9・11同時テロの実行犯とされる国際テロ組織アルカイダの指導者


ウサマ・ビンラディン容疑者が米軍によって殺害された。


テロからまる10年を4カ月後に迎えようとしていた。


 パキスタンの首都イスラマバード郊外の潜伏先を小規模の部隊が急襲し、


銃撃戦の末に射殺したという。


 オバマ米大統領は深夜に声明を発表し「正義が行われた」と成果を強調した。


米国はこれを機に残存勢力を一気に掃討する構えだ。


 しかしビンラディン容疑者とその周辺グループを排除するだけで


テロを根絶できないのは、だれの目にも明らかである。


アルカイダの影響下にある世界各地の過激派組織が報復に出る恐れも指摘されている。


 テロの背景となっている欧米とイスラム社会との亀裂を埋める努力が何よりも求められよう。


 ビンラディン容疑者はサウジアラビアで建設会社を経営する富豪の息子として育った。


1979年に旧ソ連軍がアフガニスタンに侵攻した際、


反ソ活動に身を投じたのが過激派への道を歩むきっかけになった。


 91年の湾岸戦争でイスラム教の聖地メッカのあるアラビア半島に


米国が軍を駐留させたため激怒し、米国へのジハード(聖戦)を始めた。

 その後、98年にケニアとタンザニアの米大使館を連続爆破し、


2001年に9・11テロを行うなど、活動をエスカレートさせていった。


 9・11テロを受け、米国のブッシュ前政権はアフガニスタンとイラクで


二つの戦争を始め、欧米とイスラムとの亀裂を「文明の衝突」と評されるほどに拡大してしまった。


 米国は今年7月にアフガンからの駐留軍の撤退を開始し、


イラクでも年内に撤退を完了させたい考えだが両国では今もテロが繰り返され、安定とはほど遠い状態だ。