父は短気だった


キレると
大声で怒鳴り
物や手がすぐ出る人だった





ある朝、父に異変が起きた


当時私は実家に住んでおり、
その日の朝も
バタバタと
仕事に行く準備をしてた



「お父さん、
 体の左側が痺れてるんだって」


母からそう聞いて、


「左を下にして寝てて
 痺れたんじゃないの?」

そんな感じのことを言ったように思う



「様子見て、
 治らなければ、病院行きなね。
 私、仕事だから」


そう言って、
私は家を出た。




その日、
父は脳梗塞と診断され、
緊急入院した





そんな状態で病院へ行くのは
相当大変だったに違いない


そして、
あの時
私がすぐ病院に連れて行っていれば
半身不随の後遺症だって
もっと軽くすんだはず



あの時、すぐ病院に
連れて行かなかったことを後悔した





発症後の
治療が遅れたため
長い事
リハビリ入院しても
父の半身不随は
大して回復しなかった

そして、
その身体のまま
自宅に戻ってきた





この頃
弟は若くして、
これまた
デキ婚したばかりだった


そんな状態の
弟には頼れない



あの朝
気にかけてあげられなかった
という罪悪感が


両親を養い
なるべく笑顔で過ごそうと
私にそう思わせた


だけど
実際の私はイライラしてた






父とは昔から仲が悪かった



高校卒業後の進路は
お金がかかると父に反対され

「あんたらには頼らない」

そう思い、
高校卒業後、私は働き出した




昔から
些細なことで
頭ごなしに怒り、
力で押さえつけてきたくせに

私が成長するにつれ
心身ともに
全力で歯向かうようになると
私に対する
父の態度は変わっていった




懸命に働き、
育て養ってくれたことに対して
感謝すべきとは思うものの、



父が嫌いだった


そして
長いこと
怒りを培養しつづけていた私は
そう簡単に変わる事ができなかった