一月もあっという間に終わってしまいましたが、新年会はまだときどきやっています。先日も日本語

上級者の生徒たちと遅めの新年会を開催。仕事で翌朝早い生徒もいたので、早めのお開き。

でも「少し飲み足らないね」とA君と二次会をやることになり、改めてビールで乾杯した。

ここでA君からこんな質問が、「飲み足りない」と「飲み足らない」はどう違いますか、である。確かに「飲み足りない」と「飲み足らない」と二つある。たった今、無意識に「飲み足らないね」と言ってしまった。こんなこと日本人はあまり意識したことはないが、生徒は気になるのであろう。うーん、ここで早速日本語講座を始めた。

これは先ず「足る」と「足りる」の二つの動詞があることを説明しなければならない。でも日本語教育では「足る」という動詞は教えないし、日本人も現在はほとんど使っていない。しかし「足らない」を説明するにはどうしてもこの「足る」という動詞が必要である。

日本語の動詞には三つのグループがあり、中学の国語で習った「五段活用動詞」や「一段活用動詞」などであるが、覚えている人はほとんどいない。でも活用はちゃんと分かっている。この「足る」という動詞は「売る」などと同じグループの動詞なので「売る」の否定形は「売らない」、だから「足る」は「足らない」である。一方「足りる」は「借りる」などと同じグループの動詞なので、「足りる」の否定形は「足りない」である。ここで「足らない」と「足りない」の二つが登場してくる。どちらも文法的には正しいのでややこしい。

では、この使い分けは・・・。正直なところどうして「飲み足らない」を使ったのか、自分でもはっきり分からない。古いイメージの「足らない」を使って、ちょっとふざけた雰囲気を出そうとしたのかもしれないネ、と言い訳しながら、彼に説明した。

現在「足る」という動詞は、特に若者の間ではほとんど使われておらず、基本的には「足らない」や「飲み足らない」は使わないほうがよさそうである。

でもこの時、「足るを知る」という言葉を思い出した。そして彼に少し説明したくなった。これは中国の老子という人の言葉で、無いものをねだるのではなく、今あるものに目を向けて満足する、足るを知る者は心豊かである。なかなか深みのある言葉でしょう、と説明した。すると彼はすかさず、日本語は知れば知るほど奥が深いですね。ですから

日本語の勉強に関しては、足るを知らないほうがいいですよね、である。

うーん、参った。すごい。ほとんどしゃべれなかった生徒がここまで成長した。完敗で

ある、でも日本語教師としてうれしい完敗。改めて完敗に乾杯した。