・アメリカはどうしてシリア攻撃に踏み切ろうとしているのか?
(Newsweek voices by 冷泉彰彦 8/29)
冷泉さんのアメリカから日本と世界を見る視点は、
村上龍が編集長をしているJMMのレポートで、
知人がずっと評価していた。
私も先日慰安婦に関する記事を読んで感心したばかり。
この Newsweek のコラムでは、
アメリカがこれだけ国内世論の反対があるなかで、
なぜ軍事介入という選択肢を選ぶのかを解説している。
なかに、う~ん…とうなったくだりがあった。
「何故、今なのか」について。
最 後に「何故、今なのか?」という問題ですが、オバマ政権は「エジプトのモルシ政権崩壊」という事態を待っていたフシがあります。仮にシリアが西側の攻撃へ の報復として、本格的にイスラエルへの侵攻を行った場合、エジプトに「反イスラエル」のモルシ政権が存在するようですと、イスラエルの「挟撃される恐怖 心」が暴走して大変ことになる危険があったわけで、その要素が軽減されているということが「今」まで待っていたことの理由だと考えられます。
これが本当だとすると、準備万端整っていた理由もわかる。
しかし、イスラエルが攻撃されるおそれではなく、
イスラエルの「挟撃される恐怖心」の「暴走」をおそれて、
というところがすごい。
でも、シリアもイランも、
もしアメリカが攻撃したらイスラエルに反撃する、と言っているし、
レバノンのヒズボラもイスラエルを攻撃する可能性もある。
そうなったら間違いなくイスラエルは「暴走」する。
ロシアがどうするかわからないけれど、
中東がぐちゃぐちゃになるだけじゃなくて、
最悪の場合、第三次世界大戦になる可能性だって、
ないわけじゃない(ないとは思うけど)。
そこのところはどうなのか。
それにしても、冷泉さんが挙げている攻撃不可避の理由に、
どこまで正当性があるのだろう。
- 化学兵器使用という重大な国際法違反には、何らかの懲罰を課すべきという強い方針があること。
- シリアをめぐる中東情勢において、イランとロシアの増強をそがねばならない。対イランにおいても弱みを見せられない。
- ジョン・ケリー国務長官、チャック・ヘーゲル国防長官、スーザン・ライス安保特別補佐官、サマンサ・パワー国連大使という新任4名が弱腰でないことを証明する必要性。
- エジプトモルシ政権退陣による好機到来。
1 について、化学兵器はアサド政権が使用した、
という決定的な証拠はあるのか。
使用が反政府勢力であった場合、
あるいは双方が使用していた場合はどうなのか。
2 では、国連決議を無視して行う自国利益のための攻撃であり、
1の国際ルールや人道性擁護の大義は口実ということになる。
3 に至っては、政権責任者のキャリア擁護のための攻撃なんて、
あっていいはずがない。
4 ということは、アメリカは好機と口実を待ちながら、
すでに攻撃ありきで準備していたことになる。
イギリス議会は攻撃反対の決議。
イタリアとポーランドは、早々と安保理決議のない作戦には不参加を表明、
ドイツも積極的参加はしないと言っている。
オーストリアもだっけ?
【参考】
・2013/08/28 英米仏によるシリア軍事介入「合理性ない」 一般市民に多数の死者が出る可能性指摘 ~岩上安身による青山弘之氏インタビュー
(シリア情勢緊迫のため、会員以外にも公開された岩上安身によるインタビュー。
シリアをめぐる中東周辺国と西側諸国の関係がよくわかる。イスラエルがその真ん中にいることも。)
・今後のシリア問題のシナリオ (BLOGOS 水口章 8/30)