声良鶏
声良鶏 雄 (黒鶏と白柳系の交配種)
三枚冠、赤耳朶、黄脚、シャモに似た大型鶏であり、200から300とも言われる鶏の品種数の中で唯一の低音で長鳴き、しかもほとんどの雄は嘴を閉じた状態で鳴くと言う不思議な習性を持つ『声良鶏』
この特異なニワトリは一体いつ、どこでこの世に出現したのか?
その年代は?
その成立に関与した品種は?
その原産地は?
そうした疑問を解消するにはタイムマシンを持たないと我々としてはその体型、習性、特徴等から、又、古い文献や古老の伝承話、あるいは血液や遺伝子の分類によって「多分こうなんだろう」と推測するしか方法が無いのが現状です。
まあ、そう言った古代のロマンに想いをめぐらせる事は、私も大好きですし、時間を忘れて没頭してしまう時もあります。
そんな訳で今回この世に現存する声良についてわずか50年の飼育経験と今までに関わった方々から譲り受けた知識を基に少しばかり書いてみようかと思います。
まあ、この世界、よく「10年やってチョッピリ モノ言え」「20年やってチョッピリ チョッピリ モノ言え」と言われますが、私の場合は、50年ですから「チョッピリ」×5のつもりで書きますね。
断っておきますが、あくまでも私見ですのでクレームは受け付けません。
そこのところは悪しからず。
餌を食べる声良鶏の群れ
まず成立に関してですが、どんな鶏を起源とし、どんな鶏を交配して現在に至るか様々な説がありますが、その一例をあげてみると
⑴ シャモと蜀鶏との交配による(これが一般的)
⑵ ⑴の交配種にブラマ(ダーク)の血を入れたもの
⑶ それ以前に小国鶏の関与があった
等の説がありますが、そこでまず声良鶏の体型的な特徴について考査してみようと思います。
しかし、くれぐれも低音で長く鳴く事が声良鶏の最大の特徴であると言う事を忘れないでくださいね。
声良鶏と言う鶏を短い言葉で説明するなら
「シャモをやや毛深くして咽喉垂皮を発達させ姿勢をやや前傾させて上品に老けさせた感じの鶏」
になると思います。姿・形だけはネ!
つまり、シャモ系統の鶏がその中核を為している事は疑いようのない事実と思われます。
大軍鶏(白笹種)雄
蜀鶏 雄
ダークブラマ 雄
小国鶏 雄 柳脚のタイプ
まあ、シャモと言っても原種であるマレーや大型アジールが日本に渡来したのは江戸時代初期かあるいはそれよりも少し前らしいですから、源は同じでもそこに関わった鶏種によって、一方は世界最強と謳われる闘鶏に、一方は世界で唯一の低音長鳴鶏に分化してものじゃないでしょうかね。
ここで、マレーとアジールについて少し説明しておきます。
マレーゲーム(https://www.poultryhub.org/all-about-poultry/species/fancy-chicken-breeds/malay-game)
この両種ともにその用途はゲーム(闘鶏用の鶏)と肉用です。
分布は広く東南アジア全土に及び、すなわちマレーシア、ベトナム、タイ、フィリピンなどの国々でその歴史は家鶏の中でも最も古く、遥かローマ時代にまで遡るといわれており、現在の世界中の闘鶏用の鶏種はこの両種の血脈を受け継いでいると思われます。
また、この両種はその歴史が古いだけに、地域によって体の大きさや特徴に大きな差があり、それがまた様々な亜種となって別の品種を新たに産み出す元となった場合も多いと言う事です。
日本に於いてのこの両種が与えた影響はマレーと中型のアジールがシャモ作出に於いて、小型アジールが大和軍鶏の作出に於いて大きく関わっている事が挙げられます。
大和軍鶏(赤笹種)雄
では、本題に戻って声良の各部を細かく見ていきましょう。
まず、頭部、顔面から見ていきます。
(雄) 冠はシャモによく似た三枚冠です(いくらか大きめかな?)
系統・個体によって傾冠のものも多いですね。
中には片方の目が見えなくなるぐらい倒れているものもあります。
頭は大きく、眼骨が張り出して、目は金目、銀目、水晶目などがあります。
眼光鋭く、威厳に富み、シャモとはまた異なる雰囲気を醸し出しています。
嘴は太く短く強く、これまたシャモとよく似ており、色は黄色かやや黒味がかった褐色の混入する黄色になります。
肉垂は無いか、あっても極めて短く小さい。耳朶は赤く細長く袋状に大きく発達した咽喉垂皮につながって、頭部、顔面をより大きく見せています。
頸は長く太く強く頸羽はシャモより豊富で大きな頭部を支えています。
胸は広く充実して肉付良好(ちなみに声良は肉量が多く肉質も極めて良好で一部のブロイラー関係者は肉用種として利用できないか本気で検討していた事を聞いたことがあります)で味は申し分無く美味だそうです。
肩はシャモのようなイカリ肩ではなく、丸味を帯びた地蔵肩で胴は広く深く充実し、背は長く傾斜して、特に雄はシャモより幾分ではあるが、前傾姿勢ではあるものの直立気味の勇壮な姿で、気品と堂々たる風格にあふれています。
脚部もこれまたシャモによく似て、長く太く強く指数は4本。
主尾羽はシャモと違ってよく開帳し、謡羽及び覆尾羽は豊富で特に謡羽は長く地面に接するものもあります。
尾の角度はシャモと同じです。
胸と腹にかけての竜骨部周辺の皮膚の露出部はシャモほどではないが、やはりほかの品種と比較すれば大きく露出して毛細血管が発達して、赤く色付いており、この点もシャモと良く似ていますね。
体重については系統、個体による差がけっこうあって、小さい雄で3.3kg。大きなもので5kgを超えるものも少なくありません。
多くは、3.75kg~4.2kgぐらいです。
声良鶏の群れ
(雌)
冠は小さな三枚冠で雄と同じ傾冠のものも多いです。
体型的には雄と同じですが、姿勢は直立に近い雄に対して、前傾度が強く水平に近いものもおります。
体重は小さいもので2.5kg。大きいもので4kgを超えます。
体高は雄で55cm~75cm位で、系統、個体によって若干異なります。
とにかく声良といっても様々な系統が存在します。
細いものもあれば、幅広い体型を有するもの、立冠のもの、倒冠のもの寸高のもの、地平型(ジビラガタ)のもの、色々です。
それらを含めて、プラス低音長鳴を楽しんでくれればいいんじゃないですかねぇ~。
次に羽色ですが、昭和の頃の関連文献には、ほとんど「白笹」とありました。
一体どこをどう見れば、あれが「白笹」に見えるか筆者に聞いてみようと思いましたよ。
後に「五色」になりましたが、アレを五色と言われたんじゃ五色の小国鶏が怒りますよ!(もっとも本当の五色羽装の小国鶏は超レアモノですが…)
大体「五色」は黄笹と白笹の中間的な羽色です。
すなわち、白・黄・赤・黒・緑の五色です(雄)
雄の頸羽が(白)またはクリーム色。蓑羽が(黄色)または、頸羽より濃いクリーム色。肩が(赤褐色)。胸、腹、尾羽は(黒)そのに(緑)の光沢が煌く。で、五色ですから、これを声良に当てはめるのはチョット無理があると思いますよ。(元々は尾長鶏の先祖のひとつでもある五色鶏の羽色です)
五色に近い鶏 (蓑曳矮鶏 五色種 雄)
五色(左)と白笹(右)の比較
声良は、あの独特の羽色があってこその声良なんですから、無理矢理基準の羽装に押し込めるのは品種の特徴を損なう事にもなりかねません。そう思いませんか?
あえて例えれば、
「白笹と五色の中間色で雄は頸羽、背、簔羽に系統、個体により濃淡のある黒色条斑が入り、その程度にも差がある」でしょうね。
声良鶏 雄 の肩の羽
詳しく書けば、
(雄)は一般的に頸羽、簔羽に黒条斑が入ったクリーム色、簔羽は頸羽より濃い色彩となる。背、肩は系統、個体で異なるが、灰色じみた褐色が混入する銀灰色から赤みを帯びたものまで様々で、胸、腹は「笹」であるから当然黒色、尾羽は主尾羽は黒色。覆尾羽も黒色であるが、謡羽も含めあ色々の刺羽が入る事が多い。
(雌)は頭は黒色、頸羽もほとんど黒色。胸、腹は黒味を帯びた鮭色。上半身は濃い灰色じみた褐色に黒色の覆輪が入ります。
尾羽は、主尾羽はほとんど黒色で、覆尾羽は上半身と同じ濃い灰色ですが、尾羽に近くになるにつれて覆輪は尖斑に近くになる傾向があります。(他品種でこの羽色を有するのは、竜神地鶏の雌のみ!)
龍神地鶏の雄雌(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%AF%E3%83%88%E3%83%AA)
また、雌に於いては、灰色の部分が淡色化するものもよくあり、中にはシャモの柏に近いものまで淡色化するものもいますよ。
オオシャモの柏の雌
雄に於いては、稀に黒色に近いもの、白色のものも突発する事があり、私の場合でも50年の中で純白色のものが2回。ほとんど黒色のものが4回出現しています。
白色のものは、1羽が純白色。1羽はやや黒い刺羽が入った色々で、どちらも体重は3.2kgほどで、顔も少し小さい感じでしたね。
謡も声質やや高く、10~12秒ぐらいでした。
まあ、声良としてはチョッと迫力不足でした。(美しくはあったけど…)
これに対して黒色のものは、大型で謡も荘重な低音でした。
秒数も4羽共全て20秒を超え、その中の29.8秒(実声)が今までの私の飼育鶏の最高記録です。
羽色の説明の最後に「黒鶏(クロケイ)」について少しお話します。
この系統は主に昔の南部領(青森県二戸~八戸、岩手県盛岡近辺)と呼ばれた地域に多く飼養されていたと言われるもので、他の声良とは若干の形態変化が認められ、これは純系に近ければ近い程、その特徴が良く発言され、他の系統と較べれば、顔だけで区別できます。
声良鶏 黒鶏の顔
この「黒鶏」という呼称は恐らく羽色から来ていると思いますが、本当に黒っぽいんですよ(特に雄に於いては…)
ですから、品評会には不利な系統です。
よほど声良に精通した審査員でもないと評価してもらえません。
でも、この系統の魅力は、その頭部・顔面と体型にあります。
鶏冠はほとんど倒れがちで、酷いものは、片目が見えないぐらいに倒れており、内側の皮膚が不潔になって、ジメジメして匂うんですよ。
私の場合、ほとんどがこの黒鶏でしたから、この点だけは何とかならんかな~~~と思ってました。
やっぱり鶏冠は直立していた方がカッコいいですもんね。(皮膚の衛生面のためにも…)
顔面は、咽喉垂皮の発達が著しく、それがまた長い耳朶とつながり、他系がやや老けたシャモ顔とするならば、黒鶏はシャモはシャモでも大和軍鶏の顔面を呈します。もう、グロテスクとも思える程で、特に雌の垂皮は大きく目立ちます。もう七面鳥なみ!!かと言って、そんな事愛好家の前で言っちゃいけませんよ!!
ヘタしたらブン殴られますからね!
あの顔に何よりも魅了される飼主も多いんだから!(私も含めて…)
黒鶏の声良鶏 雄
黒鶏の声良鶏 雌
体型は地平のシャモ型でインディアンゲームに近い感じですね。
インディアンゲーム 雄 (https://poultrykeeper.com/chicken-breeds/indian-game/)
インディアンゲーム 雌 (https://poultrykeeper.com/chicken-breeds/indian-game/)
すなわち丈が低く、腰幅が広く、やや短めの脚部を呈する。
ドッシリ型で声良の中では最も重量感にあふれて系統です。
体質は弱い弱いといわれる声良の中では比較的強健で、昔から「黒の血を入れないとトリが弱くなってしまう」というのが愛好家の間の常識だったとよく私の師匠から聞かされました。
謡については、黒鶏は若干声質が高めだったとも聞いています。
確かに私も経験上「そうかな…」と思うところがありますが、黒鶏全て音質が高い訳ではなく、声良らしい謡をしてくれるものも数多く存在し、何事にも例外はあるものです。
この他に有名な系統として津軽白柳系があり、一般的に声良というと大体この白柳系が文献などの写真でも多く出ていると思いますよ。
黒鶏に較べると寸高で羽色に黒味が少なく美しい感じがあり、垂皮み小さめで立冠のものが多く、体型もやや細目で、シャモに近いです。
そして、羽色について最後に雄のエクリプスについて、
(え?エクリプスって何だ?と言う人は、鳥類の羽装について勉強して下さい。そこまで面倒見切れません!)
エクリプス(非生殖羽)の声良鶏 黒鶏 胴音(ドウネ)鳴きする個体
雄の頸羽のみですが、多いもので3分の2以上が黒い丸羽の非生殖羽になります。早いもので5月頃から始まり、換羽気が終了する頃には元に戻ります。ま、野鳥の世界ではよくあるケースなのですが、ニワトリでは声良以外では、私の経験上あまり見ません。
もっとも、他の人に聞いても異口同音で「エクリプスって何?」と言われるのが関の山でしたけど…
その現象は、土佐地鶏にも出現すると鶏友のS・A氏から知らされました。やはり換羽気が終了すれば元に戻ると…
土佐地鶏(土佐小地鶏)
この現象、他の鶏種にも発言すると判明しましたが、ほとんど聞かないのは何故でしょうか
やはり鶏だけの世界しか興味の無い方が多いせいか、そして、そこに生じる疑問について追及する方が少ないせいか知りませんが…。
そこで私は言いたいんです!
様々な事象に対して欲望(知識欲)を持ってほしいと!
鶏が好きならば、鶏に限らず動物全般、生物全般に対して学ぶ姿勢を持ってほしいと!(特に鶏ならば、洋の東西、品種を問わず全ての種類に!!)
そうして知り得た知識でコトに当たれば様々な、本当に様々な道の事実が見えてくるのではないか。今まで気にしなかった事が明快に理解できるのではないかと思うのです。
自分が好きな鶏種だけを追い求めることを否定している訳ではありません。
まして、他の品種も飼え!と言っている訳でもありません。
趣味の世界ですから、好きな品種を飼うのは当たり前です。
私がどうこう言える立場でもないし、又、言うつもりもありません。
ただ他の鶏種の事を知るのは、自分が好きな鶏種を更に深く知り得る事でもある事を知ってほしいのです。
諺に「百薬を舐めて一薬を知る」とありますが、正にこの一言が私の言いたいこと全てです。絶対にマイナスにはなりません!
※声良も最近は色々他の地域交流もあって交雑も進んでいるようで、それぞれの血統の特徴も薄れがちになっているようで気になります。
ここで声良の成立についてですが、
その前に秋田と青森の愛好家・研究家の説を挙げてみます。
①青森県 K・F氏
◎本県原産の天然記念物・声良鶏の成立史は、古代に有する。
◎青森県津軽郡岩木町大字高岡に津軽公歴代を祭る高照神社に津軽家二代藩主・信政公の槍の大鳥毛に声良の簔羽が用いられている。
◎津軽家の抱画師、鵜川益弘(常雲)に描かせた声良鶏の絵がある。
常雲が寛文二年(1162年)津軽四代藩主、信政公時代に招かれて描いたものは現在の津軽の白柳系の鶏である。
(これは今から370年前に描かれたもの)
②この方は、東京のS・K氏
説1 秋田県能代から四里の山中、桧山地方が成立の地である。
説2 同県、数の地方に岩手の南京地方から原種鶏が入ってきて、そこで長鳴鶏となった。
③青森県 K・N氏
・声良は、南部領が原産である。そして津軽為信が勢力を強め南部の領主が抑えた頃より、南部領内で飼われていた声良を津軽に取り寄せて祭事には鳴き合わせ会を推奨し、盛大に行われた事は伝説としても、又、色々な地方の記録に残っている。
(※声良を南部鶏と呼ぶのも事実です)
④秋田県 K・M氏
◎徳川時代の中期まで流行を続けた闘鶏に代わり、秋田、津軽地方で長い冬の農閑期の健全娯楽として声良が飼われるようになった。
◎今から300年前、秋田地鶏に越後から日本海を船で能代に運ばれた蜀鶏が川船で米代川を往復する北秋田郡・鹿角の米代川流域の人達によって運ばれ、その交配種に山本郡の一部と北鹿二郡の米代川流域に飼われていた地鶏との交配が行われ、当時の人達の趣味嗜好に改良された。
その頃の地鶏にはすでにシャモの血が入っており、現在の声良の姿・形の原型が出来あがった。
まあ、これが代表的な説ですが、いずれの説にも声良の謡についてはほとんど触れておりません。
体型等についても今イチ、ピンとこないんです。
ですから、ここは声良は、現在の秋田、青森、岩手三県を中心とした東北地方原産という事で良いと思います。
さ~て、ここから本題に入ります。
そう声良とはどのような進化を経て、今この世に存在しているのか?
まず声良が日本で作出されたのなら、あれだけの希有な特徴を持つ鶏ですよ。とっくに昔に有名になって公認されて私達の耳目に入ってますって!
確かに長鳴鶏は日本だけの専売特許ではありません。
海外にもベルギーには、ベルギッシュクレールが。トルコには最長45秒とバケモノじみた記録を持つデニズリーが存在し、他にも2~3種品種名は不明ですが、その存在が確認されています。
アヤム・プルーン
デニズリー
しかしながら、低音での長鳴きではないという事です。
ホントにいないんですよ。低音で鳴くというのは。
品種名は?ですが、ブラベンダーに似て前方に傾く毛冠を持ち長鳴きする鶏がいますが、その声たるや、首を絞められて今にも死にそうな声で、ギャ~~~~~~~~と鳴くトリをネットで見たことがありますが……
ホントに太く低い声で朗々と長く鳴く鶏は、私の知る限り外国種では聞いたことがありません。
ですので、声良という鶏は日本で作出された至宝とも言うべき鶏。というのは過分ですかね。
では、その進化のプロセスは?
前にも触れましたが、その成立にはマレーとアジールの大型のものがその中核を為していると思われます。
この両種の体型とこの両種とも野太い声で鳴く事が証明されている事が私がこの両種を源とする根拠です。
大きさでは、マレーが1700年前半にイギリスがインドに出征していた兵士によって(この頃は東南アジアも国々はほとんどイギリスなどの列強国の植民地になっていたので、珍しい産物は動物であれ植物であれ全て支配国に持ち去られる仕組みとなっていた)本国に導入された時、体高81.3cmあったというからハンパじゃないデカさですよね。
アジールにしても普通のアジールは雄2.7kg、雌2.0kgぐらいで丁度、シャモと大和軍鶏の中間的な体型のシャモといった感じの中型鶏なのですが、様々な亜種が存在し、マドラスアジールなどは体型も大きさも日本の戦闘用シャモそっくりです。
中でも変わっているのは、体重は雄5kg以上に達し、嘴がオウムやインコのように厚く太く大きく、これニワトリか?とも思えるような姿で、しかも尾羽(覆尾羽)が非常に長く、大型シャモの姿に小国鶏か東天紅のような尾羽を付けたようなその名もパロットビーク(オウムの嘴)アジール又は、アジールロングテール(長い尾羽のアジール)と呼ばれる品種も存在します。
アヤム・アジール パロットビーク(https://aseelparrotbeakindonesiafarm.wordpress.com/2018/07/26/ayam-aseel-parrot-beak-indonesia/)
パロットビークロングテールの嘴(https://m.facebook.com/100407622146508/photos/a.100415985479005/298511672336101/?type=3)
そして、この両種が太く低い声で鳴く事は私の以前の勤務先にタイとベトナムから来ていた人に私のシャモを見せて確認しました。
この方々のうち1人は相当な鶏好きで、自宅にスマトラ、マレー、アジール、更に日本のシャモ等を飼育していたと言う事で写真も見せてもらいました。
現地の愛好家に確認してもらいましたから、間違いないでしょう。
おかげで、当地の闘鶏にもけっこう詳しくなる事が出来ました。
そして、マレーいついてもうひとつ
ブラジル産のインディオギガンテという鶏が存在しますが、鶏の中で最も体高がたかいもので、大きさは1mを超えるものもあり、マレーの直系とられており、その姿は咽喉垂皮の大きいシャモといった感じです。
インディオギガンテ(https://galogigante.com/produto/galo-indio-gigante/)
アジールとマレーについてはこの辺にして、ここでなきごえについて一言
大シャモの鳴き声 ゴッゴゴッゴ!!と短く強く吹っ切るでしょう
飼主はこれを相手の首を「取って来いよ(ゴッゴゴッゴ)」と聞きなしていたそうです。
この声をそして鳴き方を頭において想像して下さい。
大シャモが静かに鳴き出して、そのまま長~~く鳴いたら声良に似てると思いませんか?
そして体型にしてもほとんどソックリでしょう
シャモと声良の異なる点といったら鳴声を別にすれば、声良がシャモよりやや毛深い事、姿勢がやや前傾している事。シャモほど筋肉質ではない事。(と言ったって、他の鶏からか較べればかなりマッチョです)それぐらいですよ。
では、この両種にどんな鶏が交配されて声良がうまれたか
さて、前述のように声良が日本の表舞台に出現した時代となったのは今から約300年位前の時代です。
とすれば成立としては少なくとも徳川時代中期にはその中核が出来ていなけらばなりません。
とすると、その原型の始まりというのは徳川時代初期以前に遡るか遅くとも鎖国状態となった徳川時代の幕開けの時期となります。
その頃の日本の鶏事情はどうなっていたか?
マレー等については有名な「長崎見聞録」にその記述があり「この鶏は我が国にいまだに見られざる剛鳥なり、その脚を高く掲げて歩く姿、又格別なり」と記されており、マレー(又は大型アジール)の大きさ、強さ、カッコ良さが良く表現されています。
たとえ鎖国とは言っても、全面的な出入り禁止ではなく長崎の出島などには多くの外国人が出入りしており、国内の外国とも言える様々な国々の物産展が華やかに開催されており、世界中から動物・植物・鉱物・その他全ての物資が集まったと言われています。
何せ日本は当時世界でも重要な市場だったでしょうからね。
動物でもゾウ・サイ・トラ・ライオン・ヒョウといった大動物から、世界中の珍しい鳥類、魚、虫、植物等出島の一角は、さしずめ世界の動物園・植物園といった感じだったと文献にもあります。
とにかく売れるとわかれば、それこそ目の色を変えて商人がそれこそ世界のあらゆるモノを持ち寄りますから、その中には当然ニワトリも含まれるでしょう(マレーなどもその中のひとつだったと考えられますよね)
獣肉を嫌う当時の日本国民の食性に於て最も手軽に入手できて簡単に処理できるタンパク源は、鶏こそ唯一無二の存在です。
卵用としても肉用としても当時、国内の実用鶏を生産性に於て綾賀するような鶏、又、好事家に高値で売れるような変わったニワトリなどはもう引く手あまただった事は容易に想像できます。現にポーランド(ポーリッシュ)などは、蘭鶏と呼ばれて大変な人気だったらしいですよ。
ポーリッシュ 雌3種類(左から、バフレース、ゴールドレース、シルバーレース)
そんな鶏達の中には現在では絶えてしまった品種もあったでしょうね。
そんな中に長鳴性をもって居なかったとは誰も断言できないでしょう。
もし、マレー(又は大型アジール)とその鶏が交配され、偶然生まれた太い低音で鳴く鶏(長鳴性は優性なのでF1には遺伝する場合が多い)…(ま、秒数はともかく…)が愛好家の目にとまり、やがて様々な経路を辿って雪深い東北の山間地に於て独自の改良、交配による形質の固定を進化させ、やがて世界でも例を見ない低音長鳴鶏の誕生となったのではないでしょうか。
これが声良についての私の仮説Ⓐとなります。
続いて仮説Ⓑですが、弥生時代にはすでに地鶏タイプの鶏が国内で飼われていた事がハニワなどの出土で確認されています。
やがて時が移るにつれて大陸からは色々な鶏が入ってきたでしょうね。
平安時代には小国鶏やその他の昆鶏(コンケイ)と呼ばれる薩摩鶏タイプの鶏や単冠の大型鶏(大蜀鶏)が渡来し、その中に声良の原種となる鶏がいたのかも…(ほとんどは現在の中国からでしょうが…)
それらがその後マレーなどと出会い仮説Ⓐのような経路を辿って声良となった。
そして最後に仮説Ⓒ
今のロシア、旧ソビエトから南下してきた鶏との出会いがよそうされるケースです。
品種名は不明なのですが、ロシアにも長鳴鶏が存在すると聞いた事があります。
単冠で脛羽のある品種だと言う事ですが…
この脛羽というのが気になるんですよ。
というのは、10年前に東京で獣医をしている東北出身で声良の研究家でもある北林氏から明治の頃の声良を描いた絵馬の写真を頂いた事があります。
美しい白笹で豊富な長い尾羽を地に曳いた雄の絵馬でした。
まあ、美しい白笹と長い尾羽はややデフォルメされた感があるとしても、特筆すべき事は、その雄の脛に多量の脛羽が密生していたのです。
そう、声良は初生雛から大雛期にかけて必ずと言っていいほど雄・雌を問わず脛羽の発生が見られます。本数の多い少ないはありますが…(もっとも現在はあまりみられないと言われますが…)
ほとんどは成鶏になれば痕跡的になる場合が多いですが、中には完全成鶏でも3~4本の脛羽が残ってる場合もあります。
その事から考えてもそんな鶏との出会いが、マレーなどとあったのではないかと考えられない事もないと思われます。
そしてそんな血を継ぐ鶏(マレー等の姿と長鳴性、そして脛羽を有する)が東北地方に…。あとは仮説Ⓐと同じ
でⒶⒷⒸの仮説となる訳ですが…
次に蜀鶏・ブラマ(ダーク)・小国鶏との関係です。
第1に前にも書いた通り、声良とはシャモと蜀鶏との交配で生まれた説はかなり根強く広がっています。
それにブラマ(ダーク)を交配して声量豊かな声良を作出したと言う意見もけっこう知られています。脛羽があるものもブラマの血が入っている証だと…。そりゃあれだけ脚羽が豊富ですからね。
そして尾羽の配列が小国鶏から受け継いでいると…。
それに小国鶏は長鳴性があるかと…。
実は私、シャモと蜀鶏、そしてブラマとの交配は実施した事があるんです。
しかも何百羽単位でネ!
今から約40年前になりますが、私が友達(福島県)が鶏肉がすきなのを利用してもらって私から大シャモ(赤笹・雄5.8kg、雌4.5kg)と蜀鶏(真黒・雄3.7kg、雌2.8kg)を提供し、その交配種を食用にして良いから、せめて生後1年までは食べないという約束でネ。
何せ広い場所での放し飼いでしたから色々なシチュエーションが実施できました。
雄・雌の配合を変えたり、戻し交配させたり自分では世話しないもんだからもう楽で楽で。私はたまに様子見に行って確認だけすればいいんですからね。
おかげで様々なデータが取れました。
都合4年ほど続け、ざっと500羽ほどの鶏の出来具合を見る事ができました。(ちなみに雄は300羽程でした)
結果、最初から嘴を大きく開いて高い声で勢い良く鳴いて7~8秒鳴くモノは出ましたけど、低音で静かに鳴き始める雄は1羽も出ませんでした。ただの1羽も!
まあ、体重が大きくても4kgに達しない現在の蜀鶏と4.5kg以上のものも普通に存在したという昔の蜀鶏とでは若干結果も異なるものになったかもしれませんが、一応のデータとしては検証に足るものになったと思います。
この結果を見れば「ホントに声良ってシャモと蜀鶏との交配でできたのか。そう言っている連中は試してみたのかねぇ」と疑りたくもなるでしょう。
そして、これらの交配種にダークブラマを交配してみたけど、声は高くなってしまうし、又、短くなるしもう散々でした。体型の方はいくらか細身で寸の高いブラマって感じで中々カッコよかったですけどネ!(声良にブラマを交配したこともあったけど同じでした)
最近のネットを見たら横斑プリマスロックを交配したってありました。
プリマスロックはその成立に於て交配記録が克明に記録されており(海外実用種はその作出工程が明らかになっているものが多い)
黄斑種が最初に展示されたのは、1849年ボストンで、今からたった163年前です。(日本に輸入されたのは1887年(明治20年)です)
500年以上の歴史を持つ声良にどうやって関与するんですかね?
全く少しは歴史について勉強してからコトを行ってほしいですよ。
横斑プリマスロック 雄
次に小国鶏との関連ですが、小国鶏と言えば言わずと知れた地鶏の次に古い鶏種とされその尾羽の配列などから地鶏・シャモと共に日本鶏の成立に多大な影響を与えた日本鶏の祖とされる銘鶏です。
あの気高さと凛とした佇い。その完成形はタメ息が出る程美しいニワトリですからね。私も大好きな品種です。
でも、声良との関係と言われれば正直かなり薄いと思います。
その理由のひとつ。古い文献に必ずあるんですよ。
小国鶏は長鳴性があるって記述が。
でも私、この世界に入って53年になりますが、長鳴きする小国鶏にはこれまでお目にかかった事がありません。
本当に長鳴き性をもっているなら、1羽位出会ってもいいと思うんですけどね。
それともその頃とはトリが違うんですかね。
尾羽の配列にしても200とも300とも言われる鶏の品種の中で小国鶏以外にその尾羽の配列を持つ鶏はいないのか。
すでに絶えてしまった鶏でシャモ型でその尾羽を有する鶏は、存在しなかったのか。そして存在しなかったと断言っすることはできるのか。私ならばとてもできません。
だって証明できないでしょう。存在したかなんて…
従って小国鶏の関与が100%無かったとは言いませんが、あったとしてもごくわずかじゃないかなと思います。
で、シャモと蜀鶏、ブラマ、小国鶏との関連が一応済んだところで、出てくるのが前出の④K・M氏の説です。
今から240年前。秋田地鶏と蜀鶏それにシャモの血が入った地鶏との交配、選抜、改良の結果というせつですね。
具体的に品種名が出てきたのはこの説だけですが、ぞれぞれの特徴、体型について蜀鶏以外わかりません。
秋田地鶏?雁鶏か比内鶏かあるいはそれ以外のモノか?
シャモの血の入った地鶏?脛羽があるのか?
まあ大体は想像できますが、この3種の交配だとシャモ型になりますかね?やや姿勢が直立して尾角の高い比内鶏タイプになりませんか?じゃあ鳴声は?長くなるのか?太い低音で嘴を閉じて鳴くのか?
ですので、この説も今イチわかりません。
結局のところわからないというのが事実なんですよ。
色々書いてきましたけど、血液とか遺伝子の分類でも、現在のところはまだ結論はまだ出ていないという事ですから、今は想像するしかないですね。楽しんで想像しましょ!!
次、声良の最大の特徴、謡についてです。
声良の謡は
1、出シ・・・鳴き始め、嘴は閉じて(ゴッゴゴッ)
2、付ケ・・・声の調子を一段階下げて、口ごもる感じで(オ~~~~)
3、張リ・・・声良の謡の真骨頂と言うべきうなり声とも思える低音で朗々と謡う
4、引キ・・・嘴を徐々に開きながら、なだらかに止メに向かう。
5、止メ・・・最後は消えるように終わる事が望ましい。
の五段階に分けられさらに
・音色・・・色々ありますが(後記)
・太さ・・・細い声より太い声が好まれます。(あたりまえ)
・長さ・・・6秒以内は失格。基本的に15秒以上が理想。
の要因を考察して、判断するとされています。
といった感じですが、
要は、太い低音で長く鳴けばいいわけですね。
鳴き方が1本調子であろうが長鳴鶏は長く鳴いてナンボですから!
いくら声が太くて低くて節回しが良くても6~7秒よりは、1本調子でも20秒近く鳴いた方が長鳴鶏として素人にも認めてもらえますよね。
ただ最初から嘴を大きく開いてゴッゴゴオーーーーッ!と短く終わってしまうようでは声良としてはどうかなとは思いますが…
なお謡が鳴き終わった後も声は出ていないのに嘴を開いて鳴いているように見えるのを空鳴き(カラナキ)と言いますが、鳴きの秒数にこの時間もプラスして加える所も中にはあるそうですが、これはいただけませんね。
やはり、実際に声が出ていなければ鳴いているとは言えないですので…
中には空鳴きの時間も含めて、やれ20秒だ何だとか自慢する人もいますが、それを言うなら以前私のところで30秒超えるトリもいましたよ。
やはり、計測は実声で計測して頂きたいですね。
声が出ていないのにその分まで計ってどうするんですか!
声良鶏の鳴き声(15秒) 新潟県弥彦村 弥彦神社内 長鳴鶏鳴き合わせ会にて撮影
秋田県鹿角市で開催された天然記念物全日本声良鶏謠合大会撮影 古鶏
秋田県鹿角市で開催された天然記念物全日本声良鶏謠合大会撮影 新鶏
秋田県鹿角市で開催された天然記念物全日本声良鶏謠合大会の様子
(謡い方について)次のような種類があるそうです。
1、上声(ウワゴエ)・・・軽くて高い音質
2、丸声(マルゴエ)・・・上声よりやや低い音質
3、平声(ヒラゴエ)・・・渋さを持ち底声より若干高い音質
4、底声(ソゴエ)・・・声良で最も理想とされる荘重な謡声
5、うなり声・・・最も太く低い音質。私はこの音質の中でも胴音(ドウネ)と呼ばれる響きのある声が一番好きです。
これ以外にも中間型とか色々あるが単に声の長短高低より、堂々と朗々と一定の形式を備えた声であるのが最良との事!
以上好き勝手書いていきましたがどうでしたか?
今回は声良でしたが、私、鶏であるならば何でも好きです。
大型であろうが小型であろうが、また洋の東西を問わず、純粋であろうと雑種であろうが関係なし!
1羽でも多くこの目で見たいです。生きているうちに…。
1羽でも多く触れ合ってみたいです。体が動くうちに…。
今、私の所には声良を始めとして、大軍鶏、小軍鶏、矮鶏、鶉矮鶏、簔曳矮鶏、比内鶏、蜀鶏、東天紅、簔曳鶏、小国鶏、烏骨鶏、土佐地鶏。
洋鶏では、ブラマ、コーチン、黄斑プリマスロック、北京バンタム、ポーリッシュ、シブライトバンタム、モダンゲームバンタムと計19品種。それと最近加わった尾長鶏を含め合計20品種123羽の鶏に囲まれていますが、年金暮らしの身ではコレが限界です!
今まで飼養した品種は上記の他に日本鶏では大和軍鶏、河内奴、地頭鶏、南京軍鶏、黒柏、薩摩鶏、他にウタイチャーン、名古屋、天草大王、胴切九斤。洋鶏は、白色・褐色・黒色のレグホーン、黒色ミノルカ、銀色点斑ハンバーグ、ロードアイランドレッド、ニューハンプシャー、黄斑と白色のプリマスロック、サルタン、コーニッシュ、スマトラ、フェニックス等がおりましたが、もっともっと色々な鶏を手元に置いてみたいです。
洋風の庭園に良く似合うフランスのファブロール。
大きさでは3本の指に入るアメリカのジャージージャイアント。
大きな体に短い脚。イギリスのドーキング。
ブラマの弟分のようなアメリカのワイアンドット。
その名も赤い帽子。大きなバラ冠を頂くイギリスのレッドキャップ。
もうキリが無いです。
でも、私が生存期間はせいぜいあと20年ぐらいですからね。
まずムリです。
ま、好きな道ですから、このまま進んでいきますよ。
何せ、鶏は私に生まれてきた意味を教えてくれた存在ですから!
※こんな調子だから結婚できなかったんだようなァ・・・。(後悔×10)
終わり
著者:岡山七五三男