余震が続く中、3階の仕事部屋でパソコンと向き合っていると、なんだか波に揺られているようで、だんだん気分が悪くなってくる。


乗り物酔いは小学生時代に克服したつもりだった。だが実は今でも車中や船の上では原稿を書いたり読書をしたりすることができない。震災で改めて自分の弱点を思い知らされた。


 地震当日は「育成について」の座談会が予定されていた。あと30分揺れるのが遅ければ・・・、出発前に地震に遭遇したのは本当に幸運だった。


 「あなたにとってサッカーとは?」


 イビツァ・オシム氏は間髪を入れずに返答してきた。


 「人生そのものだ」


 何度も繰り返してきた決まりごとのように、一切の躊躇無く答えた。


 「サッカーは人生の縮図だ。予期せぬことが起こり、あらゆる喜怒哀楽が詰め込まれ、それが人生よりはスピーディーに流れていく」


 母国が戦火に包まれ分裂し、自らが指揮官として頂点に導くはずだった最強のユーゴスラビアは、参加資格を剥奪され、しかも皮肉にも優勝したのは、代替出場したデンマーク。オシム氏は悟ったように言った。


 「それがサッカーだ。それでも人生は続いていく」

 「常にサッカーが一番なんておかしい。世の中には、サッカーよりずっと大切なことがある」


 ミュージシャンでもあるフリットは、人種差別反対を主張し、何度もチャリティーコンサートに参加した。


 こんな時だから中止。本当に答えはそればかりで良いのだろうか。