1990年代以降のディランは『ネバー・エンディング・ツアー』と名付けられた、主に小ホールを回るライブ活動が中心となった。その分レコーディングに消極的になった感は否めない。『U2』のボノに勧められてダリエル・ラノワをプロデューサーに迎えた『オー・マーシー』(89)は野心作であったが、売り上げは思った程伸びなかった。
その反省もあったのか27枚目のオリジナルアルバムになる『アンダー・ザ・レッドスカイ』は、ダンスユニットとして人気を博していた『ウォズ (ノット・ウォズ)』をプロデューサーに迎えてのレコーディング(尤も彼らの音楽を聴いた記憶は無いのだが。あいすません)。1曲ずつスタジオに入るまで誰がバックを務めるのかディランが知らないまま進行…ってドッキリ企画かよ(笑)。ゲストミュージシャンの豪華さで売り上げ増を狙う商法。ディランが良くOKしたなって気もするけど、彼なりに新しい音楽的な刺激が欲しかった気持ちもあったのかもしれない。
基本的にベース(ランディ・ジャクソン。何とマイケル・ジャクソンの弟)、ドラムス(ケニー・アロノフ。ジョン・クーガー・メレンキャンプのバックバンドに在籍)以外は演奏メンバーが入れ替わるのだ。
トラック1『ウィグル・ウィグル』は邦題を付ければ「くねくね」となるらしい。ギターに人気抜群のロックバンド『ガンズ&ロージズ』のスラッシュと、ジャクソン・ブラウンのバッキングで有名になったデヴィッド・リンドレーがギターで参加。イントロのギターソロはスラッシュらしいけど、曲に入るとドラムスの音がやたら大きいミキシングが特徴のロカビリー風。リンドレーらしいギターはエンディングで入ってくるけどあっさりフェイド・アウト。
トラック2『アンダー・ザ・レッド・スカイ』ではジョージ・ハリスン(ギター)、アル・クーパー(キーボード)といった付き合いが深い連中が参加。「風を低く吹かせろ 風を高く吹かせろ」「少年と少女はパイの上で焼かれてしまった」とか60年代を念頭に入れた様なワードが登場する。ポップなカントリー・ロックテイストのサウンドは結構いい。ジョージのスライドギターソロも当然聴き物であろう。
トラック3『アンビリーヴァブル』では高名なスタジオ・ミュージシャン、ワディ・マクテルがギターを担当。トラック1と酷似したメロディーで区分けがつきにくい。キーボードは前曲に続きアル・クーパー。間奏ではディランのハーモニカがフィーチャー。矢継ぎ早に唄うディラン節を一応堪能。
トラック4『ボーン・イン・タイム』はデビィッド・クロスビー(コーラス)、ロベン・フォード(ギター)、ブルース・ホーンズビー(ピアノ)と超有名人が参加。一応ラブソングだが観念的なワードが並んだ詞。ディランのヴォーカルを特に際立たせたミキシングで、それまでの曲とは違うしっとり系メロディー。小さめに入っているアコーディオンはディランが弾いている。演奏はなかなかいい感じだが…。前作アルバムから漏れた曲だとか。
トラック5『T.V.トーキング・ソング』は結構ストレートなTVメディア批判ソング…だと思う。フォードとホーンズビーは続けてこの曲にも参加。生音近いシンプルなミキシングで、時代に逆行する感じもあるサウンド作り。ホーンズビーのピアノがいいプレイ。
トラック6『テン・サウザンド・メン 』のギターはデヴィッド・リンドレーにジミー&スティーヴィー・レイのヴォーン兄弟。イントロから鳴り響くスライドギターはリンドレー。ブルースコードの何か懐かしくもある楽曲で、ブルースだからヴォーン兄弟が参加したのだろうが、彼らが活躍するパートは用意されていない。
トラック7『ツー・バイ・ツー』はデヴィッド・クロスビー、エルトン・ジョン(ピアノ)が参加。カントリーフィーリング溢れる曲で、クロスビーとのコーラスがいい感じ。エルトン・ジョンは間奏でピアノを弾いているがあんまり目立つ事も無く、二大スターの共演ナンバーを期待した向きには不満が残るか。
トラック8『ゴッド・ノウズ』「神は知っている」を繰り返しつつ聴き手に禅問答を仕掛けている節もある。エルトン・ジョン、ヴォーン弟(スティーヴィー)らが参加。ディランが弾くアコースティックギターを主軸にしたアレンジで、後半からヴォーン弟のギターがフィーチャー。エルトン・ジョンのピアノは殆ど聴き取り不可能?
これも前作の未発表曲だった。
トラック9『ハンディ・ダンディ』のイントロのオルガン(アル・クーパー)は『ライク・ア・ローリング・ストーン』に酷似。全体的なアレンジも60年代ぽく俺の様な世代には親しみ易いのだが、サビ以外は『ライク~』にそっくりというのは…。この曲のリードギターはヴォーン兄(ジミー)。
アルバム最後の曲『キャッツ・イン・ザ・ウェル』はリンドレー、ヴォーン兄弟らが参加。本アルバム中一番景気がいいロックン・ロールスタイルのナンバーで、ホーン・セクションも入ってくる。リンドレ―のスライドギター(アコースティックギター)が大奮闘。
発売時は酷評されたアルバム。確かにトラック9などを聴くと作曲意欲が減退しているなと思わざるを得ないし、90年代に即した音楽ではないけど、どんな豪華メンバーと共演しようとも自分のペースを崩さないディランの一徹さが結構好き。聴いている分にはそこまで悪いアルバムではないと思う。少なくとも『グレイトフル・デッド』との共演ライブ盤に比べれば10倍はイイ。
尤もディランは出来には不満足だったぽく、本アルバム以降アルバムも新曲も作らずツアーするだけ…の日々が7年も続くのだ…。































