東日本大震災の影響で、無給の休業を通告されたり、契約更新を拒否されたりする労働者が、後を絶たない。


被災地以外でも急増しているようだ。労働組合やNPOへの相談件数は2008年秋のリーマン・ショック後を上回る勢いで、派遣切り、解雇の嵐が、再び吹きかねない状況だ。


 「まさかこの地震で自分が仕事を失うとは、思いもよりませんでした」。


島根県の自動車部品工場で派遣社員として働いていた30代男性は、ため息をついた。


東北地方からの部品供給が止まったため、大手自動車メーカーが操業できなくなり、自身が働く下請け工場も生産を止めたという。


 当初は「2日間休んで」と言われただけだったが、休業期間は何度も延長された。


25日になって、「今月いっぱいで終わり」と、派遣会社から雇い止めを告げられてしまった。


 男性はリーマン・ショック後にも、大手電機メーカーの工場で派遣切りにあい、今の派遣先は、


やっと見つけた収入の安定した職場だった。「あきらめて次の仕事を探します。でも、この状況では厳しいでしょうね」とつぶやいた。

 都内の旅行会社で正社員として働く20代女性は、震災後に社長から解雇を告げられた。


抗議したが、「地震で廃業するかもしれない。


今辞めてくれれば、1カ月分は給料を支払う」と言われ辞めるしかなくなった。

 都内のNPO法人、労働相談センターにも震災絡みの解雇や休業、賃下げなどの相談が約70件来ている。


相談員の須田光照さんは「会社も被害者だからクビ切りも仕方ないという意識が経営者に広がっているのでは」と指摘する。


 こうした労働組合やNPOが懸念するのは、計画停電を理由にした休業の拡大だ。


厚生労働省は15日、計画停電に使用者の責任はないとして、計画停電の時間帯は


労働基準法が定める休業手当を原則として支払う必要はない、という趣旨の通達を出した。