まちこみっく様にて委託していただいております。
検索ワード「J.B.(全て半角)」若しくは本のタイトルを入力して検索してみて下さいませ。

自家通販も検討中ですが今のところ取り扱っておりません。
ご了承くださいませ。
夏コミは落ちました。ので一般参加になりますw
夏コミで発行されるがくカイアンソロに参加させていただく予定です。

6/17 ボカロ the フェスタ8(札幌)

9/2 Vocaloid ISLAND 2(札幌・予定)

10/7 COMIC CITY SPARK7(東京・予定)

冬コミ…申し込み予定

6月以降予定がないのでもしかしたら委託でどこかに参加するかもしれません。
新刊は秋以降……10月…かなぁ……まったり行きます。

年内にがくカイ1冊とヴェノカー1冊は出したいと思っているけどまったくもって未定です。
秋にがくカイは出る…とは思いますが。

そんな感じ。
晴れ渡る空に棚引く洗濯物。そしてそれを干していくお隣さん。
いつも楽しげに歌いながら家事をしているお隣さんを気付けば眼で追うようになっていた。






「今日はいい天気で、絶好の洗濯日和ですね」

塀から顔を出すとがくぽはカイトに声をかけた。
カイトの歌声が止まる。
カイトは声の主へと視線を流すとふわりと柔らかな笑みを向けた。

「そうですね。久しぶりに青空がでたので張り切ってしまいました」

そう言って笑うカイトの腕にはなるほど、沢山洗濯物が入った籠がかかえられていた。
カイトは小さく会釈をすると再び歌いながら洗濯物を干し始めた。
その歌声についついがくぽも表情をほころばせてしまう。
がくぽはカイトが洗濯物を干し終えるまでその様子を見詰めていた。

「やはりあなたは歌がお上手です」

そう言って小さく拍手を送るがくぽをカイトは不思議そうに見つめ返した。
がくぽの表情はどこか寂しげで、そして儚かった。

「謙遜なさらないでください。あなただって…」
「私は歌わせてもらえていません」

あなただってボーカロイドなのだから、そう続ける筈だった言葉はがくぽの言葉に遮られてしまった。
カイトががくぽの顔を覗き込むとがくぽは寂しそうに笑った。

「私のマスターは、私の事を痴漢撃退用においているのだそうです。
物騒な世の中だし、あなたは侍型なのでしょう?って笑って仰いました。
この刀は人を傷つける能力はないのですが」

そう言って左下へと視線を流す。
塀にはばかられてカイトには見えなかったが、きっと刀が刺さっているのであろう。
そう言えば確かに服装も侍をモチーフにしているのであったろうか。

「でも、がくぽさんだって、歌いたいでしょう?」
「そりゃぁできる事なら…」

何故かカイトの方が切なげに眉を寄せたのでがくぽは小さく苦笑を洩らした。
しかしながら音楽に無頓着な自分のマスターでは歌わせてもらうなんて不可能に近い話だった。
起動直後はいつか自分も、などと夢を見ていたが最近では諦めた方が楽と言う思考に達していた。
夢を見なければ傷つくこともない。
そう、自分はマスターを守ることができればいいのだと、そう考えていた。

「あ、そうだ」

ふいにカイトがポンと手を打った。
先程までとは一転、ニコニコと笑みを浮かべている。
猫の瞳の様にくるくると表情が変わるカイトにがくぽは瞳を細めた。

「僕のマスターに、がくぽさんの調教をお願いしてみましょう」

カイトは名案だと言わんばかりに瞳をキラキラと輝かせていた。
対するがくぽは突然の提案に瞳を白黒させていた。

「ね?いいでしょう?僕、男性型と合わせてみたかったんです。
お願いします、がくぽさん。僕と歌って下さい」

歌を歌えるのならこれほど幸せな提案はあるだろうか。
がくぽはカイトの提案をのむことにした。

「待って下さい、今そちらへ行きますから」
「あ、いや、私が……」

言い終えないうちにがくぽは塀から身を乗り出した。

「あ、ちょ、と。がくぽさん……!!」

塀の上から降ってきたがくぽをカイトは受け止めた。

「ありがとうございます。カイトさん」

がくぽは嬉しさのあまりカイトを抱きしめた。
カイトもそんながくぽを見て嬉しそうに微笑った。



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カイトのマスターから出された条件は二つ。
がくぽのマスターの許可を取ること。
当然だ。歌わせることができなくても所有権はマスターにある。
がくぽは恐る恐るマスターに訪ねたら二つ返事でOKをもらった。
そればかりか、逆に喜んでくれたみたいだった。
がくぽはほっと胸をなでおろした。

そしてもう一つ。
何があっても驚かない事。
これは意味がわからなかった。
意味がわからないままに隣の家のインターフォンを押した。

「いらっしゃい!!どうでしたか?」

ほどなく開いたドアからは満面の笑みでカイトが出迎えてくれた。
悪い知らせなどこれっぽっちも予想していないといった風のカイトにがくぽは指で丸を作って見せた。

「これでがくぽさんも歌えますね!!」

カイトはがくぽの手を取ると心底喜んで見せた。
そしてその手を取ったままマスターのいる2階へと階段を上った。




「マスター!!マスター。許可もらえたそうですよ。ほらやっぱり僕の言ったとおりでしょ」

扉を開けるなりカイトはまくしたてるように喋り出した。
そんなカイトの様子にマスターは小さく息を吐き出したが当のカイトはそんなこと気にも留めていない様子だった。

「はいはい、君は少し黙ろうか…」

そう言ってカイトの頭を優しく撫でるとがくぽに一つのデータファイルを差し出した。

「これ、がくぽくんの分ね。
スッピンだしカイトで作ったデータだからかなり手直ししないとだめだとは思うんだけど。
取り敢えずカイトの方仕上げちゃうからちょっと待っててね」

はじめて受け取るデータファイルにがくぽは胸を高鳴らせた。
のもつかの間だった。
イントロが流れ始めるとカイトの表情が一変した。
いつもニコニコと楽しそうに歌っているお隣さんとはまるで別人のようだった。
これが、ボーカロイド――――――
がくぽは瞬きをするのも忘れカイトを見詰めていた。

「あれ?がくぽさん?おーい」

名前を呼ばれて我に帰った時には既に曲が終わっていた。
そして眼の前には見慣れたカイトがそこにいた。

「お前の豹変ぶりにビビって声も出ないってさー」
「そう言う調教の仕方してるのはマスターでしょ」

からからと笑うマスターにカイトは僅かにふてた態度を見せた。
これが本当に先程まで鬼気迫る様子で歌っていたカイトなのだろうかと疑うほどだった。

「あ、あの…マスターさん……私も、その……」

カイトの様に格好良く歌わせてもらえるのだろうか。
いや、それよりも格好良く歌えるのだろうか。
いささか不安がよぎった。

「がくぽくんの方向性はまだ決めてないんだよねー。女声もいいよねー」
「マスター!!!僕は男性型と歌いたいんですっ!!!!!」

マスターの発言はあっさりカイトに却下されがくぽはそんな二人の様子にクスリと笑みを漏らした。

「あ、あの…マスターさん、カイトさん、よろしくお願いします」

そして二人に一礼をするとまっすぐ二人を見詰めた。










「あ―!!!洗濯もの!!!!!」

おごそかな空気はカイトの声で破綻した。
窓を見れば確かに陽が傾き始めてオレンジ色になり始めていた。

「取り込まなきゃ」

そう言って出ようとするカイトをがくぽが追った。

「お手伝いしますよ。今日はありがとうございます」

がくぽの礼にカイトの頬が染まったように見えたのは夕陽のせいだけだったのだろうか。
カイトはがくぽの方を振り向くと嬉しそうに笑った。

「じゃぁサクッと洗濯もの取り込んで一緒に歌いましょうね!!!」
「はい」

庭に二人の楽しそうな歌声が響いていた。