ゲルニカの聖木 -9ページ目

ゲルニカの聖木

スーパーナチュラリストのブログ。

プーは新千歳空港に到着した。クマたちの間では、卒業旅行に北海道が人気だ。
プーは初めて北海道を訪ねたときのことを思い出した。
あれは、上野発寝台特急「北斗星」。
夜出発すると、ちょうど夜明け頃に道内に入る。
朝焼けの風景を見ようと足を運んだラウンジカー、誰もいない早朝のロビーで車窓を眺めている少年と出会った―クリストファー・ロビン。
 
クリスと親友になってからしばらくして、クリスは自分の名前の由来を教えてくれた。
 
 「クリストファーはキリストを背負うって意味さ」
 
 「君もキリストを背負ってるの?」
 
 「重すぎるよ…」
 
卒業旅行はクリスと一緒に北斗星に乗ろうと決めていたのに、クリスは大人になってしまい、北斗星は運行終了になってしまった。
プーは世界の人たちに愛され、本にも映画にもなった。でも、子供がテディベアを抱いているのを
見ると、少し嫉妬する。
 
 「いいよな、3Dは。僕はみんなの心に触れても、人肌の温もりは感じられないからな」―今は、プーの
ぬいぐるみも発売されてご機嫌だけどさ。
 
そんなプーに卒業式の招待状が送られてきた。アイヌのおじさんからだ。
断ったがおじさんは承知しなかった。
おじさんの話では、プーはこの世界にお客さんとしてやってきたとのことだ。
無事に帰るのを見届けるのがおじさんの役目らしい。
 
 「お客か。それなら、いつまでも長居しちゃ悪いよな」―プーは覚悟を決めた。
 
空港におじさんが迎いにきて式場まで連れて行ってくれた。
 
 「あちらの世界に戻ったら、この世界の話をみなさんに聞かせてあげてね」
 
 「いつかまた、戻ってくるのよ」と、アイヌのおばさん。
 
プーを取り囲んだ人たちが、地面を踏んで足を鳴らし、手拍子を打ちはじめた。
 「答辞はどうしよう…」と、考えているうちに、プーは寝かされて、二本の丸太で首を挟まれた。
首の上の丸太に男たちが重なって乗っかる。
 
「苦しい。苦しすぎる…」この後に及んで、未練が湧いてきた。
 
「あー、もう一度オペラ座のハチミツが食いてぇ」
 
暴れるプーにアイヌのおばさんが言った。
 
「そんなに喜ばなくていいのよ。ほら、あそこに見える川」
 
「アレを渡ればすぐだから」
 
プーの辞世は彼の名言集から選ばれた。
『川はこのことを知っているよ。急ぐ必要はないよ、ボクたちは必ずいつかそこに着けるんだ』