過労自死問題で揺れた電通。のち、石井直社長の辞任会見。そして、働き方という話題 | No Rice,No Life! 佐藤琢也公式ブログサイト

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過労自死問題で揺れた電通。

石井直社長が一連の長時間労働問題等の責任を取り、辞任の意向を示した。昨日の緊急記者会見でのことだった。

 

それに際し、社員に宛てたメール文は以下の通りだ。

 

当社が、過去に当局から複数回にわたる指導・勧告を受けていたにもかかわらず、当社における過重労働、長時間労働問題を根本的に解決できなかった責任は、改めて申し上げるまでもなく、経営にあります。

 

そして、必要な変革を十分に達成できなかった全ての責任は、社の経営において最も重い責任を担っている私にあると考えています。

 

そのため、私は、その全ての責任を取り、2017 年1 月に開催される取締役会をもって、
社長執行役員を辞任することを決意致しました。

 

株主への説明責任を果たすため、社長執行役員辞任後も、取締役としては留まりますが、来年3 月に予定している定時株主総会の終了をもって、取締役も退任します。

 

 

 

ふむ。
では、何の手も打たなかったのかというと、そういうわけでもない。

 

高橋まつりさん、そして、3年前の過労死認定(男性社員)以降、『我々の働き方の進化に向けて』という題目を掲げ、以下3つのルールを新設した。

 

●22時以降の残業を原則禁止

●22時~翌5時まで全館消灯(電気は個別につけられない)

●残業の上限を法定外月間50時間(所定外月間70時間)から5時間引き下げる

 

さらには、再発防止を目的とした『電通労働環境改革本部』も新設した。

 

一方、電通社員の声を拾っていくと、こういう趣旨のものが多い。

 

●仕事量も内容も全く変わっていない。つまり、電通という会社自体、全く変わっていない。

 

●持ち帰り残業をしているだけ。むしろ会社で仕事ができない分、効率が悪く、サビ残業時間は増えた。

 

 ●労働時間は減らせ、人は増やさない。これでは何の変化も起こるわけがなく、根本的な改革なんて無理。

 

 

 

さて、この類の問題は電通に限ったことではない。周知の通り、そこら中に、いや、より過酷な環境もザラだろう。

 

それに、長時間労働の是正は容易くない。
労基の指導勧告等により、22時全館消灯、退社とした所で前述のコメント通りになるだけだろう。『根本的に何も全く変わっていない』と。

 

では、たとえば『長時間労働規制法案』的なるものは、どうなのだろう。(民進党等の野党4党が今年4月に提出した法案)

 

その中に、『労働時間の上限規制とインターバル規制』とあるけれども、法規制により是正となるのならば、もうとっくに社会から消えているはずだ。この類の話題は。


(インターバル制とは、終業時から翌日の始業時間までに一定の間隔を定めるルール)

 

もちろん、ハード整備は大事だ。賛同もするし、ハードによる変化もある。

社員への担保、秩序や安心も生むだろうし、さらに、取引先等の外部に対するアナウンスメント効果もあるだろう。

 

とはいえ、ソフト的な現状把握なくして、根本的な改革に辿り着けるのだろうかとも思う。何の業務に、どれほどの時間が掛かっているのか。それは本当に必要なのか。諸々とだけれど、そういうそもそも論が大事というか。

 

さらには、業務に対する効果測定、PDCAでいうCを機能させることにより、惰性的なルーティンの排除や業務の見直しも大事すぎるというか。

 

経営層の職務には、『ハードを創る』がある。
とはいえ、石井直社長の会見では改革の進捗が見えづらかった印象が残る。(個人的には)

 

もちろん、中長期的な視点が必要だけれど、法人格が自由に意思を持ち、改革を促すわけではないことも忘れてはいけないと思う。

 

経営層をはじめ、管理職、上司、先輩、同僚、そこにいる個人の人格により、社風や文化、社内の常識は創られているのだと。