あの時のこと、
今でもハッキリと憶えている。



10年ほど前
友人の主催する
野外イベントでのこと



その会場に向かって
歩いている時、
やたら目に付く男がいた。



遠目での
この男に対する印象は

『タチワルっぽい
 変なのがいるな、、
 関わらないようにしよう・・』



ところが、
この男、
行動を共にしてた
友人カップルの
知り合いだった。


それで、
当然の流れで
友人カップルから紹介され、

内心、「ゲッ」と思いながらも
少し話してみた。



ところが、
話してみると、
あの、先ほどまで抱いてた、

激悪の印象は
なんだったんだろう?

と笑えるくらい
いいヤツだった。


そんな風に、
元夫と私は出会った。












付き合い始めて、
少し経った頃、
元夫から
私達の出会いについて
にわかに
信じがたいような話をされる。



多分、
彼の中でこれは真実なのだろうし

私も今となっては
100%とまではいかないけど信じてる。


だけど、
ちょっとイカれてる?
アブナイ奴?
と思われたくなくて
私はこれを
人に殆ど話したことがない。

そんなお話。







ある日、
元夫は


1人でいるのは寂しい
彼女が欲しい

そして
自分もいつか家庭を持ち
子どもがほしい
母も喜ばせてやりたい


そう考え
観音様にお願いした。

その時、
彼自身が何気なく描いた
女性の絵

それを仏壇に置いたそうだ。







この絵の女性
と私


どこか似ており、



私と出会った日

観音様にお願いし、
仏壇に置いておいた
女性の絵がなくなった





だから元夫は

『彼女(私)が
 観音様が
 引き合わせてくれた人なんだ』

と思ったらしい。


だから、
元夫にとって、
私との出会いは
特別なものだったのだろう。





その後も
元夫は

『蓮は、
 こんな俺を諌め、
 一緒にいられるのは
 彼女しかいない、と
 観音様が選んでくれた人』

そんなことを
何度か口にしていた。






最初は まさか~
と半信半疑で聞いていたけど、

観音様、元夫を知るにつれ
私も信じるようになっていった。

それは嬉しく、
何か誇りのようなものを
私に感じさせてくれていた。




だけど、
そのうち


流れを止めた水が
腐っていくように、


私の中の感謝、驚きは
勘違い過信へと
徐々に変わっていったのか、




彼と私は観音様に約束された縁

だから
私達の縁は絶対に切れるはずない

何があっても
私達が離れることはない



そんな風に思うようになってた。


そうやって、
私自身も
夫に対し
一生懸命さを
なくしていったのだと思う。



当たり前

なんて
何一つないのにね。



だから、
この観音様が結んでくれた縁

私達二人で
壊してしまったのだと思う。





そんなこともあり、

私が
観音様を思うとき、
割と高確率で
元夫がセットとしてついてくる。
嫌でも思い浮かんでしまうのだ。

向こうも少なからず
そうなんじゃないか、と思う。





彼の中に、
良心や信仰心が
まだ残っているとすれば

私を裏切ったことで
私だけでなく、

観音様も裏切ってしまった


そんな
二重の罪悪感が
付きまとうではないか
とも思う。



だからこそ、
観音様と暮らすのは
余計に耐えられず
手放したくなったのかもしれない。



信仰に強制力などないし、
あくまで個々の自由だと思う。



だけど、
元夫はどのように生きていくのだろう?


大きく道を
踏み外してほしくはないと
小さく、願う私もいる。