Q.ここまで視覚のユニバーサルデザインについてお話していただきましたが、他にどのようなユニバーサルデザインがあるのでしょうか?
A.研究途上のユニバーサルデザインとして、文字情報のユニバーサルデザインがあります。色や形で情報を識別できたとしても、その情報自体がわかりづらくては本末転倒です。たとえば、ある駅ホームで警報ボタンの使い方をひらがなで書いてあるのを見たことがあります。外国人にもわかりやすいようにという配慮なのでしょうが、肝心の表現自体が難しくなってしまっていて、結局、情報が伝わっていないように思いました。すべてをひらがなにするよりも、簡単な漢字はふりがな付きで使うほうがわかりやすいですし、短いセンテンスで文章を区切ることも大切です。また、二重否定やあいまいな表現も避けた方が良いでしょう。さらに、簡単なイラストがあるほうがよりわかりやすくなります。このような工夫を文字情報のユニバーサルデザインと言います。
Q.ユニバーサルデザインにはどのようなことが大切なのでしょうか?
ユニバーサルデザインで大切なことは、情報の受け取り手や利用者に平等なチャンスを与えることです。そのために大切なのは、スタートポイントをたくさん用意することです。いろんなスタートポイント用意し、同じゴールへ到達できるようにする。それがユニバーサルデザインです。用意されたものを用いて、結果を実現できるかは本人次第ですが、機会の平等を保障することが大切です。
そういった意味では携帯電話はUDの宝庫です。光・音・振動によって、人間の五感に訴えかけることができます。骨伝導電話という難聴者用の物もあります。また、携帯電話にメール機能が付いて一番喜んだのは聴覚障がい者でしょう。メールの普及前はファックスでやり取りしていましたが、公衆電話はあっても公衆ファックスはあまりありません。いちいち自分の家からファックスするしかありませんでした。しかし、メールの普及によって一気に情報の伝達がスムーズになりました。ただ、スマートフォンの普及により、退化している部分もあります。従来の携帯電話では「5」の部分に突起がついており、視覚障がい者はそれを目印に使用していました。しかしスマートフォンはタッチパネルが主流であり、そういった使い方ができなくなってしまいました。
銀行のATMや駅の券売機などでもタッチパネル化が進んでいますが、実は利用者を限定する形になっています。昔のATMにはボタンに点字が付いていて、視覚障がい者も使用できましたが、最近はほとんどタッチパネルなので使えません。となると、窓口に行くしかないので、手数料が余計にかかってしまいますし、利用する時間帯も限られてしまいます。ボタンを押せば音声を出せるようにはできますが、プライバシーの問題があるうえに危険も伴います。機械や道具が便利になる反面、捨てられている部分もかなりあるということを知る必要があります。
Q.普段私たちがユニバーサルデザインを考えるために、どのようなことに意識する必要がありますか?
ユニバーサルデザインを考える上で大切なことは大きく3つあると思います。
1つは多様性を知るということです。私たちはどうしても自分のことや多数派を中心にものごとを考えがちです。しかし、世の中には様々な人がいるということを意識し、自分にとっては便利でも他の人にとってはそうとは限らないということを考える必要があります。
2つ目はスタンダードという考え方を持たないということです。「普通はこうする」といういうときに、普通とは何と考えることが大切です。普通はこうする、という考えは自分の主観から見た限られたものの見方に陥りがちです。普通とは何かと考えることで広い視野で物事を見ることができます。
3つ目は当たり前という考えを持たないということです。見えて当たり前、聞こえて当たり前、歩けて当たり前、右利きで当たり前というのはそれ以外の人々を排除することになります。当たり前ということの裏側には当たり前でないことがあります。当たり前と当たり前でないということの両方の側面が大切です。
かつて、モノづくりの現場では30~40代の男性が中心にいました。老眼でもないし、大きな疾病や障害もない、若くて健康で右利きの男性たちが、自分たちに合わせたモノづくりをしてきました。さきほどの3点を意識していなかったために、ユニバーサル性の低い製品を産んできました。これからは、この3点を意識すればユニバーサルへの考えは大きく進むと思います。
Q.ほかにユニバーサルデザインの例はありますか?
A.漫画家の赤塚不二夫さんは晩年、全盲のこどもを笑わせたいということで、点字絵本を作られました。赤塚さんはいくつものギャグ漫画を描き、様々な人を笑わせてきましたが、何かのきっかけで盲学校に行ったときに、そこにいるこどもたちの誰ひとり笑顔がなかったそうです。赤塚さんは何十年もギャグ漫画を描いてきて、日本中を笑わせてきたと思っていたのに、笑っていないこどもがいるということにショックを受けたそうです。そこで、漫画のキャラクターの形に沿って突起が付いていて、さわると面白さがわかるという「さわる絵本」を作られました。それをなぞってやっとこどもが笑ってくれた。ああ良かった、と赤塚さんは思ったと。目の見えるこどもと見えないこどもが一緒に楽しめる、という点が素晴らしいと思います。
また、聴覚障害を持ったこどものために、その親御さんが作った絵本があります。「音のない川」というタイトル。川のせせらぎの音を何とか色彩と形で表現できないだろうかと試行錯誤した実験的なもの。100%同じにはできないだろうが、優しい流れや激しい流れなど、色や形で大部分表現できる可能性はあります。
感想
今回インタビューさせていただいて感じたのはユニバーサルデザインを実現するために大切なことは、国や自治体の政策ではなく、各人の意識であると思いました。記事では紹介できていないことを含め、今回はたくさんの例を用いて、ユニバーサルデザインについてお話いただきました。そういった中で今まで意識していなかった点に気づくことができ、多様性を知ることで幅広い視野を持つことができました。そうすると街を歩いていても、「ここはこういう人にとっては不便だろうな」「これはこういう人にも便利だろうな」というように、今まであたりまえまであって気づかなかったものに対して新たな視点を持ち物事を考えるようになりました。こういったような人々の意識というのがユニバーサルデザインにおいては大切であると思いました。一人ひとりの人が今までの自分より少しでも広い視野を持ち、考え、行動することで、より多くの人が共存しやすい世の中にすることが出来ると思いました。
A.研究途上のユニバーサルデザインとして、文字情報のユニバーサルデザインがあります。色や形で情報を識別できたとしても、その情報自体がわかりづらくては本末転倒です。たとえば、ある駅ホームで警報ボタンの使い方をひらがなで書いてあるのを見たことがあります。外国人にもわかりやすいようにという配慮なのでしょうが、肝心の表現自体が難しくなってしまっていて、結局、情報が伝わっていないように思いました。すべてをひらがなにするよりも、簡単な漢字はふりがな付きで使うほうがわかりやすいですし、短いセンテンスで文章を区切ることも大切です。また、二重否定やあいまいな表現も避けた方が良いでしょう。さらに、簡単なイラストがあるほうがよりわかりやすくなります。このような工夫を文字情報のユニバーサルデザインと言います。
Q.ユニバーサルデザインにはどのようなことが大切なのでしょうか?
ユニバーサルデザインで大切なことは、情報の受け取り手や利用者に平等なチャンスを与えることです。そのために大切なのは、スタートポイントをたくさん用意することです。いろんなスタートポイント用意し、同じゴールへ到達できるようにする。それがユニバーサルデザインです。用意されたものを用いて、結果を実現できるかは本人次第ですが、機会の平等を保障することが大切です。
そういった意味では携帯電話はUDの宝庫です。光・音・振動によって、人間の五感に訴えかけることができます。骨伝導電話という難聴者用の物もあります。また、携帯電話にメール機能が付いて一番喜んだのは聴覚障がい者でしょう。メールの普及前はファックスでやり取りしていましたが、公衆電話はあっても公衆ファックスはあまりありません。いちいち自分の家からファックスするしかありませんでした。しかし、メールの普及によって一気に情報の伝達がスムーズになりました。ただ、スマートフォンの普及により、退化している部分もあります。従来の携帯電話では「5」の部分に突起がついており、視覚障がい者はそれを目印に使用していました。しかしスマートフォンはタッチパネルが主流であり、そういった使い方ができなくなってしまいました。
銀行のATMや駅の券売機などでもタッチパネル化が進んでいますが、実は利用者を限定する形になっています。昔のATMにはボタンに点字が付いていて、視覚障がい者も使用できましたが、最近はほとんどタッチパネルなので使えません。となると、窓口に行くしかないので、手数料が余計にかかってしまいますし、利用する時間帯も限られてしまいます。ボタンを押せば音声を出せるようにはできますが、プライバシーの問題があるうえに危険も伴います。機械や道具が便利になる反面、捨てられている部分もかなりあるということを知る必要があります。
Q.普段私たちがユニバーサルデザインを考えるために、どのようなことに意識する必要がありますか?
ユニバーサルデザインを考える上で大切なことは大きく3つあると思います。
1つは多様性を知るということです。私たちはどうしても自分のことや多数派を中心にものごとを考えがちです。しかし、世の中には様々な人がいるということを意識し、自分にとっては便利でも他の人にとってはそうとは限らないということを考える必要があります。
2つ目はスタンダードという考え方を持たないということです。「普通はこうする」といういうときに、普通とは何と考えることが大切です。普通はこうする、という考えは自分の主観から見た限られたものの見方に陥りがちです。普通とは何かと考えることで広い視野で物事を見ることができます。
3つ目は当たり前という考えを持たないということです。見えて当たり前、聞こえて当たり前、歩けて当たり前、右利きで当たり前というのはそれ以外の人々を排除することになります。当たり前ということの裏側には当たり前でないことがあります。当たり前と当たり前でないということの両方の側面が大切です。
かつて、モノづくりの現場では30~40代の男性が中心にいました。老眼でもないし、大きな疾病や障害もない、若くて健康で右利きの男性たちが、自分たちに合わせたモノづくりをしてきました。さきほどの3点を意識していなかったために、ユニバーサル性の低い製品を産んできました。これからは、この3点を意識すればユニバーサルへの考えは大きく進むと思います。
Q.ほかにユニバーサルデザインの例はありますか?
A.漫画家の赤塚不二夫さんは晩年、全盲のこどもを笑わせたいということで、点字絵本を作られました。赤塚さんはいくつものギャグ漫画を描き、様々な人を笑わせてきましたが、何かのきっかけで盲学校に行ったときに、そこにいるこどもたちの誰ひとり笑顔がなかったそうです。赤塚さんは何十年もギャグ漫画を描いてきて、日本中を笑わせてきたと思っていたのに、笑っていないこどもがいるということにショックを受けたそうです。そこで、漫画のキャラクターの形に沿って突起が付いていて、さわると面白さがわかるという「さわる絵本」を作られました。それをなぞってやっとこどもが笑ってくれた。ああ良かった、と赤塚さんは思ったと。目の見えるこどもと見えないこどもが一緒に楽しめる、という点が素晴らしいと思います。
また、聴覚障害を持ったこどものために、その親御さんが作った絵本があります。「音のない川」というタイトル。川のせせらぎの音を何とか色彩と形で表現できないだろうかと試行錯誤した実験的なもの。100%同じにはできないだろうが、優しい流れや激しい流れなど、色や形で大部分表現できる可能性はあります。
感想
今回インタビューさせていただいて感じたのはユニバーサルデザインを実現するために大切なことは、国や自治体の政策ではなく、各人の意識であると思いました。記事では紹介できていないことを含め、今回はたくさんの例を用いて、ユニバーサルデザインについてお話いただきました。そういった中で今まで意識していなかった点に気づくことができ、多様性を知ることで幅広い視野を持つことができました。そうすると街を歩いていても、「ここはこういう人にとっては不便だろうな」「これはこういう人にも便利だろうな」というように、今まであたりまえまであって気づかなかったものに対して新たな視点を持ち物事を考えるようになりました。こういったような人々の意識というのがユニバーサルデザインにおいては大切であると思いました。一人ひとりの人が今までの自分より少しでも広い視野を持ち、考え、行動することで、より多くの人が共存しやすい世の中にすることが出来ると思いました。
