笑わない客だった
やっとお前に会えた と 何度もいったが
まったく笑わない客だった
彼が愛情を受けて育ってこなかったことは
会った瞬間にわかった
人との距離の取り方も分からず
愛し方も 知っているふりをして
本当は知らないことなど
会った瞬間にわかった
彼は何度も延長した
快楽が欲しいのではなく
孤独が欲しくない子供のように
彼の財布は薄くなり
私の財布は厚くなった
私の股は擦り切れたが
彼の欲望は枯れなかった
その欲望が枯れたら
愛が欲しかったのに
与えてくれなかった遠い昔の存在に
去られてしまうのではないかという
恐怖を思い出したくないように
ひたすら責めてくる
その姿の裏側に
孤独で泣いている少年をみた気がした
笑わない客は私の客となった
心の穴が多い人間が
また一人 私の周りに増えた
一夜明けても 酷い腹痛が続くのは
心の穴を埋める手伝いをした 代償
余計なことをすると 体が痛む
台風が去って 秋の風が体にあたる
昔の沁みる曲が 聴きたくなった
温かな心の男の
温かな腕に抱かれたくなった
本当はそんな男なんて知らないのだが
だから 沁みる曲を聴いてみる
寂しさを感じた夜の特効薬