しながら」
申し訳なく思いカイトの頭を撫でた。カイトはカップを見詰めていたが再び口をつけると一口飲んだ。コクリと喉が鳴る。
カイトの笑顔が自分へと向けられた。

『にゃぁん』

カイトは嬉しそうに一つ鳴いた。自分も嬉しくなってカイトの頭をわしわしと撫でた。
カイトはコクコクと飲み続けていたが気付いたらカップが傾き中身が零れそうになっていた。
「カイ…ト……?」

声をかけようとしてフッと笑みが漏れる。カイトはカップを持ったまま小さく船をこいでいた。
カイトの手からカップを取ると引き寄せ自分へと凭れかからせた。

『ふにゃ…』

カイトは小さく声を上げたがそのまま気持ちよさそうに寝息を立て始めた。
そんなカイトに瞳を細めるとカップの中身を飲み干しひとつため息をつく。




「これはこれで、可愛いんだけど、さて、どうしたものか、ねぇ……」




これからの事を考えるともうひとつ溜め息を落とすのだったが翌日にはまた別のモジュールキャラクターへと変化しているなどとは、この時は想像もしていなかった。




$妄想乙。-あしちゅ




------------------------------
六渡 めぐみ様企画の『第一回がくカイお題で盛り上がろうぜ大会』に参加させていただきました。
あしちゅっちゅ…なんて素敵なお題(*´д`*)ハァハァ
楽しく書くことができました。六渡さんありがとうございました~(*´∀`)

↓がくカイお題特設サイトはこちら↓
$妄想乙。