昨日、ローマ日本文化会館に役所広司さんが来て、
パーフェクトデイズの映写後にインタビューがあった。
颯爽とかっこよく文化会館の入り口から入ってこられた。
パーフェクトデイズは2023年にドイツ。日本合作で制作された映画で、
役所さんはカンヌ映画祭で男優賞を受賞した。
今回のローマ訪問は、北イタリア、ウーディネでのファーイースト・フィルム・フェスティバル
(アジアの映画を取り上げている)でヴィム・ヴェンダース監督と一緒に招聘された後、
ローマを訪問された。
2023年の試写会で既にこの映画を見たので、今回は2回目。
でも改めて、素晴らしい映画だなぁと感嘆した。
役所さん扮する平山は狭い安アパートに住み、
朝早く起きて、植木に水をやり、自動販売機で缶コーヒーを買って飲み、
軽自動車で渋谷を回りながら、
毎日完璧にトイレを清掃している。
仕事が終わったあとは銭湯に行って汗を流し、
浅草の地下街で夕食を食べ、
寝る前に文庫本を読む。
休みの日は掃除と洗濯をし、
古本屋で本を買い、公園でうつした木の写真を現像に出し、
お気に入りのママさんがやっているスナックに行ってリラックスする。
毎日、毎週判を押したように同じことをして暮らしている。
そんな平山の元に同僚の男性がガールフレンドを連れてきたり、
何年も会ってない姪っ子が訪ねてきたり、
スナックのママさん(石川さゆり)の元夫(三浦友和)と交流したりというような、
ルーティンな生活が乱されるような事が起きるのだった。
ラストシーンで軽自動車を運転する平山の顔のクローズ・アップが5分くらい続くのだが、
平山は泣き笑いのようななんとも言えない表情をする。
平山は資産家の家のボンボンだったのだが、現在はトイレ清掃員をしている。
映画の中では父親とうまくいかなかったということが示唆されるが、
はっきりしたことはわからない。
でもこの平山の表情は圧巻としか言いようがない。
平山は寡黙な人物だが、いつもなんとも言えない表情で、
全てを表現しているのである。
映画が終わって、役所広司さんが舞台に出てきたら、
スタンディング。オベーション、満場喝采で、
拍手が鳴り止まなかった。
さて、インタビューは日本文学者のアミトラーノ氏が行った。
まず役作りに対する質問から始まった。
台本を一気に最初から最後まで読み上げ、視聴者の視点で捉えることが大事だと述べていた。
そしてプロのトイレ清掃人からトイレ清掃の仕方を教わり、
本当のプロみたいだとほめられたそうだ。
その後は尊敬する先輩俳優について。
それは仲代達矢で、役所さんは彼の俳優養成所である無名塾出身である。
あと三船敏郎もだが、彼とは一緒に働いたことなかったが、
一度三船がカツラを取って豪快に頭をかいていたのを目撃した事があると述べていた。
あと好きな映画はパリ、テキサスのような美しい描写がある映画と
自身が出演したホラー映画、キュアなど。
で、5月14日にキュアを日本文化会館で上映するので、見に行きたいと思った。
最後の質問は日本の監督と海外の監督との違いについて。
日本の映画作りは制作期間がしっかり定められていて、その期間を守りながら製作しなければいけないので大変だ。
海外の監督は期間を延長してまでも納得がいくまで作品を作り上げる。
でもパーフェクトデイズにかかった期間はたったの16日だったので、
短くて嬉しかったと漏らしていた。
あとこのインタビューを通訳した方について言及したいと思う。
一つ一つの文章が終わってからすぐ訳すのは簡単だけど、
5〜10分くらい続く返答が終わってからそれを訳すのって
下手すると端折っちゃったり、要約になっちゃうことが多いんだけど、
通訳の栗原さんは役所さんの言葉を一つも漏らさず全て、完璧なイタリア語に訳していたので感心した。
ナポリ大日本文学教授でバナナ吉本や村上春樹の翻訳者のアミトラーノ氏も誉めていた。
この通訳の方、ローマ公認ガイドでユーチューブも上げているし、
ブラタモリのガイドもしたので、見た時、
あれ、この人どっかで見た事があると気がついた。
あと従姉妹のYさんが去年の暮れにローマに来た時、
バチカン美術館のガイドを栗原さんがしてくれて、大絶賛していた。
検索すると、小さい時からローマに育ったらしい。
だからイタリア語が日本語だけでなく、流暢なんだ。
仕事が終わって自転車を漕いで銭湯や飲み屋に急ぐ平山。
今度は今度、今は今という言葉は、
姪っ子のニコが、「おじさん、今度海に行こうよ。」とせがむと、
平山が答えるセリフだ。
背中には夕暮れの東京の景色が広がる。
娘ムームーの彼氏がこの映画の配給会社に勤めているため、
今回ご招待に預かったのだが、
彼から最初、役所さんは疲れもあったのか、
このイベントにあまり乗り気がなかったと聞いていた。
でも蓋を開けてみると、役所さん、イタリアの聴衆に熱烈に迎えられて、
まんざらでもなかったように見えた。




